Archive for category 日本のオーディオ

Date: 3月 4th, 2015
Cate: 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これまで(その1)

私が熱心にステレオサウンドを読んでいたころも、
私がステレオサウンドで働いていたころも、
日本のオーディオ機器には個性がない、とか、オリジナリティがない、とか、
海外オーディオのモノマネの域を脱していない、などよくいわれていた。

そういう面がまったくなかったとはいわない。
これらを言っていたのは、確かな人たちであり、なぜいわれるのかも納得はしていた。
けれど、ふり返ってみれば、その時代の国産MCカートリッジに関しては、
それらのことはあてはまらない、とはっきりいえる。

1970年代後半にMC型カートリッジのブームがおきた。
それまでMC型カートリッジに積極的でなかったメーカーも製品を出しはじめた。
これらのカートリッジの詳細と図解は、ステレオサウンド別冊HIGH-TECHNIC SERIES 2を参照してほしい。
長島先生による本である。

この本こそ、ステレオサウンドは電子書籍化して、
これから先何十年経っても読めるようにしてほしいと思う。

HIGH-TECHNIC SERIES 2の図解をみていけば、誰もが気付く。
国産MC型カートリッジの構造のオリジナリティに、である。

鉄芯巻枠を使った、いわゆるオルトフォンタイプのMC型もあるが、
ここから完全に脱却した各社独自のMC型カートリッジがいくつもの登場している。

Date: 9月 4th, 2014
Cate: 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これから(モノづくり・その2)

IT企業のITは、いうまでもなくInformation Technologyの略である。
だが、日本のIT企業の中には、Information Technologyを持っていないのではないか、と感じる企業もある。

そういう企業もInformation Technologyということになっている。
そういう企業が考えるTechnologyと私が考えるTechnologyが違うのかもしれない。

そういう企業トップが、「日本のモノづくりには……」と発言する。
そういうIT企業の「ような」会社のトップのいうことだから──、と私はおもう。

今回のテクニクス・ブランドの復活は、オーディオ機器というモノづくりを、
パナソニックが復活させた、ということである。

今回発表されたアンプやスピーカーシステムの出来がどの程度なのかについては、
まだ写真を見ただけだから、あれこれ書くのは控えておく。
だが、パナソニックは、先のIT企業の「ような」会社ではない。

それに技術者がいないのでは……、ということは、必ずしもネガティヴなことではない。
テクニクスの製品でいえば、オープンリールデッキのRS1500U。
このモデルの開発には、新しい感覚、新しい考え方を盛り込むために、
あえて半数以上がテープデッキの開発に携わったことのない技術者で編成されたグループが行っている。

RS1500Uの開発に関する記事は、ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」のテクニクス号で読める。
テクニクス号はすでに絶版だが、電子書籍となっている。

Date: 9月 4th, 2014
Cate: Technics, 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これから(モノづくり・その1)

昨夜、ドイツでのIFAでテクニクスの発表があった。
現地時間の15:00〜16:00時におこなわれたカンファレンスの内容は、
インターネットのおかげでその日のうちに知ることができた。

それに大手新聞のウェブサイトでも伝えられていた。
そしてブログやSNSに、発表された製品についての意見が出て来ている。
あえて検索しないでも、facebook、twitterをやっていれば目に入る。

いろいろな意見、感想がある。
その中に、もうオーディオの技術者がいなんじゃないのか、
もしかするとアウトソーシングなのではないか、という書き込みも目にした。

今回のテクニクスのように、開発をストップしてからの復活の場合、
技術者はどうなのか、ということは、つねにいわれる。
私だって、20代のころならば、おそらく同じことを言っていた、であろう。

「何年オーディオの開発から遠ざかっているんだよ」

モノづくりとは、こう言い切れるものだろうか。
つい最近も、日本のモノづくりについて、あるIT企業のトップが発言していたことを目にした。
日本がモノづくりで競争力をとり戻せる日は来ない、というものだった。
これに同調したライターの記事も目にした。

Date: 9月 1st, 2014
Cate: Technics, 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これから(テクニクス・ブランドの復活・その11)

1976年10月にテクニクスのオープンリールデッキRS1500Uは登場した。
この年の4月にエルカセットが発表になっている。

1976年秋は、ちょうど私が五味先生の「五味オーディオ教室」とであい、
急速にオーディオへの関心が高まっていった時期でもある。

このとき電波科学を読んでいた。
いまはなくなってしまった電波科学はおもしろかったし、勉強になった。
毎号、メーカーの技術者による新製品の解説記事が載っていた。
ページ数も10ページほどあったように記憶している。
かなり詳細に、その新製品に盛り込まれている技術についての解説だった。

テクニクスのRS1500Uについての、その記事もあった、と思う。
詳しい内容はほとんど憶えていないが、
RS1500Uに投入されたアイソレートループ技術は、
それまでのオープンリールデッキの走行メカニズムとは違うことが、
視覚的にはっきりと、わかりやすく提示されていて、
そのころはオーディオ初心者だった私にも、それがいかに独創的であるかが伝わってきていた。

この点に関して、オープンリールデッキとスピーカーシステムは共通する、といえることをこのとき感じていた。

Date: 8月 31st, 2014
Cate: Technics, 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これから(テクニクス・ブランドの復活・その10)

テクニクスはブランド名、ナショナルもブランド名、松下電器産業が会社名だったころ、
松下電器産業のことを「マネした電器産業」と揶揄した人が少なからずいた。

そういう人たちがそんなふうに口さがないのも、ある面しかたなかった。
オーディオ製品に関しても、いわゆるゼネラルオーディオと呼ばれていた普及クラスの製品に関しては、
そういった面も少なからずあった。

それでもテクニクス・ブランドで出していたオーディオ機器に関しては、
「マネした電器産業」といってしまうのは失礼であるし、どこを見ているのだろうか、といいたくなる。

マネした電器産業が、ダイレクトドライヴ方式のターンテーブルを世界ではじめてつくり出すだろうか。
SP10だけではない。
他にもいくつも挙げられる。

リニアフェイズ方式のスピーカーシステムもそうだ。
カートリッジにしても、テクニクスならではのモノをつくってきていた。
特にEPC100CはMM型カートリッジとしてのSP10的存在、つまり標準原器を目指した製品といえる。

テクニクスの製品の歴史をふり返っていくと、決して「マネした電器産業」ではないことははっきりとしてくる。
その中でも、強く印象に残っている、テクニクスらしい製品といえば、オープンリールデッキのRS1500Uがある。

RS1500Uはリニアフェイズのスピーカーシステムと視覚的に同じところがる。
ひと目で、そこに投入されている技術が確認できるし、
テクニクスの製品であることがわかるからだ。

Date: 8月 26th, 2014
Cate: Technics, 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これから(テクニクス・ブランドの復活・その9)

SP10MK2の存在を私が知ったのは1976年。13歳のときで、ひどいとは感じなかった。
そう感じなかったひとつの理由としてSP10の専用キャビネットとしてSH10B3があったことが大きい。

SH10B3は天然黒曜石、木材、粘弾性材の三層構造で、四隅は丸く処理されていて、
黒い光沢のある、このキャビネットと組み合わされた雰囲気は、なかなかいいと感じていた。

もっともSP10に対する厳しいことは、おもに使い勝手にある。
こればかりは、当時は実物を見たこともなかったし、オーディオ機器に触れたこともわずかなのだから、
なんともいえなかったが、少なくともSH10B3の雰囲気には惹かれるものがあった。

書かれていることはわからないはないけれど……、そんなふうにも思っていた。
それでも数年後、SL100W、SL1000の存在を知ると、厳しい意見が出て来たのも頷けなくもなかった。

SL100WはSP10を専用ウッドケースにおさめたもので、ダブルトーンアーム仕様。
SL1000はSP10とトーンアームEPA99をウッドケースにおさめたもの。
写真でしかみていないが、安易にウッドケースにおさめたことで、どちらもSP10の無機質なところが際立つ。

これでは、あれこれ厳しいことがいわれてきたのもわかる気がする。
ダイレクトドライヴという世界初のモノが、期待通りもしくは期待以上の性能を有して登場してきた。
にも関わらずプレーヤーシステムとしてのまとまり、雰囲気が、
オーディオマニアがレコードをかける心情をまったく理解していない──、そんな感じのものであれば、
改良モデルで、その点が手直しされることを期待しての発言でもあった、はずだ。

テクニクスもそのことは理解していたような気がする。
だからこそSH10B3を出してきたのだろう。
一方でSP10のスタイルはスイッチ類にわずかな変更はあったものの、まったく変更されることはなかった。

ここにテクニクスというブランドの面白さがあるように思っている。

Date: 8月 26th, 2014
Cate: Technics, 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これから(テクニクス・ブランドの復活・その8)

テクニクスのSP10MK2は、ステレオサウンド 37号の新製品紹介に登場している。
ターンテーブルとしての高性能であることは、37号の記事でも語られている。
同時に、SP10のスタイルについては、かなり厳しいことが述べられている。
     *
山中 このスタイルというのは、人によって好き嫌いがはっきり分かれそうですね。
 僕個人としては、モーターボードの高さの制限を相当受ける点に、問題点を感じてしまうのですけれども、これは、実際にアームを取りつけて使ってみると、非常に使いにくいんです。
井上 モーターボードをもっと下げて、ターンテーブルが突き出たタイプの方が使いやすいと思われますね。
     *
SP10のスタイルについての発言はまだ続く。
記事の半分以上はスタイルについて語られている。

SP10のスタイルについては、菅野先生も以前から厳しいことを書かれている。
     *
 もちろん、いくらそうした血統のよさは備わっていても、実際の製品にいろいろな問題点があったり、その名にふさわしい風格を備えていないのならば、〝ステート・オブ・ジ・アート〟に選定されないわけである。その意味からいえば、私個人としては完璧な〝ステート・オブ・ジ・アート〟とはいいがたい部分があることも認めなければいけない。つまり、私はプレーヤーシステムやターンテーブルにはやはりレコードをかけるという心情にふさわしい雰囲気が必要であると思うからで、その意味でこのSP10MK2のデザインは、それを完全に満たしてくれるほど優雅ではなく、また暖かい雰囲気をもっているとはいえないのである。しかし、実際に製品としてみた場合、ここに投入されている素材や仕上げの精密さは、やはり第一級のものであると思う。このシンプルな形は、ある意味ではデザインレスともいえるほどだが、やはり内部機構と素材、仕上げというトータルな製品づくりの姿勢から必然的に生まれたものであろう。これはやはり、加工精度の高さと選ばれた材質のもっている質感の高さが、第一級の雰囲気を醸し出しているのである。
     *
これはステレオサウンド 49号のもの。
瀬川先生もステレオサウンド 41号で書かれている。
     *
 ただ、MKIIになってもダイキャストフレームの形をそのまま受け継いだことは、個人的には賛成しかねる。レコードというオーガニックな感じのする素材と、この角ばってメタリックなフレームの形状にも質感にも、心理的に、いや実際に手のひらで触れてみても、馴染みにくい。
     *
ここで引用した他にもSP10のスタイルについては、あれこれ書かれているのを読んでいる。
SP10のスタイルに肯定的な文章は読んだ記憶がない。

Date: 8月 26th, 2014
Cate: Technics, 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これから(テクニクス・ブランドの復活・その7)

松下電器産業の無線研究所でダイレクトドライヴの開発が行なわれていた1960年代後半当時の測定用レコードは、
当時のアナログプレーヤーのS/N比を測定するのには問題のないレベルだったが、
世界初のダイレクトドライヴが目標とした60dBのS/N比の測定には役に立たないレベルでしかなかった。

どんなにアナログプレーヤーのS/N比が向上しようとも、
測定に使うレコードのS/N比が60dB以上でなければ、
それはレコードのS/N比の限界を測定しているようなものである。

60dBのS/N比のためには、60dB以上のS/N比の測定用レコードを確保することが必要になる。
そこで市販されていた測定用レコードを使わずに、ラッカー盤をそのまま使った測定用レコードにする。
これだけで10dB向上する、とのこと。

それでもまだまだである。
次にラッカー盤の削り方の工夫。それからカッティングマシンの回転数を33 1/3回転から45回転にアップ。
これでラッカー盤測定用レコードのS/N比は50dB近くに。それでも足りない。

33 1/3回転から45回転にしたことで約10dBの向上がみられるのならば、
さらに高回転、つまりSPと同じ78回転にすることで目標の60dBのS/N比の測定用レコードを実現。

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」のテクニクス号で、この記事を読んで気がついた。
SP10は、初代モデルもMK2もMK3にも78回転があった。

私がSP10MK2の存在を知った1976年、
国産のダイレクトドライヴ型のアナログプレーヤーで、78回転に対応していたのは、他になかった。
そのときは、SP10はダイレクトドライヴのオリジネーターということ、
テクニクスを代表するモデルだから、78回転もあったのだと思っていた。

もちろんそれも理由としてあっただろうが、78回転に対応していなければ、
当時の技術では60dBレベルのS/N比を測定することができなかったから、も理由のひとつのはずだ。

Date: 8月 25th, 2014
Cate: Technics, 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これから(テクニクス・ブランドの復活・その6)

松下電器産業には当時15ヵ所の研究所をもっていた。
これらの中で、オーディオと関係していたのは、
中央研究所、材料研究所、無線研究所、音響研究所、電子工業研究所、生産技術研究所の六つである。

ダイレクトドライヴを開発した無線研究所は、テクニクス号によれば、
テレビ、音響機器とそれらを支える電子部品の研究開発、電波伝送理論から高周波・低周波の回路系、
精密機械系や電子部品にいたるまで広範にわたる、とある。

その無線研究所が目標としたS/N比60dB。
これを実現するには、S/N比60dB以上を測定できる環境がまず必要となる。

開発がはじまり1967年には試作品一号機ができる。
無線研究所は線路の近くにあったため、測定は深夜に行なわれていた。

もちろん測定には防振台の上に置かれて行なわれるのだが、
電車の通過によって地面が振動してしまっては、防振台でも完全には遮断できないため、
電車の運行が終っての深夜、S/N比の測定は始まる。

試作機は一号機、二号機……となり、S/N比は向上しているはずだし実感できているのに、
測定値は30dBあたりで足踏みしていた。
原因は測定用レコードにあった。

Date: 8月 25th, 2014
Cate: Technics, 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これから(テクニクス・ブランドの復活・その5)

1975年にMK2となったSP10。
それ以前に、Technicsのロゴの前からナショナルのマークは消えている。
いつごろ消えたのかははっきりとしない。

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」テクニクス号でも、確認できる。
何枚かのSP10の写真が載っていて、Technicsのロゴだけになっているのがある。

SP10は1970年6月の発表だが、
ダイレクトドライヴの発表は一年前に行なわれている。

この本によると、ダイレクトドライヴの開発に松下電器産業が着手したのは昭和41年(1966年)頃となっている。
SP10登場まで四年間である。

ダイレクトドライヴの開発にあたったのは音響研究所では無線研究所である。
ダイレクトドライヴ登場以前、モーターゴロを発生するプレーヤーが当り前のようにあった。
当時のオーディオ雑誌のプレーヤーの評価記事をみても、モーターゴロという単語が登場する。
モーターゴロがあればターンテーブルのS/N比は十分な値が確保できない。

SP10の登場、つまりダイレクトドライヴの登場は、アナログプレーヤーのS/N比を確実に向上させている。
無線研究所では、それまでのアナログプレーヤーの一般的なS/N比25〜30dBに対し、
60dBを目標としていた。

Date: 8月 24th, 2014
Cate: Technics, 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これから(テクニクス・ブランドの復活・その4)

Technicsのロゴの頭につくナショナルのマーク。
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」テクニクス号に掲載されている写真をみていく。

アメリカではテクニクス・ブランドが登場する以前からパナソニック(Panasonic)ブランドであり、
当時のアメリカでの広告には、Technics by Panasonic の文字がある。
ちなみに1973年のアメリカでの広告には、こう書いてある。

Introducing a new world in the Hi-Fi vocabulary:
Technics[tek·neeks′]n. a new concept in components.

ハイファイ用語に登場した新しい単語を紹介しましょう。
テクニクス、名詞。コンポーネントの世界に置ける新しい概念

tek·neeks′は発音記号で、カタカナ表記すれば、テク・ニークスか。
そういえば1970年代後半、テレビコマーシャルで流れていたのも、テク・ニークスだったはず。

アメリカではブランドとしてナショナルではなくパナソニックが使われていたが、
イギリス、フランス、ドイツなどヨーロッパでは、ナショナル・ブランドだった。

「世界のオーディオ」テクニクス号でも、海外でのテクニクスについての記事では、
SP10同様、Technicsのロゴの頭にナショナルのマークがついているのが確認できる。

Date: 8月 22nd, 2014
Cate: Technics, 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これから(テクニクス・ブランドの復活・その3)

そのSP10だが、ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」のテクニクス号を読むと、
すこし意外なことが書かれている。
菅野先生の文章だ。
     *
 テクニクスというと、私はいまだに思い出す1つの光景がある。それは、ダイレクトドライブ・ターンテーブルSP10との最初の対面のときだ。今から8年ほど前になるこの出会いは、ターンテーブル・メカニズムの発想を根本から変えたという意味で、大変にショッキングなものだった。
 と同時に、そのSP10を松下電器の方々が、はじめて私の家に持ってこられたときの光景を思い出すわけだ。そのとき私は「松下という会社は、昔から決してオーディオに冷たいメーカーではない。大メーカーのなかでは、われわれにとって、アマチュア時代からなじみのあるメーカーだ。しかし、松下電器とか、ナショナルとかいうブランドはオーディオに対して訴える力がどうしても弱く感じられる。それはオーディオのイメージが弱いというよりも、そのほかのイメージが強すぎるからだろう。たとえば、このSP10にもNATIONALというマークがついている。するとどうしても電気がまや掃除機のイメージの方が強くなるから、このマークは取り去った方が良いのではないですか」という話をした。
 そのとき「いや、これは会社の憲法であり、これを変えたら大変なことになる」という言葉が返ってきたが、私は「オーディオというのは非常に趣味性の高いものだし、オーディオファンが親しみと信頼をもってくれるブランド名を製品に与えるのが本当だと思う。そのためにも考え直された方が良いのではないだろうか」といった覚えがある。
     *
意外だった。
テクニクスの顏といえる存在のSP10に、最初のころとはいえ、ナショナルのマークがついていたことは。

テクニクス号には、いくつかのSP10の写真が載っている。
その中にはナショナルのマークはないものが多いが、
小さな写真でぼんやりしているが、
ひとつだけ、Technicsのロゴの左側にナショナルのマークらしきものが見えるのがある。

Date: 8月 22nd, 2014
Cate: Technics, 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これから(テクニクス・ブランドの復活・その2)

松下電器産業からテクニクス(Technics)ブランドの最初の製品、
Technics1が登場したのは昭和40(1965)年6月である。

来年(2015年)は、テクニクス・ブランド誕生から50年にあたる。
それもあってのテクニクス・ブランドの復活なのかも、とも思っている。

1965年は松下電器産業が、音響研究室を発足させた年でもある。
この音響研究室がのちの音響研究所だ。

1963年生れの私にとって、テクニクスときいて、真っ先に浮ぶイメージは、
リニアフェイズのスピーカーシステム、それからSP10から始まったダイレクトドライヴ型ターンテーブルである。

世界初のダイレクトドライヴ型でもあるSP10は、テクニクスの顏でもあった。
私がオーディオに興味を持ち始めた1976年には、SP10は改良されSP10MK2となっていた。
たしか1975年にSP10MK2になっている。

さらに1981年に、ターンテーブルプラッターを従来のアルミダイキャスト製3kgから、
銅合金+アルミダイキャスト製で、重量は10kgのものへと変更されたSP10MK3が出た。

ダイレクトドライヴ型は性能はいいけれど、音は芳しくない、といわれた時期に、
テクニクスがオリジネーターの意地を見せつけてくれた製品でもあった。
SP10MK2は15万円だったが、MK3では25万円になっていた。

SP10は、やはりテクニクスの顏であった。

Date: 8月 18th, 2014
Cate: Technics, 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これから(テクニクス・ブランドの復活・その1)

テクニクス・ブランドが年内に復活する、というニュースが昨日あった。
詳細についてはほとんどわからない。
どういうラインナップで復活するのか、具体的な情報はない。

なので、テクニクス・ブランドの復活に対しての個人的な感情は、いまのところない。
嬉しい、とも感じていないし、いまさら、とも思っていない。
ほんとうに年内に復活するのであれば、あと四ヶ月以内の話である。

もう少しまてば、いろいろなことがはっきりしてくる。
その時点で、どう思える製品を出してくるのか。

日本のオーディオメーカーは専業メーカーももちろんあるが、
松下電器産業(パナソニック)、東芝、日立といった総合電気メーカーがオーディオも手がけていた。

当時はそれがあたりまえのことであったけれど、
オーディオ業界が衰退していくと、日本のメーカーの特色がよりはっきりしてきた。

海外の、どのオーディオメーカーでもいい、
アンプにしろスピーカーシステムにしろ、
そこに使われているすべてパーツを自製できるメーカーがいくつあるだろうか。

アンプならばトランジスター、LSIといった半導体を開発製造し、
受動部品のコンデンサー、抵抗も製造する。トランスも必要となる。
スピーカーでは、振動板の材質、マグネットなどがある。

すべてのパーツを自社で製造したから優れたオーディオ機器がつくれる──、
というものではないことはわかっているが、
そういうことができるメーカーが、以前はオーディオ機器をつくっていた。

このことは時代が経つにつれ、すごいことだった、と実感できる。

Date: 7月 18th, 2014
Cate: 日本のオーディオ

山水電気のこと(補足としての、その3)

サンスイの今回の件について、(その2)までで(その3)以降は書く予定ではなかった。
けれどfacebookのaudio sharingのグループにコメントをもらった。
そのコメントへの返信の意味で、これを書いている。

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」に対するサンスイとティアックの違いについて書いた。
タンノイ号にお金を出したティアックの経営陣が立派で、
そうでなかったサンスイの経営陣は立派ではない、なんてことは思っていない。
そんなことを言いたかったわけではない。

ただ、編集者としてこういうことがあった、
一方ではこうだった、ということを書いて、
その違いが私にとっては、今回の件と決して無関係ではない、と思っている、というだけである。

この見方に賛同される人、納得される人、そんなバカな! と思われる人、
いろいろな受けとめ方をされていい。
何も私が今回書いたことに納得してほしいわけではない。

あくまでもひとつの意見でしかない。

それでも何に対してお金を出すのか出さないのか。
このことはきちんと見ていくべきではないか、とは思っている。

山水電気は「世界のオーディオ」の数年後に、あることにかなりの大金を出している。
「世界のオーディオ」とは比較にならぬほど大きな額である。
この数年後とは、1987年のことである。

1987年にオーディオをやっていた人ならば、あれか、と思い出されるだろう。
まだその頃はオーディオはやっていなかったという人でも、いまはインターネットですぐに調べられる。

この1987年のことについては、まったく別のテーマで書いていくかもしれない。
書かないかもしれない。

私の中では、書かない言わないで、墓場までもっていくことがいくつかある。
いうべきことでないことを知っている。
それらのことについては語ることは絶対にない、といえる。
だが、そのことを知っているから書けることもある。

それからいつか書いてもいい、と思えるときがきたら書こう、と決めているいくつかのことがある。
1987年のことは、ここに入っている。

山水電気の今回の件に関しては、ここまでである。