Archive for category ケーブル

Date: 10月 11th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その11)

マークレビンソンML6のように内部配線をすべて銀線にしたところで、
アンプを構成する部品全体からすれば、それは一部にすぎない。

それでも銀線の音は、アンプの音として反映されるとはいえ、
Silver Signature 25ほどの徹底した銀使用とはいえない。

アンプも抵抗、コンデンサー、トランジスターを銀リードにしたものを部品メーカーに発注する、
電源トランスの巻線を銀線にする、
どれだけのお金がかかるかは検討がつかないが、
ここまでは可能だとしても、プリント基板のパターンを銀にするとなると、
さらに大変なことになろう。

部品点数の極端に少ないアンプ、
具体例としてはFirst WattのSIT1、SIT2ならば、
信号経路を徹底して銀線化していくことはできなくもないだろうが、
一般的な部品点数のアンプでは、まず無理といってもいい。

だから考えるのは、パワーアンプを真空管式として、
出力トランスの二次側コイルを銀線にする、ということだ。

両端に銀によるコイルを持つ閉じた回路(ループ)内は、
スピーカーがSilver Signature 25ならば、ほぼ銀線といえる。

同様にアナログプレーヤーならば、昇圧トランスの一次側巻線を銀線にする。
そうすれば、こちらも両端に銀によるコイルをもつ閉じた回路ができる。

つまり音の入口と出口に、それぞれ閉じた回路をもつシステム、
それもどちらの閉じた回路も銀線によって構成されている。

システムの銀線化は、このあたりが現実的といえる。

Date: 10月 11th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その10)

瀬川先生がステレオサウンド 52号に書かれたマークレビンソンのML6の音のこと。
     *
 ともかくML6の音は、いままで聴きえたどのプリアンプよりも自然な感じで、それだけに一聴したときの第一印象は、プログラムソースによってはどこか頼りないほど柔らかく聴こえることさえある。ML6からLNPに戻すと、LNPの音にはけっこう硬さのあったことがわかる。よく言えば輪郭鮮明。しかしそれだけに音の中味よりも輪郭のほうが目立ってしまうような傾向もいくらか持っている。
     *
《どこか頼りないほど柔らかく》、
当時の私にとって、この音の表現が、銀線のイメージとすぐさま結びついてしまった。
なにかの広告で読んだのだと記憶しているが、
銀線の音のイメージとして、ML6の《どこか頼りないほど柔らかく》というのが、
ほとんどそのままあったからだ。

当時、高校生だったし、銀線の音は聴いたこともなかった。
文字と銀という金属の色からのイメージだけで、なんとなく銀線の音を想像していた時期であった。

それはどこか女性的な音のイメージでもあった。
銀線の音のイメージがそうであったから、
銅線の音は対照的に、私のなかでは男性的な音のイメージを、なんとなく持っていた。

もちろん、銅線、銀線の音は、そう単純なものではないのだが、
それでもどこか銀には、優雅というイメージがついてくるし、
それだけでなくいぶし銀という音の表現からは、
決して前へ前へ、と出しゃばってこない音のイメージとも結びついていた。

Silver Signature 25は、どんな音なのだろうか。
Silver Signature 25も単体で音が鳴るわけではない。

アンプ、プレーヤーと組み合わせなければ音は鳴ってこない。
アナログプレーヤーならば、発電コイルが銀線のモノはあるし、
トーンアームのパイプ内配線も銀線のモノがあるだろうし、
銀線に交換することもできないわけではない。
出力ケーブルも銀線で揃えられる。

音の入口と出口は、銀線で固められる。
けれどアンプとなると、そう簡単にはいかない。

Date: 10月 11th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その9)

Silver Signature 25は2ウェイのスピーカーシステムで、
砲弾型のトゥイーターがエンクロージュアの上に乗っかるスタイルだ。

このスタイルのB&Wのスピーカーシステムは、
ユニットはインライン配置になっているが、Silver Signature 25はトゥイーターがオフセットしている。

このことはトゥイーターの逆相接続とも関係しているように思える。
銀リードのコンデンサーの容量が3.3μFだけということで、
ネットワークの設計にそうとうに苦労していることが、
トゥイーターのオフセットとも関係しているのではないだろうか。

他の値の容量の銀リードのコンデンサーが用意できていれば、
ネットワークの定数も違ってきたはずだし、
トゥイーターも正相接続で、インライン配置になっていたであろう。

そこまでして銀の使用に徹底的にこだわっているのがSilver Signature 25であり、
銀は導体抵抗の低い金属であるが、そのことだけが、
ここまで銀にこだわらせた理由ではないはずだ。

音的にあきらかなメリットを感じていたからこそ、の、
Silver Signature 25の誕生であったはずである。
(ハンダもやはり銀入りなのだろう)

銀銭の音については、メリットもデメリットもいわれてきている。
それが事実なのかどうかは、ケーブルの音は、それ単体で評できるわけでもなく、
はっきりとしたことは誰にもいえないのだが、
一部否定的な意見としては、本来あるべき音の力がわずかとはいえ損われる──、
そんなふうにいわれている。

もっともこのことさえも、
当時から、銀の純度があまり高くないからだ、という説もあったし、
銅があたりまえのシステムに銀をわずかに持ち込むからであって、
銀線化を徹底していけば、そういう面もなくなる──、
そんなこともいわれていた。

Date: 10月 10th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その8)

久しぶりに買っていた無線と実験の6月号に、
B&Wのスピーカーシステムの記事(柴崎功氏による連載)が載っていたことに気づいた。
Silver Signature 25のネットワークの回路図も載っていたはず、と、
ひっぱり出して開いてみると、載っていた。

ネットワークを構成する部品は、
コンデンサーが三個、コイルが二個、抵抗が一個である。
コンデンサーは三個とも3.3μFである。

これは銀線リードのポリプロピレンコンデンサーが高価なため、
3.3μF一種類しか確保できなかったため、と記事にはある。

そのためネットワークの設計には苦労があったようだ。

ウーファーは28mHのコイルが直列に入るだけの、スロープ特性6dBの構成、
ウーファーに対し、1Ωの抵抗と3.3μFのコンデンサーを直列にしたものが並列に接続されている。

記事には抵抗については触れられていないが、
抵抗は並列接続されていること、
ローパスフィルターを形成しているわけでなく、
ダンピング抵抗として作用することもあってだろう、
どうも銀線リードではないようにも受け取れる。

Silver Signature 25のカタログのスペック欄にも、純銀ワイヤー・インダクター、
純銀リードポリプロピレン・キャパシターとはあるが、
純銀リード・レジスターの記載はない。

トゥイーター用のハイパスフィルターは、
3.3μFのコンデンサーが二個直列に挿入されている。
ふたつのコンデンサーの中点に0.12mHのコイルが並列に接続されている。

トゥイーターは逆相接続となっている。

Date: 10月 9th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その7)

(その6)で書いているように、
オルトフォンのSPU-Gold、SMEの3012-R Proを組み合わせて、
出力ケーブルも3012-R Pro付属のモノを使えば、
カートリッジの発電コイルからトーンアーム内配線、出力ケーブルまで、
すべて銀線ということになる。

マークレビンソンのML6は、銀線使用ということでも話題になったが、
それはあくまでも内部配線材だけであって、プリント基板のパターンまで銀になっていたわけではない。

マークレビンソンのラインケーブルも銀線のモノもあった。
それらを使ったとしても銀以外の金属が存在しているし、
銀以外の金属の方が割合としても多い。

徹底的に銀を採用したオーディオ機器といえば、
B&Wの創立25周年記念モデルとして登場したSilver Signature 25がある。
(Silver Signature 25も、KEFのModel 107と同じで25周年モデルなのか、と思う)

スピーカーシステムで銀線使用と謳われていれば、
せいぜいが内部配線材が銀線になったくらいだと思いがちだ。
もう少し徹底した場合であれば、ボイスコイルも銀線にするかもしれない。

それ以上となると、かなり実現は困難といえよう。
スピーカーシステムを構成する部品で、信号が通過するところうすべて銀にするには、
接点を含めて、コンデンサーや抵抗のリード線までも銀線とする必要がある。
B&WはSilver Signature 25において、それを実現している(はずである)。

少し曖昧な書き方になったのは、
実物を見たことはあるけれど、その内部まで見たわけではないからだ。
それでも、これ以上、銀ということに徹底したオーディオ機器は、いまのところないはずだ。

Date: 9月 20th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(KEF 107の場合)

KEFのModel 107の取り扱い説明書とカタログも、手元にある。
どちらも英文である。

107の取り扱い説明書(INSTALLATION MANUAL)に、
SPEAKER CONNECTIONSという項目がある。

そこには、次のように書いてある。
     *
The choice of cable to use with Model 107 is less critical than with most other loudspeakers owing to the resistive nature of load it presents to the amplifier. The total resistance, however, should not 0.2 ohms.
     *
107は、他のスピーカーほどケーブルについてクリティカルではないが、
スピーカーケーブルの直流抵抗が0.2Ω以下であるように、と書いてある。

そして表があり、ケーブルの太さと、1m当りの直流抵抗、
それから0.2Ωとなる長さが記載されている。

この表によれば、AWG18の太さであれば、4.7mまで使える。
AWG8となると太くなる分、48.8mで0.2Ωとなる。

これを厳密に守らなければならないわけではないが、
こうやってひとつの指針を示しているのは、
KEFらしい、というか、レイモンド・クックらしい、というべきか、
それとイギリスのメーカーらしい、と感じる。

最近のKEFの取り扱い説明書は、どうなのだろうか。
こういう項目は、すでにないのか。
それともまだあるのか。
あるとすれば、どんなことが書かれているのか。

Date: 9月 9th, 2017
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その5)

今回試したアースの共通インピーダンスに着目した結線は、
実は昨秋、ラインケーブルで、その音を聴いてもらっている。

もっともどういう結線にしているのかはほとんど説明せずに、
ただ共通インピーダンスに着目して、という簡単な説明だけで、
マッキントッシュのMA2275のパワーアンプ部だけを使い、
ポテンショメーターでの音出しだった。

この時使ったポテンショメーターも、特に高価なものではない。
むしろ廉いモノだ。ケーブルも同じく1mあたり数百円クラスのモノである。

高価なパッシヴフェーダーが市場にはいくつかある。
高価なケーブルも、もっともっともある。
それらをあれこれ組み合わせる前に、着目してほしい点がある、ということだ。

このアースの共通インピーダンスに関しては、別に新しい問題ではない。
昔からいわれていたことでもある。

1980年代後半のラジオ技術で、富田嘉和氏が書かれていたことを読んでいる人ならば、
そして、富田氏がそれらの記事で推薦されたいた二冊の本、
「GROUNDING AND SHIELDING TECHNIQUES IN INSTRUMENTATION」と
「NOISE REDUCTION TECHNIQUES IN ELECTRONIC SYSTEMS」、
この二冊を読んでいる人ならば、思いつく結線方法である。

これらを読んでいなくとも、真空管アンプを自作したことのある人、
電源部のワイアリングにおいて、伊藤アンプの配線をじっくり見ている人ならば、
基本中の基本といえることである。

真空管アンプの電源部と違い、
ラインケーブルにおいてもスピーカーケーブルにおいても、
アースの共通インピーダンスのことを無視した結線でもハムが出るということはない。
だからなのか、つい見過されてしまう。

Date: 9月 8th, 2017
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その4)

高価になりつつあるケーブルの中には、
怪しげ、懐疑的にならざるをえないモノもある一方で、
ひじょうに興味深い構造のモノもあって、
アンプとケーブルを比較すると、
増幅よりも伝送のほうが難しいのかもしれないとおもうほど、
構成部品の少なさからは考えられないほど、音の違いが存在する。

もっともケーブルの違いにより、アンプの動作が影響を受けていることも無視できないのだが、
ケーブルによる音の違いという現象は、おもしろいと思う。

今回audio wednesdayでやったスピーカーケーブルの結線方法による音の変化は、
スピーカーケーブルをあれこれ変えることによる音の変化とは、ベクトルに違いがある。

どちらが優れているとかの問題ではなく、
現状のスピーカーケーブルの結線の仕方では、
解決できない(改善できない)領域がある、ということだ。

同じことはラインケーブルにいえ、
アースの共通インピーダンスの問題に目を向けると、
コネクターの見直しが必要となってくる。

今回、一度に結線方法をすべて変更しなかったのは、
段階ごとの音の変化を聴いてほしかったのが理由だ。

結線を変えるこちらとしては、一度にすべてやってしまったほうが楽である。

音がどのように変化したのかは、ここでは書かない。
ひとつだけ現象面だけ書いておくと、
通常の結線でも、MA7900のレベルは70%で聴いた。
三段階目の音も70%で聴いている。

ここで感じたのは、床を伝わってくる振動がはっきりと増えたことだ。
同じ70%の音量でも、通常の結線の音では、
さほど振動を意識することはなかった。

それが、振るえている、振るえている、と感じるほどになった。

Date: 9月 7th, 2017
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その3)

昨晩(9月6日)のaudio wednesdayでやったことは、
「サイズ考」で書いていたことを三段階にわけて鳴らした(聴いてもらった)。

通常の接続。
それからネットワークをアンプのすぐ側にもってきての一段階。
ここで喫茶茶会記で使っているスピーカーケーブル、
カナレのスターカッド構造のおかげで、もう一本スピーカーケーブルを用意せずとも試せる。

この段階でやったことは、一種のバイワイアリングである。
バイワイアリングをやるとやらないとでは、音は大きく違う。
理由はいくつかいわれている。

どれがほんとうなのか、どれがもっとも大きな効果となっているのかは、
はっきりとはわからないが、
私は共通インピーダンスの排除(短縮化)が効いているように感じている。

二段階目では、ウーファーの共通インピーダンスをさらになくすために、
アンプの出力端子とネットワークの入力端子間の共通インピーダンスを排除。

三段階目で、同じことをトゥイーターにも行う。

これでアースの共通インピーダンスは、見えている部分については排除できても、
アンプの内部配線までは手をつけるわけにはいかずそのまま残っているから、
完全排除とはいえず、極端な短縮化といったほうがいい。

もちろんトゥイーターのアッテネーターのアースからも一本、アース銭をひいている。
つまりMA7900のスピーカー端子のアース側には五本の銭が入ることになる。

喫茶茶会記のスピーカーは、アルテックの2ウェイに、
スーパートゥイーターというよりも、サブトゥイーター的にグッドマンがついている。
このトゥイーターはローカットフィルター内蔵のため、
この部分に関しては手をつけていない。

Date: 9月 7th, 2017
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その2)

スピーカーがフルレンジユニット一発のスピーカーであれば存在しない問題も、
マルチウェイとなり、ネットワークが二次以上(12dB/oct以上の減衰量)となると、
アースの共通インピーダンスという問題が発生してくる。

ならばスピーカーのネットワークをアンバランス型からバランス型にし、
アンプの出力も、アンバランスからバランスにするという方法もあるが、
これはこれで別の問題が出てくる。

バランス型ネットワークを採用したシステムとしては、
過去にパイオニアのExclusive 2401、2402がある。

バランスにした際の問題点に、ここで触れると話が大きく外れるので、
割愛するし、ここではアンバランス型ネットワーク(これが大半である)の話である。

この問題に介しては、別項「サイズ考」で述べたことなので、詳細は省く。
「サイズ考」を読まれれば、アースの共通インピーダンスということでわかっていただけるし、
具体的にどうするのかについても書いている。

ただ「サイズ考」でも文章だけで説明している。
実際の配線の仕方の図を公開しているわけではない。
なので、よく理解できない人もいるとは思う。

そういう人はいまは手を出さないのが賢明である。
自分の頭で考えて、私が以前書いたものを読んで理解してからの方がいい。

わかったつもりになって、
私に直接、そこで生じる問題点(といえないこと)を指摘した人がいた。
いいかげんな断片的な知識での指摘であった。

確かに、この指摘してきた人のレベルと理解力ならば、
どうすればいいのかをじっくり考えることなく表面的にマネてしまうため、
そういう問題が発生しないわけではない。

「サイズ考」では、その指摘に対して答えている。

Date: 9月 7th, 2017
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その1)

オーディオ機器同士は、なんらかのケーブルを使って接続しなければならない。
ケーブルは必要不可欠であり、そのケーブルにより音が変るから、
やっかいとも思えるし、ゆえに楽しいともとらえることかできる。

私がオーディオに関心をもち始めた1976年にも、
いくつかのケーブルが市場に出ていた。
とはいえ、昨今のような活況とはいえない。

現在のケーブル市場を活況といっていいものかは措くとして、
少なくとも製品ヴァリエーションは、圧倒的に多くなっている。
価格というダイナミックレンジは、40年前では想像できなかったほどに大きくなっている。

あの時代に、いまの最高価格帯のケーブルが登場してくるなんて想像できていた人はいないはずだ。

高価すぎるといえるケーブルが゛みな優れているわけではない。
そんなケーブルのすべてを聴いているわけではないが、
概ね個性派といいたくなる傾向がある。

ケーブルに対する考えかたは、人によって違うから、
これだけのヴァリエーションに増えた、ともいえるだろう。

これからも、あれこれアピールしてくるケーブルは登場するだろうし、
最高価格に関しても塗り替えるモノが、いくつも出てくるだろう。

そういったケーブルを、仮に理想ケーブルとしよう。
理想のケーブルはいいすぎならば、理想のケーブルに近付いている、ぐらいにしておこう。

しつこいようだが、あくまでも「仮に」である。

そういったケーブルを使うことで、
接続のすべての問題点が解消されるのであれば、まだ理解できる。
だが、現実に理想に近づいたケーブルであっても、
スピーカーシステムとアンプとの接続において、解決できない問題が存在している。

Date: 5月 1st, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(その6)

ケーブルを、関節だと考えるようになったきっかけは、
別項で、骨格のしっかりした音について書いている時だった。

骨格のしっかりした音を出していく上で、
まず重要なのはスピーカーであるわけだが、ここでケーブルによる音の変化について考えていて、
それは関節にあたるのではないか、と気づいた。

骨格のしっかりした音とは、
骨格のバランスがとれている音でもあるはず。
そう考えると、関節があるべきところにある音ともいえる。

たとえば腕の長さが同じでも、
手首と肘の間隔、肘と肩の間隔の比率が大きく違っていたら、
それは骨格のしっかりした音、骨格のバランスのとれている音とはいえない。

言葉にとらわれすぎてケーブルについて考えていることはわかっていても、
機能的にみれば、オーディオを内部からとらえてみればケーブルは神経であり血管であるが、
そこから出てくる音からとらえていけば、ケーブルは関節でもあるし、
オーディオ機器を配置することからみても、ケーブルは関節といえる。

とはいえ、骨格のしっかりした音について書いていたときも、
この「骨格のしっかりした音」についての説明が難しい、と感じていた。

音を表現する言葉はすべてそうなのだが、その中でも「骨格のしっかりした音」については、
人によって捉え方、というか理解が大きく違うように感じているから、
ケーブルは関節である、と説明しても、同意してくれる人もいるはずだが、
どんなに説明しても理解してくれない人もいよう。

それでも書いているのは、ケーブルを一度「関節」という視点でとらえてほしいからだ。

Date: 4月 20th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(その19)

ケーブルによる音の違いについて語られるときに、
電流密度というキーワードが出てくることがある。

身近な例でいえば、ホースと水量の関係である。
径の太いホースにちょろちょろと水を通す。
ケーブルで、同じ状態を電流密度が低い、という。

径の細いホースに大量の水を通す。
ケーブルでは、電流密度が高い、ということになる。

低能率で低インピーダンスのスピーカーで、
しかも大音量で聴くのであれば、太いケーブルでも電流密度が低くなることは、
まずないだろう。

反対に高能率でインピーダンスが16Ωと高いスピーカーであれば、
太いケーブルを使うと電流密度は低くなる。

電流密度と音との関係は、測定できる性質のものではないだろう。
電流密度が低いよりも高いほうが、いい結果が得られるという感覚的なものがある。

ラインケーブルであれば電流密度を高くしたければ、
受け側のインピーダンスを低くすればいい。

パワーアンプの入力インピーダンスを1/10にすれば、
ラインケーブルを流れる電流値は10倍になる。
電流密度は高くなる。

確かに昔から、受けのインピーダンスは高いよりも、
過負荷にならない程度に下げたほうがいい、という人は少なくなかった。

その一方で、受けのインピーダンスを1MΩまで高めたほうがいい、という人もいる。
ジェームズ・ボンジョルノもSUMOのパワーアンプでは、
アンバランス入力のインピーダンスは1MΩにしていた。

マークレビンソンが1MΩにする十年ほど前のことである。

Date: 12月 1st, 2016
Cate: ケーブル

ケーブル考(雑誌の書名)

1955年に電波新聞社から「電波とオーディオ」が創刊されている。
「電波とオーディオ」の創刊メンバーのひとりが、若き日の菅野先生である。

そのころのことを「僕のオーディオ人生」に書かれている。
     *
 新しい雑誌のタイトルは、僕達の間では「オーディオ」と決まっていた。とはいうものの、この「オーディオ」という言葉は当時全く知られていない言葉であって、専門家ならいざ知らず、一般には通用するはずもなかった。この頃、アマチュアの間で使われていた、レコードとオーディオに関する言葉は「ハイ・フィ」というもので、どういうわけか、「ハイ・ファイ」とは発音されなかった。
 こんな状態だったから、平山社長や、その他会社の幹部の意見では、ハイ・フィかハイ・ファイのほうがよいだろうということだったが、これには僕達が頑強に反対した。ハイ・フィやハイ・ファイは俗語であって、オーディオこそ、我々が真面目に取組もうとしている世界の正しい呼称であると突っぱったのである。もちろん、ハイ・フィやハイ・ファイは当時の辞書には出ていなかったが、オーディオは出ていた。当り前である。しかし、今だったら、雑誌のタイトルとして、辞書に出ている言葉はボツにして、出ていないほうを採るだろうに、当時は、やはり世の中、コンサーバティブであった。結局、タイトルは『電波とオーディオ』と決まったのである。この「電波」がつくことには我々は抵抗したが、電波新聞社の刊行物だからということで押し切られてしまった。しかし「電波」という字はごく小さく、ほとんど「オーディオ」が全面に目立つ題字が選ばれることになったのである。
     *
「電波とオーディオ」の編集を約三年やられて、菅野先生は離れられている。
そのころには電波の文字が大きく、オーディオは小さくなっていたそうだ。

「電波とオーディオ」の書名がいいとは思っていないが、
いまの時代からみれば、時代の先取りともいえそうである。
決して好きな表現ではないが、一周まわって新しい、ということになる。

電波とはテレビ、ラジオ、アマチュア無線などを、ここでは指しているが、
無線という意味で捉えれば、
「電波とオーディオ」はケーブルレス(ワイヤレス)・オーディオということにもなる。

「電波とオーディオ」のころの無線と、いまの時代の無線は技術的には進歩があり違ってきている。
けれど電波を使うことは同じで、機器間の接続をケーブルに頼らずに、という点は同じといえる。

「電波とオーディオ」のころの電波は長い距離の伝搬手段であり、
いまの時代の家庭内での電波は至近距離の伝搬手段である違いはあっても、
「電波とオーディオ」や「無線と実験」といった書名は、
かなり長いこと古くさい印象があったが、いまは必ずしもそうではなくなっている。

オーディオ信号の伝送において、ケーブルなのかワイヤレスなのか。
一刀両断で、どちらかが劣るとは、いまのところいえない。

ワイヤレスなんて……、という人がオーディオマニアに少なくないことは知っている。
なぜ、そんなふうに決めつけてしまうのか。
決めつけてしまうことで、自分を誰かにアピールしたいのか。

すべての技術にメリットとデメリットがあり、
ケーブルにしても無線にしても、どういう規格でどう使っていくのかので、
判断していくものであって、いえるのはどちらが好きか嫌い程度である。

ケーブル伝送は一見簡単そう(単純そう)にえるが、
部品点数においては複雑な構成の増幅よりも、
実のところ難しい面を持っているようにも思えることがある。

Date: 10月 1st, 2016
Cate: ケーブル, ショウ雑感

ケーブル考(ショウ雑感・その2)

インターナショナルオーディオショウでのテクニクスのブース。
SL1200Gについての説明と音出しが行われていた。

SL1200Gは電源コードと信号ケーブルを交換できる。
もちろん製品にはどちらも同梱されている。

が、この日の音出しは、説明もされていたが、
電源コードはアキュフェーズ、信号ケーブルはゾノトーンのモノを使っていた。

話に聞けば、テクニクスの試聴室でも信号ケーブルはゾノトーンとのこと。
いわばテクニクスにとって、信号ケーブルはゾノトーンが標準といえる。

だからそのケーブルを、インターナショナルオーディオショウでの音出しでも使う。
そういう理解もできるわけだが、
それではなんのために信号ケーブルと電源コードを同梱しているのか。

SL1200Gは330,000円(税抜き)するアナログプレーヤーである。
このクラスのモノを買う人が、なんのケーブルも持っていないとは考えられない。
ならばSL1200Gは、最初から信号ケーブルも電源コードもなしでもいいという考えもできる。

それでもテクニクスはケーブルをつけている。
どんなグレードのモノなのかはしらないが、
つけておけばいい、という考えによるモノではない、と思う。

あまりにも安っぽいモノを、330,000円のモノにつけるだろうか。
きちんとしたケーブルがついてくるのではないだろうか。
だとしたら、それはSL1200Gにとって、
標準といえる信号ケーブルと電源コードであるわけだ。

でも、それらのケーブルを使ったSL1200Gの音を、オーディオショウで聴かせない。
テクニクスの試聴室においても、そうであろう。

ここで井上先生の言葉を憶いだす。