真空管アンプの存在(その79)
管球式コントロールアンプに使われることが圧倒的に多いECC82(12AU7)とECC83(12AX7)、
1970年代後半からよく使われるようになってきた6Dj8などは、すべて双三極管である。
双三極管は一本のガラス管の中に真空管を2ユニット収めている。
なのでヒーターも2ユニット分ある。
1本あたりのヒーター電圧は6.3V。これが直列に接続され、
中間からももピンが出ていてヒーター用は3ピンとなっている。
だからそれぞれのユニットのヒーターに6.3Vずつ加えることもできるし、
2ユニット分のヒーターを直列のまま使えば12.6Vをヒーター電圧としてかけることになる。
ECC82もECC83もヒーターの定格は6.3V、150mAだから、
直列では12.6V、150mAとなり、並列では6.3V、300mAとなる。
あたりまえのことだが6.3Vで使おうと12.6Vで使おうと、ヒーターが消費する電力は変らない。
コントロールアンプで真空管が1本だけということはまずない。
必ず複数の真空管が使われる。
マッキントッシュのC22もマランツのModel 7もECC83を両チャンネルあわせて6本使用している。
真空管をが複数本の場合、ヒーター関係の配線をどう処理するのか。
12.6V、6.3Vどちらで使うにしても、すべての真空管のヒーターを並列接続して、というのが、
だれもがまず最初に考えることだろう。
直流点火にするのか交流点火にするか、
どちらにしても良質のヒーター用の電源を確保できれば、そこから先に関しては、
つまりヒーターへの配線方法に関してはそれほど注意を払う必要はないようにも思われる。
私も10代のころは、そんなふうに考えてしまっていた。
とにかくノイズが少なくて、低インピーダンスのヒーター用の電源回路が大事であって、
そこから先、真空管のヒーターへの配線(どこをどう引き回すか、ではなく、どう供給するか)には、
気が回らなかった。せいぜいが贅沢をすれば、真空管1本1本に専用の電源回路を用意するぐらいだった。