Archive for 3月, 2012

Mark Levinsonというブランドの特異性(40周年のこと)

マークレビンソンが設立されたのは1972年。
ただし、まだLNP2は世の中に顕れていない。
LNP2の前身となるLNP1の登場が1973年。
このLNP1のパネル高を約半分に抑え、コントロールアンプとして手直しが為されたものがLNP2である。

このときのLNP2に搭載されていたのはバウエン製モジュール、
翌74年からマークレビンソン自社製のモジュールへと変更され、
日本ではバウエン製モジュールLNP2をサンプル輸入したシュリロ貿易から、
輸入元がRFエンタープライゼスに変り、本格的な日本での発売が開始になった。

だから日本ではマークレビンソンの登場は1974年ともいえるわけではあっても、
やはり今年はマークレビンソン創立40周年。
マークレビンソンからは40周年記念モデルが発表されている。

こういう40周年記念モデルについては何も語らないけれど、
40周年記念ということで、ひとつ、もしかすると、と期待していたことがあった。
LNP2の復活、もしくはモジュールの新規開発である。

LNP2は最後の生産されたものでも約30年が経過している。
モジュールの内部は固められていて修理は難しい。
故障していなくても劣化は生じる。
代替モジュールがあるのは知っているけれど、心情的にはやはりマークレビンソンから出して欲しい。
昔のモジュールそのままでは使用パーツが現在では入手出来ないものもあるだろうし、
いま40年前のアンプ・モジュールを復刻することに、
マークレビンソンという会社のポリシーとしては抵抗があるはず。

ならばこそ新規にLNP2用のモジュールを開発・製造してほしい、と思う。
モジュールを最新設計のものにしたからといって、LNP2が最新のコントロールアンプになるわけではないけれど、
それでもLNP2という特異なコントロールアンプを、現代に甦らせたい気持がある。

Date: 3月 9th, 2012
Cate: ナロウレンジ

ナロウレンジ考(その8)

周波数特性を拡げていくことは、単純に考えれば情報量が増していくことになるわけだが、
情報量が増していくことによって、本来ならば音楽の微妙な表情や、その変化をより明瞭に鳴らし分けてくれる──、
そのはずにもかかわらず、いま市販されているスピーカーシステムの中には、
しかもそれらのいくつかは世評の高いスピーカーシステムも含まれているにもかかわらず、
例えば比較的新しい録音の、ソプラノ歌手を数人聴かされた時、
誰が歌っているのか、まったく判別がつかなくなるモノがある。

耳馴染んでいる歌手の歌を聴いても、誰なのかがわからない。
わからないだけだったらまだいいのだが、ときには違いすら判然としなくなる。
誇張していえば、似たような声に聞こえてしまうスピーカーシステムがある。

そういうスピーカーシステムは、いわゆるワイドレンジ型で音場型とも呼ばれているスピーカーだったりする。
しかも高価だったりする。

私がそういうスピーカーシステムでソプラノ歌手が誰だかわからなくなってしまうのは、
私の方に原因があるともいえるだろうし、スピーカーシステム側に何か問題点があるともいえるだろうし、
私とそういったスピーカーシステムとの相性が決定的に悪い、ともいえるだろう。

この歳になって、いくつものスピーカーシステムを聴いてきたうえでいえば、
はっきりと誰が歌っているのか容易に聴き分けられるスピーカーシステムが存在しているわけだから、
スピーカーシステム側に問題点がある、はずだ。

それにしても、なぜこういうことになってしまうのか。
高域の周波数レスポンスをよくしていけば、ソプラノ歌手の声の再現性は良くなる、
良くなれば、それだけ声の聴き分けは容易になる。
言葉を変えれば、ソプラノ歌手一人一人の特徴をより精確に描き出してくれるはずなのに、
そういうスピーカーシステムとそうではないスピーカーシステムに分れてしまう。

しかも不思議なことに(というよりも面白いことに)、
良く出来たフルレンジスピーカーを鳴らした時のほうが、
実のところ、ソプラノ歌手の声の聴き分けは容易かったりする。

いうまでもなく周波数特性はフルレンジの方が狭い(高域はあまり伸びていないナロウレンジだ)。

Date: 3月 8th, 2012
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(その81)

マランツのふたつのコントロールアンプ、Model 1とModel 7はモノーラルとステレオという違いだけでなく、
回路自体も異る面をいくつか持つ。

Model 1もModel 7もECC83を片チャンネルあたり3本使っている点は同じだが、
まずフォノイコライザー回路はModel 1は2段構成のNF型で、
つまり1本のECC83でフォノイコライザーは構成されているわけだ。
その後に1段増幅、CR型トーンコントロール、1段増幅、ラウドネスコンペンセーターときて、
1段増幅、ボリュウム(モノーラルだが2連タイプでフォノイコライザーのすぐ後にも入っている)、
最終段のみがカソードフォロアーとなっている。

ECC83(12AX7)は双三極管なので1本に2ユニットはいっていて、
それぞれのユニットをA、Bとすると、
Model 1ではモノーラルということもあり、信号はV1A、V1B、V2A、V2B、V3A、V3Bの順でいく。
カソードフォロアーはV3Bのみである。

Model 7になるとまずフォノイコライザーが2段増幅+カソードフォロアーという、3段構成になっている。
いわゆる3段K-K帰還型である。
トーンコントロールもModel 1のCR型からNF型へとなり、
この部分がラインアンプにあたり最終段はやはりカソードフォロアーである。
Model 1では1箇所だけだったカソードフォロアーがModel 7では2箇所になっているわけだ。
そして、いうまでもなくModel 7はステレオということもあって、信号の流れはModel 1のような順番通りではない。

Model 7では左チャンネルがCHANNEL A、右チャンネルがCHANNEL Bと表記されている。
左チャンネルの信号の流れを回路図で追っていくと、
V2A、V2B、V3A、V5A、V5B、V6Aとなっている。
右チャンネルはV1A、V1B、V3B、V4A、V4B、V6Bである。

まず気がつくのはV3とV6は内部の2ユニットをそれぞれ左右チャンネルに振り分けていることであり、
このV3とV6の2本のECC83がカソードフォロアーに使われている。

Date: 3月 7th, 2012
Cate: 音楽の理解

音楽の理解(その1)

音楽がわかった、とか、音楽を理解した、などとよく言われるけれど、
音楽は聴いて感じるものであって、わかるとか理解するというものでは本来ないはず、
という意見に同意できるものの、
反面、やはりわかった、理解できた、と感じられる瞬間が、
音楽を聴いているときに不意に訪れる、というか、襲われることがある、と確かにいえる。

音楽を理解する、とは一体どういうことを指しているのか、
それはどういうものなのか、ずっと頭から離れることはなかった。
もう30年以上、そうだった。

最近、やっと語れそうな気がしている。
ただ、その「理解」とは、
実のところ、そこから音楽の聴き方が始まるスタート点だと気がついた、といえるのかもしれない。

Date: 3月 6th, 2012
Cate: iPod

「ラジカセのデザイン!」(その7)

モジュールユニットを鳴らすパワーアンプは、いまではIC化されたものから選べる。
出力はそれほど必要ないといえばたしかにそうなのだが余裕があれば、それにこしたことはない。
ただ出力を増すことは発熱と電源の余裕も要求されることではあるけれど、
いまではDクラスのパワーアンプもいくつも出ている。
これならば発熱の心配は、まったく(といっていいだろう)する必要はない。
それに電源もスイッチング方式ということになれば、1970年代のラジカセにくらべてスペースの余裕は出てくる。

DクラスのアンプならばICEPowerモジュールにしたい、などとあれこれ思い巡らせるのは楽しくて飽きない。

こんなふうにやりたいことを思っていると、
スピーカーは小口径のフルレンジだけで十分と言っておきながら、
頭のどこかでは、もしトゥイーターをつけ加えるならレンジの拡大が目的ではなくて、
ある種の音の広がりを求めて、角度をつけて取りつけるという手もあるかな、と考えたりする。

こんなことを昨夜の(その6)を書いた後の入浴中に思っていた。
そしてトゥイーターのことを考えていたところで、
このままラジカセに求めていることをグンとスケールアップしたら、
それはデッカのデコラに行き着くことに気がついた。

あくまでもこれは私の中で完結する話であるのだが、
デコラが頭に突然浮んだときに、ラジカセに求めているのは、
だからこそモジュールユニットを使いたい、とも思ったのは、
デコラをうんと小さくしたモノであり、デコラに感じている良さの要素に通じていくものが欲しかったから、
そのことに、こうやって書いていくことで気づいた、というよりも気づかされた。

そしてデコラを、なぜあれほどいいと感じるのか、その理由のひとつにも気づかされたことになる。

Date: 3月 6th, 2012
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(その80)

往年の真空管アンプ・メーカーとしてマランツとマッキントッシュがある。
マランツの管球式コントロールアンプは2機種、モノーラル時代のModel 1とステレオ時代のModel 7。
マッキントッシュはAE2、C104、C108、C4/C4P、C8/C8P/C8S、ここまでがモノーラル機で、
C20、C11、C22、これらがステレオ機。
マッキントッシュはパワーアンプの機種数もマランツより多いけれど、コントロールアンプの数もまた多い。

これらのコントロールアンプのヒーター用の電源回路の回路図を比較していこう。
マランツのModel 1とModel 7は基本的に同じ考えによって作られている。
Model 1はモノーラルでModel 7はステレオ仕様で、真空管の数とそのユニットの振分けによって、
少し異る点もあるが、3本のECC83をひとまとめにした上でヒーター回路を形成している。

マッキントッシュはというと、
モノーラル時代の機種はすべてのヒーターを並列接続している(C4以降は直流点火になっている)。
真空管はマランツと同じECC83(12AX7)を使っている。
ステレオ時代になると、C20はモノーラル時代と同じように並列接続(ただしモノーラル機とは少し違う)だが、
C11とC22ではマランツと同じように3本のECC83をひとまとめにする方式へと変更している。
これはマッキントッシュがマランツに倣ったのだろうか。

マランツのヒーターについて、もう少しだけ書いておこう。
Model 1はモノーラルだからECC83を3本使っている。
3本のECC83をフォノ入力からV1、V2、V3と回路図では表記されている。
Model 1のヒーターはV1のヒーターの両端にそれぞれV2、V3のヒーターを接続し、
V1のヒーターのセンターを設置している。
V2、V3のヒーターの片方は接続され、ここにヒーター電圧がかけられている。
V1、V2、V3のヒーターは三角形を描く形になっている(回路図上では三角形にはなっていないけれど)。

Model 7も同じである。
だだしModel 7はステレオ仕様で、双三極管であるECC83のユニットの振分けが必要となるところが、
モノーラルのModel 1とは大きく異る点で、そのことがヒーター回路のステレオ機としての工夫となっている。

Date: 3月 5th, 2012
Cate: iPod

「ラジカセのデザイン!」(その6)

結局所、私がラジカセに無意識のうちに求めているのは、親密感もしくは親密感ある聴き方なのかもしれない。
中学・高校時代に親に聞こえないように深夜ラジオを、
音量を絞ってひとり聞くような、そんな感じに通じるものと言えるのかもしれないが、
実のところ、学生時代、深夜ラジオを聞いたことは一度もない。

なのに、なぜ、そういうものを求めているのか、われながら不思議でならないのだが、
とにかくラジカセには、親密感ある聴き方ができるモノであってほしい。
デザインもいいモノであってほしい。

デザインといえば、まずB&Oが候補となる。
B&Oのラジオが、ナロウレンジなのだが実に品のいい音を聴かせていたことはずっと以前に、
そういう話を何度か聞いている。
瀬川先生もサンスイのショールームで鳴らされたことがあった、とも聞いている。
残念ながら、そのB&Oのラジオは写真でしか見たことがない。
それでもなんとなく、その音は想像がつく。
私が求めているものに近い印象を勝手に抱いている。
となるとB&Oのラジカセということになるのだが、B&Oにもラジカセは存在していた。
1980年代の終りごろにB&0のラジカセが登場した。
価格は10万円を超えていたぐらいだったと記憶している。
でも実物を見て最初に思ったのは、意外に大きい、だった。
見た感じで、半分くらいに感じられる大きさであってほしかった、と思っていた。

私の聴き方には大きなラジカセは要らない。
スピーカーユニットは10cm口径か大きくても16cm口径まででいい。
20cm口径のフルレンジがつくとなると、全体としてかなり大きなラジカセになってしまうからだし、
音量的にもそれほど大きなものを求めているわけではない。

親密な聴き方にぴったりの音量と品の良さ、音量を絞ったときの明瞭度の高さを、まず求めたい。
たとえばジョーダン・ワッツのモジュール・ユニットを使ったラジカセがあったらいいな、といまも思う。
それにトーンコントロールが欲しくなる。できれば低・高音の2バンドではなく中音域も加えた3バンド。
もしくはQUADの44のようなコントロール機能もいい。

Date: 3月 5th, 2012
Cate: audio wednesday

第14回 audio sharing 例会の変更と第16回・例会のお知らせ

昨夜、3月7日のaudio sharing例会のテーマは「岩崎千明氏について語る」と書きましたが、
「岩崎千明氏について語る」は5月2日(水曜日)に行う第16回の例会のテーマとします。

変更の理由は、facebookに書いています。
4月末に第16回 audio sharing 例会の詳細は書きます。
テーマは変更しますが、明後日(7日)、夜7時から四谷三丁目の喫茶茶会記で第14の例会は行います。

Date: 3月 4th, 2012
Cate: 十牛図

十牛図とマーラー

十牛図についての川崎先生の話を聴き終ったあと、
東京への新幹線の中で思いついたことが、マーラーは十牛図のことを知っていたのかどうか、だった。
マーラーによる交響曲は9曲に「大地の歌」を加えると、10曲になる。
強引にこじつけることができるような気もするけれど、かなり無理のあることだとも思っている。

それでも、マーラーは十牛図を知っていたのか──、
このことが頭から離れないままになっている。

Date: 3月 4th, 2012
Cate: iPod

「ラジカセのデザイン!」(その5)

もうこれから先、オーディオマニアを満足させるカセットデッキは開発されることはない、といえよう。
だからカセットテープの録音・再生を追求しようとすれば、過去の製品を整備して使うことになるはず。
となると、ナカミチの1000ZXLは多くのマニアが憧れるカセットデッキということになるのだが、
やはり私には大きすぎる筐体と、
あの数がカセットテープの性能をできるかぎり引き出す上で必要なものといわれても、ツマミの数が私には多すぎる。
ナカミチのデッキならば、1000番よりも700番のほうにより魅力を感じるし、
それもレイモンド・ローウィのデザインだと知れば、ますます700の方がいいんじゃないか、と思っても、
そう思うところで止ってしまい、欲しいところまでにはいかない。
結局、700のデザインは日本人の手によるものとわかり、なんとなく納得していた。

1000ZXLを見ていると、
日本のラジカセがあれだけ大きなものになってしまったこととどこかでつながっているような気もしてくる。

カセットテープをよりよい音で聴くためには、ウーヘルのCR210ではやや力不足だから、
そうなるとスチューダーが一時期出していたモノということになる。
型番も正確な価格もすでに忘れてしまっているが、40万から50万円ほどしていただろうか。

もしスチューダーのカセットデッキがあったとする。
音楽を収録したカセットテープならば、スチューダーのカセットデッキで再生し、
つねに鳴らしているシステムで聴くことになるだろう。

でも私が、いまカセットで聴きたいのは「音楽談義」であり、
「音楽談義」に収められているのは、いくつかSPからの復刻があるとはいえ、
メインは小林秀雄氏と五味康祐氏との音楽談義であるから、それをいつものシステムで聴きたいかというと、
必ずしもそうではない気持があることに気づく。

ほかの人はどうかは知らないけれど、
私は、人の声(歌ではなく話)を聴くとき、スピーカーとの距離が近い方がいい。
録音に細心の注意がはらわれていい音で収録された対談モノをきちんと再生すれば、
より生々しいのはわかっているけれど、
そういう生々しさに気を取られることなく話に意識を集中したいと思うためなのか、
それともステレオサウンドでテープ起しをするとき常にヘッドフォンで聴いていたことか影響しているのか、
離れてても数10cmぐらいのところで聴きたいと思ってしまう。
だから「音楽談義」のためのラジカセ探しをずっとしているわけである。

Date: 3月 4th, 2012
Cate: audio wednesday

第14回 audio sharing 例会のお知らせ

今月のaudio sharing例会は、7日(水曜日)です。

3月24日が岩崎先生の命日であり、今年で没後35年。
なので今回のテーマは「岩崎千明」です。

時間はこれまでと同じ、夜7時からです。
場所もいつものとおり四谷三丁目の喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 3月 3rd, 2012
Cate: iPod

「ラジカセのデザイン!」(その4)

ラジカセを使っていたとき、それからカセットデッキを数年後買ったときは、
カセットテープをあれこれ買ってきて、録音・再生してみて、それなりに楽しんでいた。
といっても学生にはカセットテープも決して安い買い物ではなかった。
買いたいものは他にもいろいろあるから、お気に入りのテープ(TDKのSAだったかな)ばかり買えるわけではなく、
値段でカセットテープを選んでいたこともある。

まだラジカセを使っていたいたときだったはずだが、
近所の電気店に100円のC60のカセットテープが並んでいた。
いわゆるノーブランド品なのだが、当時はノーブランドという言葉も知らなかったし、
100円ショップなど、もちろんどこにもなかった時代のことだから、
友人とふたりで「100円だよ」と軽い興奮状態になって、ふたりとも試しに1本買って帰った。
結局、100円カセットテープは、その後買うことはなかった。

そんなふうなカセットとのつきあいは4年ほどだった。
東京に住むようになってからはカセットデッキ、ラジカセを所有したことはない。
いいカセットデッキは欲しいなぁ、と思っても、実際に買うことはなかった。
ウーヘルのCR210は、そのサイズの小ささから欲しい、とかなり欲しいと思っていたけど、手を出すことはなかった。

そんな感じだから、ナカミチの1000ZXLを見ても、カセットテープでここまで、というふうに関心はしても、
1000ZXLを買えるだけの余裕があっても、欲しい、と思ったことは一度もなかった。

ふりかえってみても、カセットデッキ、カセットテープとのつきあいは薄い。
それに、すこしカセットに対してつめたいのかもしれない。

それならばほどほどの性能でほどほどの価格のモノならば、
なんでもいいのではないか、ということになりそうだが、
惚れ込めないジャンルのモノだけに、逆に本当に気に入ったものが欲しい、と思う。

それに、いまは使用目的が決っているし、その幅も狭い。
「音楽談義」を聴くためだけであるから。

となると、カセットデッキではなく、ラジカセが欲しくなる。

Date: 3月 2nd, 2012
Cate: iPod

「ラジカセのデザイン!」(その3)

10年ほど前から、2年周期ぐらいで無性にラジカセが欲しい、と思うようになった。
そうなると量販店のラジカセの置いてあるコーナーをぶらぶらまわる。
「欲しい!」と見た瞬間、そう思えるラジカセはいまのところ出合っていない。

もっとも半年おきに定期的に量販店に行き、こまめにラジカセをチェックしているわけではないから、
私が見逃しているラジカセのほうが多いはずであって、
たまたま出かけたときに見かけたラジカセについては、欲しいモノがないだけのことにしかすぎない。

ラジカセが欲しい、と思うようになったのは、
ステレオサウンドが創刊20周年記念として発売したカセットブックを、もう一度聴きたいと思っているからだ。
私と同じか、私よりも年配の読者の方は、このカセットブックがどういうものかはすぐに思い出されるはず。
このカセットブックは、ステレオサウンド 2号に掲載された、小林秀雄氏による「音楽談義」をおさめたものだ。
聴き手は五味先生。

「音楽談義」カセットブックは、C90とC60のカセットテープで、
収録時間は43分36秒、42分46秒、28分29秒、27分21秒となっている。
「音楽談義」には次のようなタイトルが、それぞれつけられている。

 蝋管
 赤盤
 ルビー針
 クレデンザ
 聴覚空間
 生の音をめぐって
 ワーグナーの人と音楽
 ビトーとモリーニ
 ロストロポーヴィッチとアマーティ
 本居宣長、ブラームス
 青年時代のモーツァルト経験
 シューベルトの器楽曲
 チャイコフスキー雑感
 録音
 雨の日のシュタルケル
 ライン河畔のシューマン
 スターンのグヮルネリウス
 シベリウスの魂
 ドビッシーの天使とラヴェルの悪魔
 現代音楽
 原音
 聴こえる音と内に鳴る音楽
 温泉場のショパン
 意味としての音楽
 再び、ワーグナー
 いまブラームスのごとく……

さらにリヒャルト・シュトラウス指揮ベルリン国立歌劇場管弦楽団によるモーツァルトのト短調の第一楽章の一部、
エルマンによるフンメルのワルツ、
フルトヴェングラー指揮ベルリンフィルハーモニーのワーグナーのジークフリートの葬送行進曲(1933年)など、
6曲のSP盤からの音楽も収められている。

このカセットブックを聴いたのは、これが出た1987年の一度きりで、じつはそれ以降一度も聴いていない。
やはり、いまもう一度聴いておこう、と思いながらも、カセットデッキはないし、ラジカセもない。
カセットブックを聴く手段がない、というなさけない状況なので、ラジカセで気に入ったものがあったら、
買ってきて「音楽談義」を聴こう、そう思ってずるずる10年が経っている……。

Date: 3月 2nd, 2012
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(その79)

管球式コントロールアンプに使われることが圧倒的に多いECC82(12AU7)とECC83(12AX7)、
1970年代後半からよく使われるようになってきた6Dj8などは、すべて双三極管である。

双三極管は一本のガラス管の中に真空管を2ユニット収めている。
なのでヒーターも2ユニット分ある。
1本あたりのヒーター電圧は6.3V。これが直列に接続され、
中間からももピンが出ていてヒーター用は3ピンとなっている。
だからそれぞれのユニットのヒーターに6.3Vずつ加えることもできるし、
2ユニット分のヒーターを直列のまま使えば12.6Vをヒーター電圧としてかけることになる。

ECC82もECC83もヒーターの定格は6.3V、150mAだから、
直列では12.6V、150mAとなり、並列では6.3V、300mAとなる。
あたりまえのことだが6.3Vで使おうと12.6Vで使おうと、ヒーターが消費する電力は変らない。

コントロールアンプで真空管が1本だけということはまずない。
必ず複数の真空管が使われる。
マッキントッシュのC22もマランツのModel 7もECC83を両チャンネルあわせて6本使用している。

真空管をが複数本の場合、ヒーター関係の配線をどう処理するのか。
12.6V、6.3Vどちらで使うにしても、すべての真空管のヒーターを並列接続して、というのが、
だれもがまず最初に考えることだろう。

直流点火にするのか交流点火にするか、
どちらにしても良質のヒーター用の電源を確保できれば、そこから先に関しては、
つまりヒーターへの配線方法に関してはそれほど注意を払う必要はないようにも思われる。
私も10代のころは、そんなふうに考えてしまっていた。
とにかくノイズが少なくて、低インピーダンスのヒーター用の電源回路が大事であって、
そこから先、真空管のヒーターへの配線(どこをどう引き回すか、ではなく、どう供給するか)には、
気が回らなかった。せいぜいが贅沢をすれば、真空管1本1本に専用の電源回路を用意するぐらいだった。

Date: 3月 1st, 2012
Cate: background...

background…(その1)

BGMがある。
あらためていうまでもなくBGMは、バックグラウンドミュージック(Background Music)の略であり、
バックグラウンドミュージックは直訳すれば、環境音楽、背景音楽ということになっている。

これからさき、ぽつぽつとBGMについて書いていこうと思っている。
オーディオとBGMは、──なんといったらいいだろうか、
真剣にオーディオに取り組んでいる人からは、
「BGMのためにオーディオをやっているわけではない」といわれるそうだ。

BGMという言葉には、音楽を軽く扱ってしまっている、そんな印象があるためなのだろうが、
BGMと似た印象を持っている言葉としてイージーリスニング(easy listening)がある。
イージーリスニングは、日本では、軽音楽を指している。

軽音楽という言葉自体、いまではあまりお目にかからなくなってしまったが、
1970年代にはポール・モーリアが流行っていた。
軽音楽といえば、私にとってはポール・モーリアが、まず頭に浮ぶ。

日本フォノグラムが、ポール・モーリアのレコードを出していた。
数年前、友人を通じて届いたレコードの中に、ポール・モーリアのLPが数枚含まれていて、
日本盤ではあるものの、中のディスクはフランスからの直輸入盤だった。

このポール・モーリアの音楽は、BGMとなり得るのだろうか……、という疑問がわいてくる。