ケーブル考(銀線のこと・その10)
瀬川先生がステレオサウンド 52号に書かれたマークレビンソンのML6の音のこと。
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ともかくML6の音は、いままで聴きえたどのプリアンプよりも自然な感じで、それだけに一聴したときの第一印象は、プログラムソースによってはどこか頼りないほど柔らかく聴こえることさえある。ML6からLNPに戻すと、LNPの音にはけっこう硬さのあったことがわかる。よく言えば輪郭鮮明。しかしそれだけに音の中味よりも輪郭のほうが目立ってしまうような傾向もいくらか持っている。
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《どこか頼りないほど柔らかく》、
当時の私にとって、この音の表現が、銀線のイメージとすぐさま結びついてしまった。
なにかの広告で読んだのだと記憶しているが、
銀線の音のイメージとして、ML6の《どこか頼りないほど柔らかく》というのが、
ほとんどそのままあったからだ。
当時、高校生だったし、銀線の音は聴いたこともなかった。
文字と銀という金属の色からのイメージだけで、なんとなく銀線の音を想像していた時期であった。
それはどこか女性的な音のイメージでもあった。
銀線の音のイメージがそうであったから、
銅線の音は対照的に、私のなかでは男性的な音のイメージを、なんとなく持っていた。
もちろん、銅線、銀線の音は、そう単純なものではないのだが、
それでもどこか銀には、優雅というイメージがついてくるし、
それだけでなくいぶし銀という音の表現からは、
決して前へ前へ、と出しゃばってこない音のイメージとも結びついていた。
Silver Signature 25は、どんな音なのだろうか。
Silver Signature 25も単体で音が鳴るわけではない。
アンプ、プレーヤーと組み合わせなければ音は鳴ってこない。
アナログプレーヤーならば、発電コイルが銀線のモノはあるし、
トーンアームのパイプ内配線も銀線のモノがあるだろうし、
銀線に交換することもできないわけではない。
出力ケーブルも銀線で揃えられる。
音の入口と出口は、銀線で固められる。
けれどアンプとなると、そう簡単にはいかない。