日本のオーディオ、これから(テクニクス・ブランドの復活・その7)
松下電器産業の無線研究所でダイレクトドライヴの開発が行なわれていた1960年代後半当時の測定用レコードは、
当時のアナログプレーヤーのS/N比を測定するのには問題のないレベルだったが、
世界初のダイレクトドライヴが目標とした60dBのS/N比の測定には役に立たないレベルでしかなかった。
どんなにアナログプレーヤーのS/N比が向上しようとも、
測定に使うレコードのS/N比が60dB以上でなければ、
それはレコードのS/N比の限界を測定しているようなものである。
60dBのS/N比のためには、60dB以上のS/N比の測定用レコードを確保することが必要になる。
そこで市販されていた測定用レコードを使わずに、ラッカー盤をそのまま使った測定用レコードにする。
これだけで10dB向上する、とのこと。
それでもまだまだである。
次にラッカー盤の削り方の工夫。それからカッティングマシンの回転数を33 1/3回転から45回転にアップ。
これでラッカー盤測定用レコードのS/N比は50dB近くに。それでも足りない。
33 1/3回転から45回転にしたことで約10dBの向上がみられるのならば、
さらに高回転、つまりSPと同じ78回転にすることで目標の60dBのS/N比の測定用レコードを実現。
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」のテクニクス号で、この記事を読んで気がついた。
SP10は、初代モデルもMK2もMK3にも78回転があった。
私がSP10MK2の存在を知った1976年、
国産のダイレクトドライヴ型のアナログプレーヤーで、78回転に対応していたのは、他になかった。
そのときは、SP10はダイレクトドライヴのオリジネーターということ、
テクニクスを代表するモデルだから、78回転もあったのだと思っていた。
もちろんそれも理由としてあっただろうが、78回転に対応していなければ、
当時の技術では60dBレベルのS/N比を測定することができなかったから、も理由のひとつのはずだ。