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Date: 2月 21st, 2015
Cate: 4343, JBL

40年目の4343(その3)

「名作4343を現代に甦らせる」の連載が始まった時、
すこしは期待していた。同時にどうなるのか心配な面も感じていた。
回が進むごとに、ほんとうにこの連載をこのまま続けていくのか、と思うようになっていた。

「名作4343を現代に甦らせる」について、ここで詳細に語りたいわけではない。
「名作4343を現代に甦らせる」が掲載された号をひっぱり出してくれば、
書こうと思えば、どれだけでも書いていける。
そのくらい、「名作4343を現代に甦らせる」にはあれこれいいたいことがある。

だが書くのはひとつだけにしておく。
この記事を読んで感じたのは、
「名作4343を現代に甦らせる」の筆者の佐伯多門氏は、
JBLの4343というスピーカーシステムを理解していなかった人だということ。
理解していなくとも、「名作4343を現代に甦らせる」の連載を続けるのであれば、理解しようとするべきである。
だが理解しようとされなかった。

少なくとも記事を読んで、そう感じられた。
だが佐伯多門氏だけではない。
ステレオサウンドの編集者も4343というスピーカーシステムを誰ひとりとして理解していなかった、といえる。
4343に憧れていた人は、もう編集部にはいなかったのかもしれない。
そうであっても、理解しようとするべきであった。
それがまったくといっていいほど感じられなかった。

新製品の紹介記事や徹底解剖とうたった記事をつくる以上に、
この手の記事では、対象となるオーディオ機器への理解がより深く求められる。
にも関わらず……、である。
そのことにがっかりした。

そして連載の最後、無惨に変り果てた、もう4343とは呼べなくなってしまったスピーカーを試聴した人、
この人こそ、オーディオ評論家を名乗っているのだから、
もっともオーディオへの理解が深い人であるべきだし、
読者、さらには編集者にとっても、理解することにおいて手本となるべき人なのに、
まったくそうではなかったことに腹が立った。

Date: 2月 20th, 2015
Cate: 4343, JBL

40年目の4343(その2)

10年くらい前のステレオサウンドで「名作4343を現代に甦らせる」というタイトルの連載があった。

私が4343というスピーカーの存在を知ったころ、日本ではテクニクスのリニアフェイズ、
それからKEFのModel 105、キャバスのブリガンタンなどが登場していた。
これらのスピーカーシステムは、スピーカーユニットを階段状に配置して、
マルチウェイにおけるそれぞれのユニットのボイスコイル位置を合わせる、というものだった。
実際にはネットワークを含めてのリニアフェイズなのだが。

これらのスピーカーメーカーがカタログ、広告で謳っていることからすれば、
4343の四つのユニットのボイスコイルの位置はバラバラということになる。

これを合わせるにはどうしたらいいのか。
そんなことをしょっちゅう考えていた。

ボイスコイルの位置がいちばん奥まったところにあるのは、
ミッドハイである。ホーン型だから、ホーンの長さの分だけコーン型ユニットよりも奥に位置する。
つまりこのミッドハイのボイスコイルの位置に、ミッドバス、ウーファーのボイスコイルの位置を下げる。
そのためにはどうしたらいいのか。

このころのソニーのスピーカーにSS-G7があった。
このスピーカーのスコーカーとトゥイーターはドーム型で、
ボイスコイル位置が奥にあるのはコーン型のウーファーだから、
SS-G7ではウーファーをすこし前に張り出させることで位置合せを行っている。

ならば4343では逆のことをやればいい。
ウーファーを引っ込めて、ミッドバスはコーンの頂角の違いからもう少し引っ込める。
こんなことをするとウーファーとミッドバスにはフロントショートホーンをつけることになる。

こんなスケッチを当時よく描いていた。
でもフロントショートホーンをつけると、4343はもう4343ではなくなる。
どんなに頭をひねってみても、4343というかっこいいスピーカーは消失してしまう。

それを記事としてやってしまったのが、「名作4343を現代に甦らせる」だった。
唖然とした。

Date: 2月 19th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その9)

このテーマで書いていると、あれこれ思い出したり想像したりしている。
上杉先生のステレオサウンド 38号でのシステムのこともそうだし、
こんなことも想像している。

岩崎先生と井上先生が対談形式で、D130の組合せをそれぞれつくるとしたら、
どんな記事になるだろうか、である。

井上先生はD130は、マルチウェイシステムのミッドバス帯域(100〜500Hz近辺)用として使うのにも最適だ、
と書かれているから、ここでのテーマ通りの組合せをつくられると仮定する。

岩崎先生はどうだろうか。
平面バッフルに取り付けられる気がする。
予算やスペースの制約がなければ、1m×1m程度の大きさではなく、
2m×2mの平面バッフルにD130をつけ鳴らされるのではないだろうか。

井上先生はマルチウェイで、岩崎先生はフルレンジとしてD130の組合せをつくられる。
そんなことを想像している。

井上先生はウーファーにはどのユニットを使われるのか、
エンクロージュアはどうされるのか、上の帯域はどうされるのか。
アンプはマルチアンプなのか。

岩崎先生は、そのへんどうされるのか。
100dBをこえる能率をもつD130だが、パワーアンプは大出力のモノにされるような気もする。
それこそステレオサウンド別冊HIGH-TECHNIC SERIES 4でのD130の試聴の際に、
音量をあげていったらコーヒーカップのスプーンがカチャカチャ音を立て始め、
それでも音量をあげていったら……、という瀬川先生の発言を思い出す。

瀬川先生はここで怖くなり音慮を下げられている。
岩崎先生ならば──、
その結果どういう記事ができあがるのか。
そんなことを想像するのは楽しい。

Date: 1月 20th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その8)

「なんでこんな馬鹿げたことをしたんですか」には、
これを口にする人によって、違う意味をもつことになる。

黒田先生はステレオサウンド 38号の特集で八人のオーディオ評論家のリスニングルームを訪問され、
八人のオーディオ評論家それぞれに手紙を書かれている。
上杉先生への手紙は「今日は、まことに、痛快でした。」で始まっている。

黒田先生が感じた痛快さは、馬鹿げたことをする真剣さ、一途さゆえのものと書かれている。
自分にはできないことをさらりとやってくれる人に感じる痛快さがあり、
その痛快さを表現することばとして「なんでこんな馬鹿げたことをしたんですか」がある。

その一方で、部屋の大きさに見合ったサイズのスピーカーシステムこそが理に適ったことであり、
しかも大口径の振動板に対してのアレルギーをもつ人は、
おそらく軽蔑をこめて「なんでこんな馬鹿げたことをしたんですか」と口走る。

「なんでこんな馬鹿げたことをしたんですか」と思わず口走るのであれば、
痛快さをそこに感じてでありたい。

黒田先生の上杉先生への手紙には、こんなことを書いてある。
     *
 神戸っ子は、相手をせいいっぱいもてなす、つまりサーヴィス精神にとんでいると、よくいわれます。いかにも神戸っ子らしく、上杉さんは、あなたがたがせっかく東京からくるというもので、それに間にあわせようと思って、これをつくったんだと、巨大な、まさに巨大なスピーカーシステムを指さされておっしゃいました。当然、うかがった人間としても、その上杉さんの気持がわからぬではなく、食いしん坊が皿に山もりにつまれた饅頭を出されたようなもので、たらふくごちそうになりました。
     *
ステレオサウンドの取材班が東京から神戸に来るから、ということで、
これだけの規模のスピーカーを間に合わせた、とある。
もともと計画されていたことだったのだろうが、それでもすごい、と思う。

ちなみにこのスピーカーシステムの重量は、両チャンネルあわせて約780kg。

Date: 1月 19th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その7)

上杉先生の自作スピーカーの概要はこうだ。
シーメンスのオイロダインを中心として、トゥイーターとウーファーを追加されている。

オイロダインはシアター用スピーカーで、
38cm口径のウーファーと大型ホーンを鉄製のバッフルに取り付け、エンクロージュアはもたない。
ネットワークは内蔵しているので、これを平面バッフルにとりつけるよう指定されている。
スピーカーシステムとは呼びにくいモノである。

同じコンセプトのモノはダイヤトーンにもあった。
2U208という製品で、
20cmコーン型ウーファー(PW201)と5cmコーン型トゥイーター(TW501)をバッフルに装着したモノ。
ウーファーとトゥイーターの型番が気づかれる人もいるだろう、
ダイヤトーンのスピーカーシステム2S208からエンクロージュアを取り去ったモノである。

KEFにもあった。KK3という型番で、Concertoのエンクロージュアを取り去ったモノである。

シーメンスのオイロダインも同じカテゴリーのスピーカーユニットといえよう。
このオイロダインのクロスオーバー周波数は500Hz、
これに上杉先生は8kHz以上をテクニクスのホーン型トゥイーターEAS25HH22NAに受け持たせ、
150Hz以下はエレクトロボイスの30Wで受け持たせられている。

30インチ(76cm)口径の30Wを、上杉先生は片チャンネルあたり二本、つまり両チャンネルで四本使われている。
30Wが二発横に並んでいる上にオイロダインのウーファーがあるわけだが、
38cm口径が20cm口径ぐらいに感じられる。

このシステムを目の当りにされて、
黒田先生は「なんでこんな馬鹿げたことをしたんですか」と口走られている。
     *
 三十インチ・ウーファーが横に四本並んだところは、壮観でした。それを目のあたりにしてびっくりしたはずみに、ぼくは思わず、口ばしってしまいました、なんでこんな馬鹿げたことをしたんですか。そのぼくの失礼な質問に対しての上杉さんのこたえがまた、なかなか痛快で、ぼくをひどくよろこばせました。上杉さんは、こうおっしゃいましたね──オーディオというのは趣味のものだから、こういう馬鹿げたことをする人間がひとりぐらいいてもいいと思ったんだ。
 おっしゃることに、ぼくも、まったく同感で、わが意をえたりと思ったりしました。オーディオについて、とってつけたようにもっともらしく、ことさらしかつめらしく、そして妙に精神主義的に考えることに、ぼくは,反撥を感じる方ですから、上杉さんが敢て「馬鹿げたこと」とおっしゃったことが、よくわかりました。そう敢ておっしゃりながら、しかし上杉さんが、いい音、つまり上杉さんの求める音を出すことに、大変に真剣であり、誰にもまけないぐらい真面目だということが、あきらかでした。いわずもがなのことをいうことになるかもしれませんが、上杉さんは、そういう「馬鹿げたこと」をするほど真剣だということになるでしょう。
     *
私も「なんでこんな馬鹿げたことをしたんですか」と口走ると思う。
多くの人が目の当りにすれば、同様のことを口にされるだろう。

Date: 1月 19th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その6)

ミッドバスに15インチ口径のフルレンジをもってくることはバカげていることと思う人もいるだろう。
そんなことをすればシステムが非常に大がかりになる。

いつのころからか、スピーカーシステムの大きさは部屋の大きさに見合ったほうがいい、と考える人、
主張する人が多くなってきた。

でも小さな部屋で、そのエアーボリュウムに見合う小さなスピーカーシステム。
1970年代ごろの、そういった小型スピーカーシステムと違い、
現在の小型スピーカーシステムはパワーもはいるし、音圧もとれる。
だから同列に考えることには多少の無理があるのはわかっているけれど、
小型スピーカーはエアーボリュウムがあり響きの豊かな部屋の方がうまく鳴ってくれることがある。

小さな部屋こそ、私はできるかぎり大きなスピーカーシステムを置きたい、と考える。
そんなのは古すぎる考え方だといわれようが、音量を絞っても音の豊かさを失わないのは、
やはり大型スピーカーシステムであることが多い。

だから私はD130をミッドバスという、バカげたことを真剣に考える。
でも、これは本当にバカげたことなのだろうか、と思う。

たとえばBBCモニターのLS5/1は、
中域の特性を重視して、12インチ口径ではなく15インチ口径を選択している。
低域の特性の間違いではない。

それから……、と書き始めて思い出したのが、ステレオサウンド 38号である。
「オーディオ評論家 そのサウンドとサウンドロジィ」が特集の号だった。
そこに上杉先生のリスニングルームの訪問記がある。

1976年、上杉先生が鳴らされていたスピーカーシステムはタンノイのオートグラフ、
それに自作のモノだった。

Date: 1月 18th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その5)

JBLの4350のミッドバスは2202である。
コーン型の30cm口径ウーファーである。

このユニットは2220の30cm版といえるし、
2220は130Aのプロ用版であり、130AはD130のウーファー版といえる。

4350では2202をミッドバスに、
2231を二発ウーファーとして搭載している。
これにならえばD130をミッドバスとするのであれば、
ウーファーは18インチ(46cm)口径のモノを二発使うということになる。

もうひとつの案としては、より大口径のウーファーを使うこと。
例をあげればエレクトロボイスの30W(76cm)、ハートレイの224HS(60cm)だ。

どちらにしてもそうとうに大がかりなシステムになる。
規模のことはまったく考慮しないということであれば、どちらも案でもかまわない。
どちらも同程度になるからだ。

ならば上の帯域を受け持つユニットがすべてJBLだから、
JBLの18インチ口径ウーファーのダブル使用に心情的に傾く。

JBLの過去のラインナップをふくめて該当するウーファーとなると、K151、2240H、2245Hがある。
2245Hは4345に採用されたウーファー、K151は楽器用ウーファーである。
K151のダブルとなると、「コンポーネントステレオの世界 ’78」での井上先生の組合せを思い出す。

そこでの井上先生の組合せはK151をダブルで使い、2440にラジアルホーン2355の組合せ、
トゥイーターは2402の複数使用という、驚くほどのシステムだった。
キズだらけの大型のエンクロージュアにおさめられたK151が15インチくらいに見えていた。

こういうウーファーを最低域にもってくるのも面白いのだけれども、
私の志向する音からはかなりはずれてしまう。
となるとウーファーは2245Hか2240Hということになるのだろうか。

Date: 1月 17th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その4)

ミッドバスとミッドハイが決ることで、
自然とミッドバスとウーファーのクロスオーバー、ミッドハイとトゥイーターのクロスオーバー周波数が決る。

80Hz、630Hz、5kHzとなる。
JBLの4343クロスオーバー周波数は300Hz、1.25kHz、9.5kHz、
4350では250Hz、1.1kHz、9kHzであり、
瀬川先生のフルレンジからスタートする4ウェイ・システムもJBLの4ウェイとほぼ同じである。

D130をミッドバスとする4ウェイ・システムは、クロスオーバーの設定はかなり違うものになり、
ミッドバス・ミッドハイの受持帯域が約6オクターヴ、
JBLのミッドバス・ミッドハイは約5オクターヴであり、
D130ミッドバイのほうは2オクターヴほど下に移行する。

ミッドバスとミッドハイは決っている。
トゥイーターをどうするのか。
JBLの4343、4350では2405が使われている。
このトゥイーターは5kHzから使うには、ちょっとしんどい。
となると075ということになるのか。

では何をもってくるのか。

いま私のところにあるHarknessには175DLHがついている。
これでいいのではないか、と思っている。
これならば5kHzからでも問題なく鳴らせる。
もちろん最高域の再生となると2405には及ばない、075にも及ばない。

けれどD130をミッドバスにもってくるという発想からして、
現代的なワイドレンジを求めているのは違っているのだから、175DLHがもっともふさわしいように思える。

しかもこれら三つのユニットはすでに揃っている。
問題はウーファーをどうするかだ。

Date: 1月 13th, 2015
Cate: 4343, JBL

40年目の4343(その1)

JBLの4343は1976年秋に登場した。
来年(2016年)は、40年目である。

1976年中に4343を手にした人はそう多くはないだろうが、
円高ドル安のおかげで4343は価格は下っていった。
それに反比例するように、ステレオサウンド誌上に4343は毎号のように登場し、
特集記事も組まれていった。
ペアで百万円をこえるスピーカーシステムとしては、驚異的な本数が売れていった。

いまも4343を鳴らしている、持っている人はいる。
新品で購入した人ならば、長い人で40年、短い人でも30年以上経っている。
しかもウーファーの2231A(2231H)とミッドバスの2121(2121H)のエッジはウレタンだから、
エッジの補修は誰もがやられている。

それ以外にもリペアは必要となる。
ネットワークの部品も交換されていると思うし、スピーカー端子もバネがダメになることがある。
アルニコマグネットは衝撃に弱いため、減磁している可能性もある。

どんなに大切に使って(鳴らして)いても、リペアをせずにすむわけではない。

これから先もリペアしていくのか、それとも……。

リペア(repair)は、修理する、修繕する、回復する、取り戻す、といった意味をもつ動詞。
リペアと同じように使われる言葉にレストア(restore)がある。
元の状態に戻す、という意味の動詞である。
このふたつと同じように”re”がつく言葉に、リバース(rebirth)、リボーン(reborn)がある。
名詞と形容詞だ。

Date: 1月 12th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その3)

JBLのコンプレッションドライバー2441は、日本の折り紙からヒントを得た新型のエッジの採用で、
ダイアフラムだけの違いにもかかわらず、2440よりも高域特性は格段に向上している。

2440(375)はエッジの共振を利用していたため、10kHz以上の再生は無理だったが、
2441(376)ではカタログスペックでも18kHzまでとなっている。
周波数特性のグラフを比較してみても、2440との差は歴然である。

ならば5kHzといわず、10kHz、さらにもっと上の周波数まで2441+2397に受け持たせることもできる。
けれど2445J+2397の指向特性のグラフでは、10kHz、15kHzでの特性は八つ手状になっているのが確認できる。

ときどきJBLが4350、4341で4ウェイにしたのは、最大音圧を高めるためだと勘違いの発言をしている人がいる。
確かに帯域分割の数を増やせば個々のユニットへの負担は軽減される。
けれどJBLが、スタジオモニターとして4ウェイを採用したのは指向特性の全体行きにおける均一化のためである。
これは4350の英文の資料を読まなくとも、スピーカーシステムの問題点を考えればわかることである。

指向特性の均一化ということでいえば2441+2397は10kHzまでは無理ということになる。
2445J+2397のグラフでは5kHZの特性も載っていた。こちらは良好である。

そうなると40万の法則、指向特性の均一化、630Hz近辺でのクロスオーバー、
これらにD130と2441+2397の組合せはぴったりと合致する。
しかもどちらも能率が高い。
80Hzから5kHzは2ウェイシステムとしても、ナローレンジということになる。

だがこれ以上強力なミッドバスとミッドハイの組合せは他にない、ともいえる。

Date: 1月 11th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その2)

私は瀬川先生の、フルレンジから始める4ウェイシステム・プランが気になっていた。
自分でやることはなかったけれど、スピーカーシステムについて考える時に、思い出す。

瀬川先生の4ウェイシステム・プランは、JBLの4350、4341が登場する前に発表されていた。
4350、4341のユニット構成、クロスオーバー周波数の設定など、共通するところがある。
そのせいもあって私にとっての4ウェイとは、まずこれらの4ウェイがベースとなっている。

もちろん4ウェイといっても考え方はメーカーによって違うところもあり、
ユニット構成、クロスオーバー周波数の設定からも、それはある程度読みとれる。

4ウェイをどう捉え考えるのか。
2ウェイの最低域と最高域をのばすために、トゥイーターとウーファーを加えて4ウェイとする。
こういう考え方もある。

この場合、忘れてはならないのは40万の法則である。
つまり40万の法則に沿う2ウェイをベースとしてスタートしたい。
となると、この2ウェイのクロスオーバー周波数は40万の平方根である632.45Hz近辺にしたい。
下限と上限の周波数を掛け合せた値が40万となるようにする。

具体的に80Hzから5kHzの2ウェイシステムで、クロスオーバー周波数は630Hz〜650Hzあたりである。
そして指向特性が、この帯域において均一であること。
この条件に、D130と2441+2397がぴったりくる。

2397のカタログには推奨クロスオーバー周波数は800Hzとなっているが、
家庭での使用音圧であれば500Hzのクロスオーバーでも問題のないことは、
ステレオサウンドのバックナンバーでも実験されているし、問題なく鳴らせる。

Date: 1月 11th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その1)

1997年にでたステレオサウンド別冊「いまだからフルレンジ1939-1997」。
この本で井上先生はJBLのE130を、
マルチウェイシステムのミッドバス帯域(100〜500Hz近辺)用として使うのにも最適だ、と書かれている。

15インチ口径のミッドバス。
組み合わせるウーファーをどうするのか。
E130をミッドバスと書かれているということは、4ウェイ前提だったのであろう。
とするとミッドハイはJBLの2インチ・スロートのコンプレッションドライバーをもってきて、
JBLのトゥイーター2405、もしくは他社製のスーパートゥイーターということになる。

そうとうに大がかりなシステムになる。
だから「いまだからフルレンジ1939-1997」を読んでも、
E130ミッドバスのシステムについて゛あれこれ考えることはしなかった。

けれどいまはちょっと違ってきている。
JBLのD130がある。

D130をソロで鳴らしていると、この類稀なユニットの良さは、たしかにッドバス帯域にある。
フルレンジとして鳴らすのも楽しい。
LE175DLHとの2ウェイもいい。
私は試していないが、075との2ウェイもいい、と思う。

けれどいまは2441と2397の組合せもある。
この組合せの存在が、井上先生のE130ミッドバスの4ウェイシステムを思い出させる。

Date: 12月 2nd, 2014
Cate: JBL, 型番

JBLの型番

JBLのプロフェッショナル用スピーカーユニットの型番は四桁の数字。
2100シリーズがフルレンジユニット、2200シリーズがウーファー、
2300シリーズがホーン、2400シリーズがコンプレッションドライバーが基本となっている。

ミッドバス用のコーン型ユニットは2121、2122という型番だから、
ウーファーのようでもあるが、型番からはフルレンジということになる。
実際はウーファーに分類されるけれど。

数字の順序からすればフルレンジ、ウーファー、ホーン、コンプレッションドライバーとなっている。
ということはJBLの考え方としては、ホーンとコンプレッションドライバーの組合せにおいては、
まずホーンを選べ、ということなのではないか、と型番をみていると思えてくる。

フルレンジもウーファーもスピーカーユニットであり、音を発する。
コンプレッションドライバーもそうだ。
ホーンは違う。
なのに型番的にはウーファーとコンプレッションドライバーのあいだにいる。

ホーンとコンプレッションドライバーの組合せでコンプレッションドライバーを中心に考えるのであれば、
型番のつけ方としては2300シリーズがコンプレッションドライバーのほうがすっきりする。
けれど実際は2300シリーズはホーンの型番である。

誰がどういう意図で型番をつけていたのかはわからない。
けれど2300シリーズをホーンとしたのは、なんらかの意図があったのではないだろうか。

どの程度の空間にどういう指向特性で音を放射するのか。
まずこのことを決めた上でホーンを選び、次にコンプレッションドライバーを選べ、ということではないのか。

Date: 11月 9th, 2014
Cate: JBL

JBLのユニットのこと(ウーファーについて・その4)

2231Aで採用されたアルミ製のリングを、
マスコントロールリング(Mass Control Ring)を呼ぶのは実に的確といえる。

仮に2230と2231AのMmsがほとんど同じだとしよう。
LE14AのMmsと口径の違いからすると、150gぐらいなのではないだろうか。

LE15A、そのプロ版にあたる2215のMmsはともに97g。
コーン紙そのものはほとんど同じものだとすれば、
2230におけるアクアプラスによる質量増加は約50gで、この50g分がコーン紙全面ほぼ均一に分布している。
2231Aではマスコントロールリングが50g分になり、
こちらはコーン紙とボイスコイルボビンとの接着面のところにある。

2230と2231Aでは質量の分布の仕方が大きく異る。分散と集中である。
このことは仮にMmsが同じだとしても実際の動作では大きく違ってきても不思議ではない。

”JBL 60th Anniversary”には、マスコントロールリングにより、
低域の下限周波数の拡張だけでなく、堅くて軽いコーン紙を使うことで中低域のレスポンスも向上する、とある。

そうだと考えられる。
それにコーン紙とボイスコイルボビンとの接着面にマスコントロールリングがあることで、
この部分の強度はなしにくらべて増しているはず。
とすればボイスコイル(およびボビン)のピストニックモーションがより精確に振動板に伝わる、ともいえる。

Mmsが150gというのは確かに重いと受けとめがちな値だが、
どこに重いと感じさせる部分があるのか(分散か集中か)によって、
重たい振動板イコール中域までレスポンスが伸びない、とは一概にはいえない。

ただマスコントロールリングはアルミ製であるため導電性がある。
このため実際の動作では電磁制動がこの部分で発生する。

もしJBLがマスコントロールリングを他の素材(導電性のないもの)にしていたら、
とどうしても考えてしまう。

Date: 11月 8th, 2014
Cate: JBL

JBLのユニットのこと(ウーファーについて・その2)

2230はコーン紙の色からわかるようにアクアプラスが塗布されている。
アクアプラスは石灰を主成分としているときいたことがある。
はっきりとしたことはわからない。
しかも塗り方にノウハウがずいぶんあるようで、JBLのコーン紙の製造が日本でなされていたときも、
アクアプラスの塗布はアメリカで行っていた。

私は2230を搭載した4350は聴いたことはあるけれど、いい音で鳴っていたわけではなかった。
だからなんともいえないのだが、4350がいい音で鳴っているのを聴いたことのある知人によれば、
4350A(2231A搭載)よりも4350の方が、低音の質感は良かった、らしい。

そうかもしれない。
4310、4311も白いコーン紙のウーファーだし、
4345も表からみれば黒いコーン紙だが、
18インチ・ウーファーの2245Hはコーン紙の裏側にアクアプラスが塗布されている。

にも関わらず2230から2231Aになっていったのか。
ステレオサウンド別冊”JBL 60th Anniversary”によれば、
250Hzという低めのクロスオーバー周波数は効果的であるアクアプラスも、
4331、4333のようにミッドバスを持たないシステムの場合、クロスオーバー周波数は高くなる。
4331、4333は800Hzとなっている。

そうなるとアクアプラス塗布のウーファーは振動板が重くなりすぎて、
さらにアクアプラスは一種のダンプ剤でもあるため、中低域より上の帯域でレスポンスが波打つ、
感度の低下が明らかになるから、とある。

2230のmmsがどのくらいなのかはわからない。
ただアクアプラス塗布の14インチ・ウーファーのLE14Aは140gであるから、
2230は140gよりも重たいことだけははっきりしている。