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Date: 2月 23rd, 2015
Cate: 4343, JBL

40年目の4343(その6)

記事のタイトルが「名作4343を現代に甦らせる」ではなく、
「4343のユニットを現在に使う」とか「4343のユニットの現代的再構築」といった感じであれば、
何も書かなかった。

あくまでも「名作4343を現代に甦らせる」とあったからこそ、ここに書いている。

あれだけの数売れたスピーカーシステムだから、いまも所有されている人はけっこう多いし、
あのころ学生で買えなかった人が、中古の4343を手に入れていることも少なくない。

4343がいまもメインスピーカーである人、
メインスピーカーは別にあるけれども、4343が欲しかったから、という人、
いろいろな人がいる。

その人たちは、いまどういうふうに4343をみているのだろうか。
2016年には誕生40年に迎えるスピーカーシステムである。

いまもメインスピーカーとして使えるだけの実力をもつともいえるし、
細部を検討していくと、部分的にはどうしても……、と思えるところがないわけではない。

実際に行動にうつすかどうかは別として、
4343ユーザーなら、来年の4343誕生40周年を迎えるにあたって、
4343をどうしようか、ということを考えてみてはいかがだろうか。

徹底的にメンテナンスして、できるかぎりオリジナルの状態を保ったままで、これからも鳴らしていくのか。
オリジナルといっても、厳密な意味では発売当時の状態には戻せない。
コーン紙の製造工場も変っているし、工場が同じだとしても、
当時と同じ森林からパルプの材料となる木材を切り出しているわけではない。

細かくみていけばいくほど、1976年当時のオリジナルの状態に戻すことは、はっきりいえば不可能である。
オリジナル度に関しては、本人がどの程度で満足するか、でしかない。

ならば40年を機に手を加えてみる案はどうだろうか。
ステレオサウンドの記事のようにユニットだけを取り出して再利用して、
4343とはまったく別モノのスピーカーシステムに仕上げるのも考えられる。

私がここで書いていきたいのは、4343のアイデンティティを維持したまま、
どこまでやっていけるかである。

Date: 2月 22nd, 2015
Cate: 4343, JBL

40年目の4343(その5)

「名作4343を現代に甦らせる」という記事に対して否定的である私でも、
全面的に否定しているわけではないし、この記事の筆者である佐伯多門氏を否定・批判したいわけでもない。

佐伯多門氏は、いわばダイヤトーン・スピーカーの顏といえる人であった。
私がオーディオに興味をもちはじめた1976年、すでに佐伯氏はそういう人であった。
ダイヤトーン(三菱電機)には、こういう技術者がいるのか、と受けとめていた。

いま佐伯多門氏は無線と実験誌にスピーカーの歴史について執筆されている。
いい記事である。
こういう連載は、一冊の本にまとめてほしいし、
紙の本はどんなに良書であってもいつの日か絶版になる。
佐伯多門氏の連載は十年、二十年……、もっと後になればなるほど資料的には増していく内容である。
だからこそ絶版には基本的にはならない電子書籍でも出版してもらいたい。

佐伯多門氏はスピーカーの技術者である。
スピーカーの技術に関しての理解は、私の及ぶところではない。
けれど、ここがオーディオの難しいところだが、
スピーカーの技術を理解している人だからといって、他社製のスピーカーシステムを理解できるとは限らない。

他社製のスピーカーシステムを技術的に説明することはできても、
製品としてのスピーカーシステムの理解は、また別のものである。

私はそう考えているからこそ、「名作4343を現代に甦らせる」にはもうひとり別の人が必要だった、とする。
スピーカー技術に対しての理解は佐伯多門氏よりも低くていいけれど、
製品としてのスピーカーシステムへの理解が深くしっかりしている人が、最初から必要だったのである。

適任は井上先生だった。
ずっと以前のステレオサウンドに連載されたコーネッタの記事。
これを読み憶えている人は、どうしても「名作4343を現代に甦らせる」と比較してしまう。

そして井上先生の不在の大きさを感じてしまう。
オーディオ評論家を名乗っているだけの人ではだめなのだ。

「名作4343を現代に甦らせる」は、
4343を現代に甦らせることはできなかった意味では失敗ともいえるが、
エンジニアとオーディオ評論家の違いを、そして両者の存在する意味を間接的に語っている。
オーディオ評論家の役目、役割についても、である。

Date: 2月 21st, 2015
Cate: 4343, JBL

40年目の4343(その4)

理解していない、理解しようともしない。
このことはオーディオ評論家にとっても、オーディオ雑誌の編集者にとっても致命的なことである。
理解しようともせずに、オーディオ機器の記事を書いている、つくっている、と告白しているのと同じである。
そのことに、なぜ彼らは気づかないのか。

彼らは、目の前にある4343もどきのスピーカーをどうすればよかったのか。
ハンマーで敲きこわす。
これだけである。

4343を理解していない人には、怒りはなかったのだろう。
そうとしか考えられない。

そして思い出す。
五味先生の文章を思い出す。
     *
 とはいえ、これは事実なので、コンクリート・ホーンから響いてくるオルガンのたっぷりした、風の吹きぬけるような抵抗感や共振のまったくない、澄みとおった音色は、こたえられんものである。私の聴いていたのは無論モノーラル時代だが、ヘンデルのオルガン協奏曲全集をくり返し聴き、伸びやかなその低音にうっとりする快感は格別なものだった。だが、ぼくらの聴くレコードはオルガン曲ばかりではないんである。ひとたび弦楽四重奏曲を掛けると、ヴァイオリン独奏曲を鳴らすと、音そのものはいいにせよ、まるで音像に定位のない、どうかするとヴィオラがセロにきこえるような独活の大木的鳴り方は我慢ならなかった。ついに腹が立ってハンマーで我が家のコンクリート・ホーンを敲き毀した。
 以来、どうにもオルガン曲は聴く気になれない。以前にも言ったことだが、ぼくらは、自家の再生装置でうまく鳴るレコードを好んで聴くようになるものである。聴きたい楽器の音をうまく響かせてくれるオーディオをはじめは望み、そのような意図でアンプやスピーカー・エンクロージァを吟味して再生装置を購入しているはずなのだが、そのうち、いちばんうまく鳴る種類のレコードをつとめて買い揃え聴くようになってゆくものだ。コレクションのイニシァティヴは当然、聴く本人の趣味性にあるべきはずが、いつの間にやら機械にふり回されている。再生装置がイニシァティヴを取ってしまう。ここらがオーディオ愛好家の泣き所だろうか。
 そんな傾向に我ながら腹を立ててハンマーを揮ったのだが、痛かった。手のしびれる痛さのほかに心に痛みがはしったものだ。
(フランク《オルガン六曲集》より)
     *
もちろん、このときの五味先生がおかれていた状況と、
4343もどきのスピーカーを前にした状況は決して同じではない。
けれど、どちらにも怒りがある。
何に起因する怒りなのかの違いはある。

けれど怒りは怒りであり、その怒りがハンマーをふりおろす。

こんなことを書いていると、またバカなことを……、と思う人はいてもいい。
そういう人は4343というスピーカーシステムを理解していない人なのだから、
そんな人になんといわれようと、気にしない、どうでもいいことだ。

「名作4343を現代に甦らせる」の連載の最後にふさわしいのは、
ほんとうはなんだったのだろうか。
そのことを考えないで、オーディオについて語ることはできない。

Date: 2月 21st, 2015
Cate: 4343, JBL

40年目の4343(その3)

「名作4343を現代に甦らせる」の連載が始まった時、
すこしは期待していた。同時にどうなるのか心配な面も感じていた。
回が進むごとに、ほんとうにこの連載をこのまま続けていくのか、と思うようになっていた。

「名作4343を現代に甦らせる」について、ここで詳細に語りたいわけではない。
「名作4343を現代に甦らせる」が掲載された号をひっぱり出してくれば、
書こうと思えば、どれだけでも書いていける。
そのくらい、「名作4343を現代に甦らせる」にはあれこれいいたいことがある。

だが書くのはひとつだけにしておく。
この記事を読んで感じたのは、
「名作4343を現代に甦らせる」の筆者の佐伯多門氏は、
JBLの4343というスピーカーシステムを理解していなかった人だということ。
理解していなくとも、「名作4343を現代に甦らせる」の連載を続けるのであれば、理解しようとするべきである。
だが理解しようとされなかった。

少なくとも記事を読んで、そう感じられた。
だが佐伯多門氏だけではない。
ステレオサウンドの編集者も4343というスピーカーシステムを誰ひとりとして理解していなかった、といえる。
4343に憧れていた人は、もう編集部にはいなかったのかもしれない。
そうであっても、理解しようとするべきであった。
それがまったくといっていいほど感じられなかった。

新製品の紹介記事や徹底解剖とうたった記事をつくる以上に、
この手の記事では、対象となるオーディオ機器への理解がより深く求められる。
にも関わらず……、である。
そのことにがっかりした。

そして連載の最後、無惨に変り果てた、もう4343とは呼べなくなってしまったスピーカーを試聴した人、
この人こそ、オーディオ評論家を名乗っているのだから、
もっともオーディオへの理解が深い人であるべきだし、
読者、さらには編集者にとっても、理解することにおいて手本となるべき人なのに、
まったくそうではなかったことに腹が立った。

Date: 2月 20th, 2015
Cate: 4343, JBL

40年目の4343(その2)

10年くらい前のステレオサウンドで「名作4343を現代に甦らせる」というタイトルの連載があった。

私が4343というスピーカーの存在を知ったころ、日本ではテクニクスのリニアフェイズ、
それからKEFのModel 105、キャバスのブリガンタンなどが登場していた。
これらのスピーカーシステムは、スピーカーユニットを階段状に配置して、
マルチウェイにおけるそれぞれのユニットのボイスコイル位置を合わせる、というものだった。
実際にはネットワークを含めてのリニアフェイズなのだが。

これらのスピーカーメーカーがカタログ、広告で謳っていることからすれば、
4343の四つのユニットのボイスコイルの位置はバラバラということになる。

これを合わせるにはどうしたらいいのか。
そんなことをしょっちゅう考えていた。

ボイスコイルの位置がいちばん奥まったところにあるのは、
ミッドハイである。ホーン型だから、ホーンの長さの分だけコーン型ユニットよりも奥に位置する。
つまりこのミッドハイのボイスコイルの位置に、ミッドバス、ウーファーのボイスコイルの位置を下げる。
そのためにはどうしたらいいのか。

このころのソニーのスピーカーにSS-G7があった。
このスピーカーのスコーカーとトゥイーターはドーム型で、
ボイスコイル位置が奥にあるのはコーン型のウーファーだから、
SS-G7ではウーファーをすこし前に張り出させることで位置合せを行っている。

ならば4343では逆のことをやればいい。
ウーファーを引っ込めて、ミッドバスはコーンの頂角の違いからもう少し引っ込める。
こんなことをするとウーファーとミッドバスにはフロントショートホーンをつけることになる。

こんなスケッチを当時よく描いていた。
でもフロントショートホーンをつけると、4343はもう4343ではなくなる。
どんなに頭をひねってみても、4343というかっこいいスピーカーは消失してしまう。

それを記事としてやってしまったのが、「名作4343を現代に甦らせる」だった。
唖然とした。

Date: 2月 19th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その9)

このテーマで書いていると、あれこれ思い出したり想像したりしている。
上杉先生のステレオサウンド 38号でのシステムのこともそうだし、
こんなことも想像している。

岩崎先生と井上先生が対談形式で、D130の組合せをそれぞれつくるとしたら、
どんな記事になるだろうか、である。

井上先生はD130は、マルチウェイシステムのミッドバス帯域(100〜500Hz近辺)用として使うのにも最適だ、
と書かれているから、ここでのテーマ通りの組合せをつくられると仮定する。

岩崎先生はどうだろうか。
平面バッフルに取り付けられる気がする。
予算やスペースの制約がなければ、1m×1m程度の大きさではなく、
2m×2mの平面バッフルにD130をつけ鳴らされるのではないだろうか。

井上先生はマルチウェイで、岩崎先生はフルレンジとしてD130の組合せをつくられる。
そんなことを想像している。

井上先生はウーファーにはどのユニットを使われるのか、
エンクロージュアはどうされるのか、上の帯域はどうされるのか。
アンプはマルチアンプなのか。

岩崎先生は、そのへんどうされるのか。
100dBをこえる能率をもつD130だが、パワーアンプは大出力のモノにされるような気もする。
それこそステレオサウンド別冊HIGH-TECHNIC SERIES 4でのD130の試聴の際に、
音量をあげていったらコーヒーカップのスプーンがカチャカチャ音を立て始め、
それでも音量をあげていったら……、という瀬川先生の発言を思い出す。

瀬川先生はここで怖くなり音慮を下げられている。
岩崎先生ならば──、
その結果どういう記事ができあがるのか。
そんなことを想像するのは楽しい。

Date: 1月 20th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その8)

「なんでこんな馬鹿げたことをしたんですか」には、
これを口にする人によって、違う意味をもつことになる。

黒田先生はステレオサウンド 38号の特集で八人のオーディオ評論家のリスニングルームを訪問され、
八人のオーディオ評論家それぞれに手紙を書かれている。
上杉先生への手紙は「今日は、まことに、痛快でした。」で始まっている。

黒田先生が感じた痛快さは、馬鹿げたことをする真剣さ、一途さゆえのものと書かれている。
自分にはできないことをさらりとやってくれる人に感じる痛快さがあり、
その痛快さを表現することばとして「なんでこんな馬鹿げたことをしたんですか」がある。

その一方で、部屋の大きさに見合ったサイズのスピーカーシステムこそが理に適ったことであり、
しかも大口径の振動板に対してのアレルギーをもつ人は、
おそらく軽蔑をこめて「なんでこんな馬鹿げたことをしたんですか」と口走る。

「なんでこんな馬鹿げたことをしたんですか」と思わず口走るのであれば、
痛快さをそこに感じてでありたい。

黒田先生の上杉先生への手紙には、こんなことを書いてある。
     *
 神戸っ子は、相手をせいいっぱいもてなす、つまりサーヴィス精神にとんでいると、よくいわれます。いかにも神戸っ子らしく、上杉さんは、あなたがたがせっかく東京からくるというもので、それに間にあわせようと思って、これをつくったんだと、巨大な、まさに巨大なスピーカーシステムを指さされておっしゃいました。当然、うかがった人間としても、その上杉さんの気持がわからぬではなく、食いしん坊が皿に山もりにつまれた饅頭を出されたようなもので、たらふくごちそうになりました。
     *
ステレオサウンドの取材班が東京から神戸に来るから、ということで、
これだけの規模のスピーカーを間に合わせた、とある。
もともと計画されていたことだったのだろうが、それでもすごい、と思う。

ちなみにこのスピーカーシステムの重量は、両チャンネルあわせて約780kg。

Date: 1月 19th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その7)

上杉先生の自作スピーカーの概要はこうだ。
シーメンスのオイロダインを中心として、トゥイーターとウーファーを追加されている。

オイロダインはシアター用スピーカーで、
38cm口径のウーファーと大型ホーンを鉄製のバッフルに取り付け、エンクロージュアはもたない。
ネットワークは内蔵しているので、これを平面バッフルにとりつけるよう指定されている。
スピーカーシステムとは呼びにくいモノである。

同じコンセプトのモノはダイヤトーンにもあった。
2U208という製品で、
20cmコーン型ウーファー(PW201)と5cmコーン型トゥイーター(TW501)をバッフルに装着したモノ。
ウーファーとトゥイーターの型番が気づかれる人もいるだろう、
ダイヤトーンのスピーカーシステム2S208からエンクロージュアを取り去ったモノである。

KEFにもあった。KK3という型番で、Concertoのエンクロージュアを取り去ったモノである。

シーメンスのオイロダインも同じカテゴリーのスピーカーユニットといえよう。
このオイロダインのクロスオーバー周波数は500Hz、
これに上杉先生は8kHz以上をテクニクスのホーン型トゥイーターEAS25HH22NAに受け持たせ、
150Hz以下はエレクトロボイスの30Wで受け持たせられている。

30インチ(76cm)口径の30Wを、上杉先生は片チャンネルあたり二本、つまり両チャンネルで四本使われている。
30Wが二発横に並んでいる上にオイロダインのウーファーがあるわけだが、
38cm口径が20cm口径ぐらいに感じられる。

このシステムを目の当りにされて、
黒田先生は「なんでこんな馬鹿げたことをしたんですか」と口走られている。
     *
 三十インチ・ウーファーが横に四本並んだところは、壮観でした。それを目のあたりにしてびっくりしたはずみに、ぼくは思わず、口ばしってしまいました、なんでこんな馬鹿げたことをしたんですか。そのぼくの失礼な質問に対しての上杉さんのこたえがまた、なかなか痛快で、ぼくをひどくよろこばせました。上杉さんは、こうおっしゃいましたね──オーディオというのは趣味のものだから、こういう馬鹿げたことをする人間がひとりぐらいいてもいいと思ったんだ。
 おっしゃることに、ぼくも、まったく同感で、わが意をえたりと思ったりしました。オーディオについて、とってつけたようにもっともらしく、ことさらしかつめらしく、そして妙に精神主義的に考えることに、ぼくは,反撥を感じる方ですから、上杉さんが敢て「馬鹿げたこと」とおっしゃったことが、よくわかりました。そう敢ておっしゃりながら、しかし上杉さんが、いい音、つまり上杉さんの求める音を出すことに、大変に真剣であり、誰にもまけないぐらい真面目だということが、あきらかでした。いわずもがなのことをいうことになるかもしれませんが、上杉さんは、そういう「馬鹿げたこと」をするほど真剣だということになるでしょう。
     *
私も「なんでこんな馬鹿げたことをしたんですか」と口走ると思う。
多くの人が目の当りにすれば、同様のことを口にされるだろう。

Date: 1月 19th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その6)

ミッドバスに15インチ口径のフルレンジをもってくることはバカげていることと思う人もいるだろう。
そんなことをすればシステムが非常に大がかりになる。

いつのころからか、スピーカーシステムの大きさは部屋の大きさに見合ったほうがいい、と考える人、
主張する人が多くなってきた。

でも小さな部屋で、そのエアーボリュウムに見合う小さなスピーカーシステム。
1970年代ごろの、そういった小型スピーカーシステムと違い、
現在の小型スピーカーシステムはパワーもはいるし、音圧もとれる。
だから同列に考えることには多少の無理があるのはわかっているけれど、
小型スピーカーはエアーボリュウムがあり響きの豊かな部屋の方がうまく鳴ってくれることがある。

小さな部屋こそ、私はできるかぎり大きなスピーカーシステムを置きたい、と考える。
そんなのは古すぎる考え方だといわれようが、音量を絞っても音の豊かさを失わないのは、
やはり大型スピーカーシステムであることが多い。

だから私はD130をミッドバスという、バカげたことを真剣に考える。
でも、これは本当にバカげたことなのだろうか、と思う。

たとえばBBCモニターのLS5/1は、
中域の特性を重視して、12インチ口径ではなく15インチ口径を選択している。
低域の特性の間違いではない。

それから……、と書き始めて思い出したのが、ステレオサウンド 38号である。
「オーディオ評論家 そのサウンドとサウンドロジィ」が特集の号だった。
そこに上杉先生のリスニングルームの訪問記がある。

1976年、上杉先生が鳴らされていたスピーカーシステムはタンノイのオートグラフ、
それに自作のモノだった。

Date: 1月 18th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その5)

JBLの4350のミッドバスは2202である。
コーン型の30cm口径ウーファーである。

このユニットは2220の30cm版といえるし、
2220は130Aのプロ用版であり、130AはD130のウーファー版といえる。

4350では2202をミッドバスに、
2231を二発ウーファーとして搭載している。
これにならえばD130をミッドバスとするのであれば、
ウーファーは18インチ(46cm)口径のモノを二発使うということになる。

もうひとつの案としては、より大口径のウーファーを使うこと。
例をあげればエレクトロボイスの30W(76cm)、ハートレイの224HS(60cm)だ。

どちらにしてもそうとうに大がかりなシステムになる。
規模のことはまったく考慮しないということであれば、どちらも案でもかまわない。
どちらも同程度になるからだ。

ならば上の帯域を受け持つユニットがすべてJBLだから、
JBLの18インチ口径ウーファーのダブル使用に心情的に傾く。

JBLの過去のラインナップをふくめて該当するウーファーとなると、K151、2240H、2245Hがある。
2245Hは4345に採用されたウーファー、K151は楽器用ウーファーである。
K151のダブルとなると、「コンポーネントステレオの世界 ’78」での井上先生の組合せを思い出す。

そこでの井上先生の組合せはK151をダブルで使い、2440にラジアルホーン2355の組合せ、
トゥイーターは2402の複数使用という、驚くほどのシステムだった。
キズだらけの大型のエンクロージュアにおさめられたK151が15インチくらいに見えていた。

こういうウーファーを最低域にもってくるのも面白いのだけれども、
私の志向する音からはかなりはずれてしまう。
となるとウーファーは2245Hか2240Hということになるのだろうか。

Date: 1月 17th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その4)

ミッドバスとミッドハイが決ることで、
自然とミッドバスとウーファーのクロスオーバー、ミッドハイとトゥイーターのクロスオーバー周波数が決る。

80Hz、630Hz、5kHzとなる。
JBLの4343クロスオーバー周波数は300Hz、1.25kHz、9.5kHz、
4350では250Hz、1.1kHz、9kHzであり、
瀬川先生のフルレンジからスタートする4ウェイ・システムもJBLの4ウェイとほぼ同じである。

D130をミッドバスとする4ウェイ・システムは、クロスオーバーの設定はかなり違うものになり、
ミッドバス・ミッドハイの受持帯域が約6オクターヴ、
JBLのミッドバス・ミッドハイは約5オクターヴであり、
D130ミッドバイのほうは2オクターヴほど下に移行する。

ミッドバスとミッドハイは決っている。
トゥイーターをどうするのか。
JBLの4343、4350では2405が使われている。
このトゥイーターは5kHzから使うには、ちょっとしんどい。
となると075ということになるのか。

では何をもってくるのか。

いま私のところにあるHarknessには175DLHがついている。
これでいいのではないか、と思っている。
これならば5kHzからでも問題なく鳴らせる。
もちろん最高域の再生となると2405には及ばない、075にも及ばない。

けれどD130をミッドバスにもってくるという発想からして、
現代的なワイドレンジを求めているのは違っているのだから、175DLHがもっともふさわしいように思える。

しかもこれら三つのユニットはすでに揃っている。
問題はウーファーをどうするかだ。

Date: 1月 13th, 2015
Cate: 4343, JBL

40年目の4343(その1)

JBLの4343は1976年秋に登場した。
来年(2016年)は、40年目である。

1976年中に4343を手にした人はそう多くはないだろうが、
円高ドル安のおかげで4343は価格は下っていった。
それに反比例するように、ステレオサウンド誌上に4343は毎号のように登場し、
特集記事も組まれていった。
ペアで百万円をこえるスピーカーシステムとしては、驚異的な本数が売れていった。

いまも4343を鳴らしている、持っている人はいる。
新品で購入した人ならば、長い人で40年、短い人でも30年以上経っている。
しかもウーファーの2231A(2231H)とミッドバスの2121(2121H)のエッジはウレタンだから、
エッジの補修は誰もがやられている。

それ以外にもリペアは必要となる。
ネットワークの部品も交換されていると思うし、スピーカー端子もバネがダメになることがある。
アルニコマグネットは衝撃に弱いため、減磁している可能性もある。

どんなに大切に使って(鳴らして)いても、リペアをせずにすむわけではない。

これから先もリペアしていくのか、それとも……。

リペア(repair)は、修理する、修繕する、回復する、取り戻す、といった意味をもつ動詞。
リペアと同じように使われる言葉にレストア(restore)がある。
元の状態に戻す、という意味の動詞である。
このふたつと同じように”re”がつく言葉に、リバース(rebirth)、リボーン(reborn)がある。
名詞と形容詞だ。

Date: 1月 12th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その3)

JBLのコンプレッションドライバー2441は、日本の折り紙からヒントを得た新型のエッジの採用で、
ダイアフラムだけの違いにもかかわらず、2440よりも高域特性は格段に向上している。

2440(375)はエッジの共振を利用していたため、10kHz以上の再生は無理だったが、
2441(376)ではカタログスペックでも18kHzまでとなっている。
周波数特性のグラフを比較してみても、2440との差は歴然である。

ならば5kHzといわず、10kHz、さらにもっと上の周波数まで2441+2397に受け持たせることもできる。
けれど2445J+2397の指向特性のグラフでは、10kHz、15kHzでの特性は八つ手状になっているのが確認できる。

ときどきJBLが4350、4341で4ウェイにしたのは、最大音圧を高めるためだと勘違いの発言をしている人がいる。
確かに帯域分割の数を増やせば個々のユニットへの負担は軽減される。
けれどJBLが、スタジオモニターとして4ウェイを採用したのは指向特性の全体行きにおける均一化のためである。
これは4350の英文の資料を読まなくとも、スピーカーシステムの問題点を考えればわかることである。

指向特性の均一化ということでいえば2441+2397は10kHzまでは無理ということになる。
2445J+2397のグラフでは5kHZの特性も載っていた。こちらは良好である。

そうなると40万の法則、指向特性の均一化、630Hz近辺でのクロスオーバー、
これらにD130と2441+2397の組合せはぴったりと合致する。
しかもどちらも能率が高い。
80Hzから5kHzは2ウェイシステムとしても、ナローレンジということになる。

だがこれ以上強力なミッドバスとミッドハイの組合せは他にない、ともいえる。

Date: 1月 11th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その2)

私は瀬川先生の、フルレンジから始める4ウェイシステム・プランが気になっていた。
自分でやることはなかったけれど、スピーカーシステムについて考える時に、思い出す。

瀬川先生の4ウェイシステム・プランは、JBLの4350、4341が登場する前に発表されていた。
4350、4341のユニット構成、クロスオーバー周波数の設定など、共通するところがある。
そのせいもあって私にとっての4ウェイとは、まずこれらの4ウェイがベースとなっている。

もちろん4ウェイといっても考え方はメーカーによって違うところもあり、
ユニット構成、クロスオーバー周波数の設定からも、それはある程度読みとれる。

4ウェイをどう捉え考えるのか。
2ウェイの最低域と最高域をのばすために、トゥイーターとウーファーを加えて4ウェイとする。
こういう考え方もある。

この場合、忘れてはならないのは40万の法則である。
つまり40万の法則に沿う2ウェイをベースとしてスタートしたい。
となると、この2ウェイのクロスオーバー周波数は40万の平方根である632.45Hz近辺にしたい。
下限と上限の周波数を掛け合せた値が40万となるようにする。

具体的に80Hzから5kHzの2ウェイシステムで、クロスオーバー周波数は630Hz〜650Hzあたりである。
そして指向特性が、この帯域において均一であること。
この条件に、D130と2441+2397がぴったりくる。

2397のカタログには推奨クロスオーバー周波数は800Hzとなっているが、
家庭での使用音圧であれば500Hzのクロスオーバーでも問題のないことは、
ステレオサウンドのバックナンバーでも実験されているし、問題なく鳴らせる。

Date: 1月 11th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その1)

1997年にでたステレオサウンド別冊「いまだからフルレンジ1939-1997」。
この本で井上先生はJBLのE130を、
マルチウェイシステムのミッドバス帯域(100〜500Hz近辺)用として使うのにも最適だ、と書かれている。

15インチ口径のミッドバス。
組み合わせるウーファーをどうするのか。
E130をミッドバスと書かれているということは、4ウェイ前提だったのであろう。
とするとミッドハイはJBLの2インチ・スロートのコンプレッションドライバーをもってきて、
JBLのトゥイーター2405、もしくは他社製のスーパートゥイーターということになる。

そうとうに大がかりなシステムになる。
だから「いまだからフルレンジ1939-1997」を読んでも、
E130ミッドバスのシステムについて゛あれこれ考えることはしなかった。

けれどいまはちょっと違ってきている。
JBLのD130がある。

D130をソロで鳴らしていると、この類稀なユニットの良さは、たしかにッドバス帯域にある。
フルレンジとして鳴らすのも楽しい。
LE175DLHとの2ウェイもいい。
私は試していないが、075との2ウェイもいい、と思う。

けれどいまは2441と2397の組合せもある。
この組合せの存在が、井上先生のE130ミッドバスの4ウェイシステムを思い出させる。