Author Archive

Date: 7月 16th, 2025
Cate: 「ネットワーク」

dividing, combining and filtering(その5)

ソーシャルメディアとのつき合い方は、特にfilteringだ。
誰をフォローするのか。

読みたいことのみをフォローしているようで、
読みたくないことを拒絶している。
自分と同じ意見、考えを持つ人、その投稿ばかりを追いかけて、
そのことだけで世界観を構築してしまう。

そういう使い方をしている人ばかりでないことはわかっているが、
そういう使い方をしている人も少なくないようだし、
知人の一人も残念なことにそうである。

そして凝り固まっていき、余計に拗らせているように見える。
本人は真理に迫りつつある──、という認識のようだ。

filteringとは、そういうことでは、本来ないわけなのに、そうなっていってしまう。
ソーシャルメディアがなければ袋小路にぶち当って、
そこで考えを改める機会にもなるだろうが、
ソーシャルメディアはそうじゃない。

どこまでもどこまでも、悪い意味でつき進める。

Date: 7月 16th, 2025
Cate: 「本」, 老い

オーディオの「本」(ラジオ技術のこと・その4)

ラジオ技術の最新号が発売になっている。
通巻989号であり、一年以上経っての発売。

秋葉原の万世書房で購入できるが、ラジオ技術のウェブサイトには、まだ告知されていない。

来年、990号が出るのか。
毎年一冊ずつ出て、2036年に通巻に1000号となるのか。

Date: 7月 15th, 2025
Cate: 音の良さ

アキュフェーズ A20Vのこと(余談)

アキュフェーズのA20Vをメインのパワーアンプとして使っているわけではない。
それでも、というか、だからこそ、なのか、
手を加えようと考えて二年ほど経つ。

メインとして使っていないからこそ、毎日少しずつやっていけばいい、とも言えるし、
メインとして使っていないから、あれこれ考えても、もうひとつ実行にうつす気がわいてこない、ともいえる。

けれど、今回、ウェストレックス・ロンドンでのA20Vの音(実力)を聴いて、
これは早いうちに手を加えようと思うようになった。

具体的にどこに手を加えるのかは、すでに決めている。
複数箇所、手を加える予定で、さほど費用はかからないので、その気になれば、一気にやってしまえるけれど、
いまA20Vは来月のaudio wednesdayでも使うので、手元にない。

手を加えたら、またウェストレックス・ロンドンを鳴らしてみたい。

Date: 7月 14th, 2025
Cate: 音の良さ

アキュフェーズ A20Vのこと

7月9日のaudio wednesdayでは、
アンプはマランツのModel 7とマッキントッシュのMC275の組合せの予定だった。

けれどMC275の不調で、急遽、代わりのアンプを取りに戻ることになった。
持ってきたのは、アキュフェーズのA20Vである。
A級動作で、出力は8Ω負荷で20W+20W。小出力アンプである。

いまから二十以上前のアンプである。
他にもアンプはあるけれど、A20Vにしたのは、保護回路がしっかりしているからだ。

修理が可能なスピーカーならば、まだいいけれど、
野口晴哉氏のスピーカーは修理が困難なモノばかりである。
何かあることはそうそうないことはわかっていても、全く起こらないわけでもない。

ならば安全なアンプにしておきたい。
ウェストレックス・ロンドンも100dB以上の変換効率の高さを持つ。
20Wならば十分と思いがちだが、実際には16Ω負荷となるから出力は半分の10W。

300Bシングルアンプ並みの出力のトランジスターアンプで、
この時代のスピーカーが、どう鳴ってくれるのか。
想像が難しいところもあったが、鳴らしてみたら、違和感がない。

真空管とかトランジスターとか、そんなことは頭からさっぱり消えていた。
出力も十分だった。

正直、A20Vの実力を低くみていたところがあった。認識不足を反省するくらいの鳴り方だった。

A20Vの後継機は、A30、A35と続いたが、現在は同クラスの製品はない。

A35と上級機のA60の中間に位置するA45が登場し、現在はA48Sとなっている。
A20Vは出力段のMOS-FETは3パラレル、A48Sは6パラレルと規模は大きい。

A45もA48Sも聴いていないので、なんとも言えないけれど、
A20Vとは傾向は同じようでいて、けっこう違うようにも思う。

どちらかがいいアンプなのかは、組み合わせるスピーカー次第だ。
ウェストレックス・ロンドンとの組合せだと、A20Vの方がいいかもしれない──、そんな気がしている。

Date: 7月 14th, 2025
Cate: audio wednesday

Westrex Londonを鳴らしてみて(その6)

一時間強での音の鳴り方の変化からすると、
これから先丁寧に鳴らしていけば、ウェストレックス・ロンドンのスピーカーは、もっとよく鳴るようなるはず。

だが、それはいまどきのオーディオ評論家が言うような「スピーカーの存在が消える」とは、まるで違う鳴り方のでの、その先である。

今回は、さほど長い時間、ウェストレックス・ロンドンを鳴らすことはできなかったが、
一時間強での音の鳴り方の変化は、存在感を増していく、ともいえるものだった。

スピーカーが歌うように鳴る。
そのことが鳴らしていくとともに、よりスムーズに歌うようになり、
さらに楽しく音楽を奏でてくれるようにも感じとれた。

そこには、スピーカーを通して音楽を聴く喜びがある。

Date: 7月 14th, 2025
Cate: audio wednesday

Westrex Londonを鳴らしてみて(その5)

20時30分ごろにステレオで鳴り始めたウェストレックス・ロンドン。
カルロス・クライバーのベートーヴェンの第二楽章の終り近くで、一時間強経っていた。

やっと目覚めたばかりのスピーカーにとって、この一時間は長くはないけれど、
それでも徐々に本領を発揮してくれつつある時間ではあった。

もっと時間があれば、さらによく鳴ってくれたはず。
そう言い切れるほど、クライバーのベートーヴェンの第三楽章と終楽章は、
ベートーヴェンの音楽の巨きさを感じられるほどに、鳴ってくれた。

これでウェストレックス・ロンドンが鳴り切ったわけではない。
もっともっと良くなるはずだし、オーディオ的な聴き方をすれば、
細かな指摘をされるだろうし、キズのない音ではない。

でも、その前に、ベートーヴェンの音楽をベートーヴェンの音楽として聴かせてくれた。
このことが私にとっては、とても大事なことだ。

Date: 7月 13th, 2025
Cate: audio wednesday

Westrex Londonを鳴らしてみて(その4)

audio wednesdayを喫茶茶会記でやっていたころは、スピーカーはアルテックをベースにしたモノだった。

ウーファーの416-8Cの出力音圧レベルは、97dB/W/m。
実際に鳴らした感じも、そのくらいである。

100dBを超えるほどの高能率スピーカーではないものの、
十分、そう呼べるだけのモノではある。

メリディアン のUltra DACを最初に聴いたのは、このスピーカーだったし、
喫茶茶会記でUltra DACを聴いたのも、全て、このスピーカーを通してだった。

現在の狛江でaudio wednesdayを行うようになってから、
いくつものスピーカーでUltra DACを聴く機会、
言いかえると、Ultra DAC独自のフィルターの切替による音の違いを聴くようになった。

いまのところいえるのは、Ultra DACのフィルターの音の違いは、
明らかに高能率スピーカーの方が、はっきりと出る。
そして、判断に迷うことが少ない。

このことは私にとって非常に興味深い現象で、そういうことではないかな、という理屈はあるものの、
これから、いくつかのスピーカーで試してみてから語っていきたい。

そんなことを感じながら、ウェストレックス・ロンドンのスピーカーを鳴らしていた。
49年ぶりに鳴ったウェストレックス・ロンドンの音は、
最初から凄いと思わせるところと、個人的には、少しあれっ? と感じるところもあった。

それはおそらく長いこと鳴らされていなかったからだろう、と思いながら、
最後に、カルロス・クライバーのベートーヴェンの五番(MQA-CD)をかける。

二楽章の後半から、明らかに音が変った。

Date: 7月 12th, 2025
Cate: audio wednesday

Westrex Londonを鳴らしてみて(その3)

渡辺茂夫のCDをかけて、今日は、これだけで充分じゃないか、
という気持も私の中にはあった。

でも、やはりステレオで聴きたい、という声ばかり。左チャンネルを鳴るようにする。

今回は、細かな不具合がいくつか起こるだろうと、やる前から思っていたから、
CDもあれこれ持参したわけではなかった。

その中の一枚が、クーベリック/バイエルン放送交響楽団によるスメタナの「わが祖国」。
その後に、来られた方のCDもかける。
その中に“LIVE – Hans Zimmer”があった。

タイトルからわかるようにライヴ録音。
これも、かなりよく鳴ってくれた。
トーキー用のスピーカーで映画音楽を鳴らしているわけだから、
よく鳴って当たり前とは思わない。

ウェストレックス・ロンドンの時代とハンス・ジマーの時代は、ずいぶんと違う。
そんなこと関係ないと思わせるほどに、いい。

以前から感じていることなのだが、
高能率のスピーカーはライヴ録音をうまく鳴らしてくれる。

たまたまなのだが、クーベリックの「わが祖国」もライヴ録音。

このことに関係して、もう一つ思っていたことは、
メリディアンのUltra DACのフィルターの切り替えによる音の違いは、
高能率のスピーカーの方が、はっきりと違いが出る、ということ。

Date: 7月 11th, 2025
Cate: audio wednesday

Westrex Londonを鳴らしてみて(その2)

渡辺茂夫と聞いても、どんな人か、ほとんどの人は知らないと思う。
私は、なんとなく名前だけは聞いた(見た)記憶があるけれど、
だからといって、どんな人なのかについては、ヴァイオリニストだった──、それだけだ。

前回のaudio wednesdayが終ってから検索して、
インターネットで知り得ることは調べたけれど、
そのことによってCDを買って聴いてみよう、とはならなかった。

それに三十年ほど前に発売されたCDは廃盤のようで、入手は難しい。それもあって、それ以上の興味は持たなかった。

おそらく先日のaudio wednesdayに来ていた人で、渡辺茂夫のCDを聴いたことのある人は、一人だけ。
CDを持って来られた人だけのはず。

誰のCDなのか、どういう人なのか、全くの説明なしに渡辺茂夫のCDをかけた。
それで考え良かった。
何の先入観もなしに、ウェストレックス・ロンドンの音とともに、
渡辺茂夫の演奏に、皆驚いたのだから。

このCDは東芝から出ていた。
ライナーノーツによると、88.2kHz、20ビットでデジタル変換されている。
ならば、QobuzかTIDALで、このスペックのまま配信をしてほしい。

とにかく49年ぶりに鳴った野口晴哉氏のウェストレックス・ロンドンは、聴く人みなの心を捉えてしまった。

Date: 7月 10th, 2025
Cate: audio wednesday

Westrex Londonを鳴らしてみて(その1)

昨晩のaudio wednesdayでは、ウェストレックス・ロンドンのスピーカーを鳴らした。
おそらくだが、野口晴哉氏が亡くなられてから鳴らされていなかったスピーカーだろう。
となると49年間、鳴らされていなかったことになる。

できれば事前にチェックして準備しておきたかったのだが、
そういう時に限って時間の都合がつかなくて、
ぶっつけ本番になり、なんとなくだが細かな不具合が起きそうな気はしていた。

しかも、こういう予感は当たるもので、
パワーアンプのマッキントッシュのMC275のトラブルも重なって、
ウェストレックス・ロンドンからステレオで音が鳴ってきたのは、20時30分を過ぎていた。

一度、アンプを取りに家に戻ったりして、しかも暑いし、
大変な一日になったけれど、それでもウェストレックス・ロンドンから鳴ってきた音を聴くと、
やって良かったな──、だけである。

本領発揮までは、まだまだ時間が必要だけど、
堂々とした、リアリティのある音が聴けた。

最初、右チャンネルだけを鳴るようにしてかけたのは、渡辺茂夫のCDだった。
モノーラルの状態だったから、モノーラルのCDをかけたわけだが、
このCDは、最近、よく来られる方が持ってこられた。

前回、渡辺茂夫のCD、持ってきます、と言われていた。それをかけたわけだ。

持ってこられた方も、かけた私も、他の人皆、鳴ってきた音に驚いた。

Date: 7月 9th, 2025
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) –第十九夜(さそうあきら氏のDJ)

8月6日のaudio wednesdayは、さそうあきら氏にDJをお願いしている。

「神童」、「マエストロ」、「ミュジコフィリア」と言った作品からもうかがえるように、
たいへんな音楽好きの方である。

6月には「絵師ムネチカ」も発売されている。上の三作品とは違い、
直接音楽を描いた作品ではないけれど、
私は「絵師ムネチカ」を読んでいて、以前書いたように、
ワグナーの「パルジファル」をおもっていた。

このへんは個々人の音楽の聴き方と関係してくることだから、
全然、そんなことは感じなかったという人がいてもいい。

今年1月に、DJの件を依頼。さそうあきら氏のスケジュールの関係で、
8月に行うことに決まっていた。

来月、やっとその日がやってくる。

Date: 7月 8th, 2025
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) –第十八夜(Westrex Londonを鳴らす・いよいよ明日)

明日(7月9日)のaudio wednesdayでは、ウェストレックス・ロンドンのスピーカーを鳴らす。
シーメンスのオイロダインと同じスタイルのスピーカーである。

このスピーカーは、まだ鳴らしていない。前もって確認しておきたかったが、都合がつかなかった。
なので、明日はぶっつけ本番で鳴らすことになる。
細かな不具合が発生するかもしれないし、スピーカーそのものの目覚めも時間がかかるであろう。

明日は、そんな過程、音の変化を聴いてもらうことになるだろう。

Date: 7月 7th, 2025
Cate: ジャーナリズム, ステレオサウンド

編集者の悪意とは(その33)

別項で「偏在と遍在」を書いているが、
いま書いていることは「偏在と遍在」とも関係してくることだろう。

現在のオーディオ雑誌の編集部の人たちがどういう人たちなのかは、全く知らない。
それでもオーディオ雑誌を、ほぼ五十年間眺めてきてなんとなく感じることは、
昭和の編集部の方が、いわば偏っていた人たちの集まりだった、ということだ。

これもどちらがいいとか悪いとかではなく、
個性というか癖のある人たちは、昔の方が多かったのではないのか。

このことはオーディオ雑誌の編集者だけに言えることではなく、
オーディオメーカーの人たちも同じではないだろうか。

そういう人たちは、いまの時代、これからの時代、お呼びでないということなのか、とも思う。

山之内正氏の名を挙げるが、山之内正氏に負の感情は持っていないことは最初に、はっきりさせておく。

以前、別項で土方久明氏をオーディオ評論家(仕事人)と書いた。
山之内正氏も、同じくオーディオ評論家(仕事人)だと感じている。

山之内正氏の、オーディオ業界での評判はとても高い、と聞いている。
そうだろう、と山之内正氏の文章を読んでいると思う。

山之内正氏は、ステレオサウンド、オーディオアクセサリー、ステレオ、
それぞれのオーディオ賞の選考委員をされている。

このことをどう捉えるか。

編集者の悪意とは(その32)

以前のオーディオ雑誌には、偏りがあった。
この偏りが、それぞれのオーディオ雑誌の個性(カラー)につながっていた。

これはいいことなのか、悪いことなのか。

一般的には、偏りがあるのだから悪いことになるだろうが、
オーディオ雑誌においても、そうだと言えるのか。

オーディオ機器の評価のためには、偏りなんてあってはならない──、
果たしてそうなのか。

それぞれのオーディオ雑誌の偏りをなくしていく方向になってしまったら、
そして偏りをほぼ完全に無くすことができたなら、
オーディオ雑誌は一つでいい、ということになる。

偏りをなくしていくのは、オーディオ雑誌の編集者としての善意と言えるのか、それとも悪意なのか。

Date: 7月 5th, 2025
Cate: ユニバーサルウーファー

LOCKWOOD Major(余談)

ロックウッドの同軸型ユニットを製造しているVolt Speakersを代表するユニットといえば、
特徴的な外観を持つウーファーである。

PMCのスピーカーシステムに搭載されている、このウーファーは、フレームが前面にある。
この構造により、磁気回路、ボイスコイルの温度上昇を抑えている。

この構造を全面的に高く評価するかといえば、必ずしもそうではない。
デメリットもあると考えるが、それでもこのウーファーユニットを最初に見た時に、
最初に考えたのは、セレッションのSystem 6000だった。

System 6000が登場した時には、このスピーカーユニットは存在してなかった。
System 6000は、いま追試してみたいウーファーシステムといえるのは、
ジャーマン・フィジックスのTroubadour 40があるからだ。

System 6000に使えるスピーカーユニットは大振幅に耐えられるモノでなければならない。
となると大振幅時の磁気回路、ボイスコイルの温度上昇をどう抑えるのかが、とても重要となる。

ボイルコイル(金属線)の性質として、温度が上昇すると抵抗値が増していく。
そうなるとせっかくのパワーアンプからの出力が、この抵抗値の上昇によって熱に変換される割合が増していく。
つまりパワーを入れても、スピーカーユニットの反応が比例しなくなる。

System 6000は、SL700が登場してSystem 7000となることはなかった。
短命で市場から消えていったが、いまもう一度、このユニークなウーファーシステムを再設計するとなると、
セレッションはVolt Speakersのスピーカーユニットを採用する、と思う。