Archive for category サイズ

Date: 10月 22nd, 2008
Cate: Celestion, SL6, サイズ

サイズ考(その11)

セレッションのSL6をはじめて聴いたのは、ステレオサウンドの新製品紹介の記事の試聴で、だ。
山中先生に試聴をお願いしていた新製品のいくつか聴いてもらい、最後に鳴らしたのがSL6である。

当時の試聴室のリファレンススピーカーのJBL(4343BWXだったり4344だったりしていた)を
どかした場所に専用スタンドの上に乗せたSL6を設置した。
小型スピーカー・イコール・LS3/5Aの印象が強いころだっただけに、
「この位置で、ほんとうに大丈夫?」と訝りながらも、出てきた音には素直に驚いた。

SL6が登場したときは、まだCDが出ておらずアナログディスクでの試聴なのだが、
ウーファーのフラつきがなく、いささかの不安も感じさせずに安定した低音を響かせる。
LS3/5Aよりもサイズはたしかに大きいが、あきらかに時代の違いが現われている。
とにかく音だけ聴いていると、目の前にあるSL6のサイズを想像できない。

山中先生も興奮されている。
「これで鳴らしてみようよ」と言われた。

さっきまでJBLで聴いていたクレルのモノーラルパワーアンプのKMA200は、
A級動作で200Wの出力をもつ、筐体の大きさはSL6よりも大きい。
価格もSL6がペアで156000円に対し、KMA200はたしか258万円だった。

ここでもう一度驚くことになる。

Date: 10月 22nd, 2008
Cate: BBCモニター, Celestion, LS3/5A, SL6, サイズ
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サイズ考(その10)

ロジャースのLS3/5AとセレッションのSL6、どちらもイギリスで誕生した、いわゆる小型スピーカーだが、
LS3/5Aが可搬型モニタースピーカーとして、サイズ自体の設定から開発が始まったのに対し、
SL6は、技術者が求める性能を満たすために必要な仕様として、逆にサイズが割り出されたものであること、
最初から小型スピーカーとして開発が始まったわけではない、という点が、
開発年代の違いとともに、2つを比較すると浮び上がってくる。

セレッションはSL6の開発にあたり、従来の開発手法を用いるのではなく、
技術部長のグラハム・バンクが数年前から取り組んでいたレーザー光線とコンピューターによる
スピーカーの振動モードの動的な解析技術を導入している。

この解析法で、スピーカーユニットの振動板の形状から素材まで徹底して調べ研究することで、
ユニットの口径・構造、システム全体の構成、エンクロージュアの寸法まで決定されている。
SL6は小型スピーカーをつくろうとして生れたきたものではなく、
セレッションが、当時の、持てる技術力で最高のスピーカーをつくろうとした結果のサイズである。

Date: 10月 21st, 2008
Cate: BBCモニター, LS3/5A, サイズ, 黒田恭一

サイズ考(その9)

1978年ごろに、テクニクスからコンサイスコンポが登場したとき、
黒田先生がステレオサウンドに、LS3/5Aを組み合わせて楽しまれている記事を書かれている。

キャスター付きのサイドテーブルの上に、LS3/5Aとコンサイスコンポ一式と、
たしか同時期に出ていたLPジャケットサイズのアナログプレーヤーSL10もふくめて
置かれていた写真を、こんなふうに音楽が楽しめたらいいなぁ、と思いながら眺めていた。

コンサイスコンポは、A4サイズのコントロールアンプ、パワーアンプとチューナーがあり、
どれも厚みは5cmくらいだったはず。
パワーアンプはスイッチング電源を採用することで薄さを可能にしていた。

手元にその号がないのでうろ覚えの記憶で書くしかないが、
黒田先生は、気分や音楽のジャンルに応じて、サイドテーブルを近づけたり遠ざけたり、と
メインシステムでは絶対にできない音楽の聴き方をされていた。

コンサイスコンポ・シリーズのスピーカーも発売されていたが、
黒田先生はLS3/5Aと組み合わされていたのが、この、音楽を聴くスタイルにまたフィットしているし、
省スペース・小型スピーカーだからこそ、活きるスタイルだと思う。

セレッションのSL6の登場以降、小型スピーカーの在りかたは大きく変化していったいま、
LS3/5Aに代わるスピーカーがあるだろうか。

Date: 10月 21st, 2008
Cate: BBCモニター, LS3/5A, サイズ, 瀬川冬樹

サイズ考(その8)

左右のスピーカーと自分の関係が正三角形を形造る、いわゆるステレオのスピーカーセッティングを正しく守らないと、このスピーカーの鳴らす世界の価値は半減するかもしれない。そうして聴くと、眼前に広々としたステレオの空間が現出し、その中で楽器や歌手の位置が薄気味悪いほどシャープに定位する。いくらか線は細いが、音の響きの美しさは格別だ。耐入力はそれほど強い方ではない。なるべく良いアンプで鳴らしたい。
     ※
ステレオサウンド 43号に、瀬川先生はLS3/5Aについて、こう書かれていた。

一辺が1m未満の正三角形のセッティングで聴くLS3/5Aの音は、まさにこのままで、
ミニチュアの音像が見えるかのように定位する箱庭的世界は、他のスピーカーでは味わえない。

ただしウーファーのフラつきは絶対に避けるべきで、その意味ではCDになり、
より安定した音が容易に得られるだろう。
井上先生はQUADのパワーアンプ405との組合せを推奨されていた。
405は、あまり知られていないが巧みな低域のコントロールを行なっている。
小出力時はそのままだが、ある程度の出力になると、低域を適度にカットオフしている。
だからこそ、当時の技術で、あのサイズで、100W+100Wの出力を安定して実現できていた面もある。
この特性こそ、LS3/5A向きと言えよう。

私がこれまで聴いたなかで、強烈だったのが、GASのThaedra(ティアドラ)で鳴らした音だ。
ティアドラはコントロールアンプだが、ラインアンプの出力は、
8Ω負荷で約数W(うろ覚えだが3Wだったはず)をもつ。しかもA級動作で、だ。
スピーカー端子はないから、RCAプラグにスピーカーケーブルをハンダ付けして聴くことになる。

そこそこの音で鳴るかな、という期待は持っていたが、それを大きく上回る、
新鮮で、楽器固有の艶やかな音色を、過不足なく描写する。
LS3/5Aの線の細さが薄れるのは、人によって魅力がなくなったと感じるかもしれないが、
それ以上の瑞々しさに聴き惚れてしまう。気になるボケが感じられない。

ティアドラのラインアンプの出力は、トランジスターのエミッターからではなく、
コレクターからとり出している。このことも効いているのかもしれない。

Date: 10月 21st, 2008
Cate: BBCモニター, LS3/5A, サイズ

サイズ考(その7)

LS3/5Aに搭載されているウーファーのKEFのB110は、
1970年代、ステレオサウンドから出ていたハイファイステレオガイドをみると、
スコーカーのページに掲載されていた。
ハイファイステレオガイドは、編集部での校正だけでなく、
国内メーカーや輸入商社に取扱い製品のチェックも依頼しているので、
校正ミスでスコーカーに分類されているわけではない。

スコーカーだが、小口径ウーファーとしてなんとか使えそうな特性も持っているユニットと捉えた方が、
LS3/5Aを理解するうえではいいかもしれない。

アナログディスクがプログラムソースの主役だったころからLS3/5Aを鳴らされている人なら、
LS3/5Aは近距離で聴いてこそ魅力を発揮するスピーカーだと感じとられていると思う。

CDが登場して、サブソニックの発生がなくなったこと、
それにLS3/5Aのネットワークが新型(11Ω)になったことも関係しているのか、
以前にくらべると、ある程度パワーを入れても不安さを感じさせなくなった。

そのためかだろうか、いまどきの小型スピーカーと同じように、
左右、後ろの壁から十分に距離をとり、聴取位置もそれほど近くない設置で聴いて、
短絡的に評価をくだし、ネット(掲示板や自身のサイト)に書いてあるのを読んだことがある。

LS3/5Aが、箱庭的な描写力で聴き手を魅了するのは、
手を伸ばせばLS3/5Aに届くぐらいの近い位置、1m以内の近接位置で聴いてこそ、である。
ほとんどヘッドフォン的な聴き方に近い。

Date: 10月 21st, 2008
Cate: BBCモニター, LS3/5A, サイズ

サイズ考(その6)

省スペースの意味を含めた小型スピーカーとして、私にとって印象ぶかいのは、
ロジャースのLS3/5Aである。

ご存じのようにLS3/5Aは、BBCのライセンスを受ければ、ロジャース以外のメーカーでも製造できる。
スペンドール、KEF、ハーベス、チャートウェルから出ているが、
最初に聴いたLS3/5Aはロジャース製であり、所有していたのも15Ωタイプのロジャース製であるため、
私にとって、LS3/5Aといえば、ロジャースのそれである。

つい最近ロジャースから復刻版のLS3/5aが出た。なぜだが、型番末尾が、
Aではなく小文字のaに変更されている。
もっともオリジナルのLS3/5Aの表記も、ネットではLS3/5aと表記している例が多いが、
所有されている方ならば、リアバッフルの銘板には、LS3/5Aと記してあるのをみてほしい。

こういう表記のいいかげんなところは、ネットの拡大とともに目につくようになった。
LS3/5Aと同じBBCモニターのLS5/1には、Aがつくのとつかないのがある。
LS5/1が当然オリジナルモデルで、当時、LSナンバーはライセンスされていなかったため、
どこそこのメーカー製ということはない。
日本で知られている、そして瀬川先生の愛機だったのは、改良モデルのLS5/1Aであり、
このモデルからKEFで生産されるようになった。

LS5/1とLS5/1Aの違いは、まずウーファーがプレッシャー製からグッドマンのCB129Bに変更され、
エンクロージュアの内部構造も手を加えられているし、
吸音材の材質、入れ方ともに変更されている。また専用アンプも、メーカーが異る。

KEFではその後、専用アンプをハリソン製のトランジスターアンプに変え、
ネットワークをやめバイアンプ駆動しに、
低域のローブーストとともにレンジ拡大をはかった5/1ACを出している。これにはLSはつかない。

LS5/1(A)は、2基搭載しているトゥイーター(セレッションのHF1300)のうち1基は、
3kHz以上での干渉をおさえるためにロールオフさせている関係で、
高域補正した専用アンプか、それ以外のパワーアンプを使用するならば、
正確な高域補正をして聴くのが当然だ。

Date: 10月 20th, 2008
Cate: サイズ

サイズ考(その5)

SACDプレーヤーが世に登場したばかりのころの、ある機種で、SACDを再生すると、
コントロールアンプと接続しないでも(ケーブル無しでも)、
ボリュームをかなり上げると音楽が聴こえるという現象が起きた。

CDプレーヤーよりも高いクロックを扱うことに、まだ技術が完全に追いついてなかった為、
不要輻射が盛大にプレーヤーから放出され、それをコントロールアンプが拾ってしまったためである。

そのSACDプレーヤーばかりのせいでもなく、コントロールアンプ側にもある。

つねにオーディオ機器は目に見えないもの、
電磁波や地磁気、漏洩フラックス、振動、熱、そういったものにさらされていて、
なんらかの影響を受けている。

こういうと、それぞれの要因が与える影響はほんの微々たるもので、
その程度で電子機器は影響を受けない、ともっともらしいことを言われる人がいる。
たしかにひとつひとつの要因を単独で判断するとそうかもしれない。

けれど実際にはすべての要因がからみあって作用している。
有吉佐和子氏の「複合汚染」を知らないのだろうか。
オーディオ機器も複合汚染にさらされているというのに。

Date: 10月 19th, 2008
Cate: サイズ

サイズ考(その4)

スピーカーはどうだろう。

オーディオ誌で、サイズごとに区分けされ、評価されるのはスピーカーである。
どこまでが小型スピーカーなのか、大型スピーカーはここから、といった明確な区分けはないものの、
なんとなく小型スピーカー特集が組まれたりしている。

見た目が小型スピーカーなら、たしかに設置面積は狭い。だからといって省スペースとはいえない。

小型スピーカーの音質上の大きなメリットである音場感の再現の高さを活かすには、
左右のスピーカーの間に、基本的には何も置いてはならない、と多くの人の共通認識だろう。

しかも左右、後ろの壁からも十分な距離をとる。これらを守って設置したら、
スピーカーまわりは何も置けない空間になってしまう。
スピーカーの設置面積ではなく、設置空間ということを考えると、
小型スピーカーも大型スピーカーも、それほどの差はない。
小型スピーカー・イコール・省スペースとは言えない。

省スペースとは言えなくても、スピーカーは、つねに目につく存在だけに、
視覚的に小型なことは、それだけでも、人によっては大きなメリットであろう。

断っておくが、小型スピーカーには、ならではの音質上の特質があるので、
存在価値は認めている。

Date: 10月 19th, 2008
Cate: サイズ

サイズ考(その3)

オーディオ機器の中でノイズを放出しているモノとなると、
CDプレーヤーに代表されるデジタル機器だろうが、意外にもパワーアンプからの輻射も多い。
スイッチング電源やD級アンプ(デジタルパワーアンプという呼称は不正確)式のモノは当然だが、
昔ながらの純アナログ式(変な言い方だが)のパワーアンプでもそうである。
特にヒートシンクが筐体の外に取りつけてあるものは注意したい。

ノイズの影響から逃げるには、距離をとるのがベストだと書いたが、
ノイズ輻射の多いオーディオ機器や、外来のノイズの影響を受けやすいオーディオ機器を使っているとしよう。

それらをノイズの影響を受けないように設置しようとすると、意外にも十分なスペースを必要とする。
ちいさなサイズの機器でも、ノイズ輻射の多いものならば、近くに他の機器を設置できない。
多少筐体は大きくても、それがノイズ輻射を減らすため、
もしくは外来のイズの影響を受けないためのものだとしたら、設置条件はかなり自由である。

オーディオ機器のサイズは見た目だけで判断しがちだが、
目に見えないノイズのことを考慮したうえで、サイズを捉えなおすと、
決して外形寸法通りではないことに気づかれるだろう。

サイズを捉えなおす上で見落としてならないのはノイズだけではない。
振動を発生するもの、その影響を受けやすいもの、
漏洩フラックスの多いもの、その影響を受けやすいもの、
発熱の大きいもの、などがある。

Date: 10月 19th, 2008
Cate: サイズ

サイズ考(その2)

CSEが、1990年ごろ発売していたMODE L93-94 EMI NOISE CHECKERは、
1台手元にあると便利な簡易計測器である。

型番のとおり、ノイズチェッカーである。
メーターや数値でノイズを表示する計測器はいくつか市販されているが、
高周波ノイズを音に変換するモノとなると、このぐらいしかないと思う。

メーター式のもので十分じゃないか、と思う人もいると思う。
でも、実際にCSEのノイズチェッカーを試してみると、
ノイズの質(たち)の違いが音の違いとなって、すぐにわかる。

連続するノイズでも、ジャーなのか、シャーなのか、ジージーと波打つ感じなのか、
断続的なノイズでも、ボッボッ、プチップチッだったり、じつにさまざまで、
思わぬものが意外にノイズをかなり出していることもわかる。

ノイズの影響を避けるにはどうしたらいいのか。
シールドを厳重にしたり、電波吸収材を使ったりする前に、いちばん確実で有効な手段は、
ノイズ源から十分な距離をとることである。
お金も必要としないし、シールドすることによる音質への影響も関係ない。

Date: 10月 14th, 2008
Cate: サイズ

サイズ考(その1)

オーディオ機器のサイズの定義は、あるようでない、と言えよう。
スピーカー・ユニットの口径ひとつとっても、何cm以上が大口径なのか、小口径は何cm以下なのか、
まったく決っていない。ただ感覚的に、38cm口径は大口径と言っている。

たしかに10cm口径のユニットと比較すると38cmは大口径と言えるが、比べてみての話だ。
エレクトロボイスが以前出していた76cm口径のウーファー、30Wや
ダイヤトーンが市販したことのある160cmのウーファーと比べると、
38cmも小口径と言わないが、大口径とは言えない。

定義が決ってないので、ふだん見慣れているモノのサイズよりも大きければ、大口径、大型となる。
ということはオーディオに関心のない人にとっては、20cm口径のユニットでも、
相当大きなスピーカーと感じるかもしれないし、
同じオーディオマニア同士でも、世代が違えば、サイズに対する感覚も異っているだろう。

60年代のスピーカーは、ウーファーといえば38cm(15インチ)がスタンダードだと言えよう。
この時代のスピーカーに馴染んでいる人と、90年代以降のスピーカーに馴染んでいる人とでは、
サイズ感覚もずいぶん違うだろう。それに住環境も無視できない。

そしてオーディオ機器のサイズは、見た目だけではない。