世代とオーディオ(その3)
ナカミチのカセットデッキには、そういう面があったわけだが、
中には誰にも自分で録音したテープは渡さない、
それにカセットテープを聴くのは録音したデッキのみ、という人もいる。
そういう人にとってはナカミチのカセットデッキの、そういう面はどうでもいいことになる。
すこしばかりナカミチのカセットデッキについてネガティヴなことを書いているものの、
私がいまカセットデッキをなにか一台手に入れるとしたら、ナカミチの680ZXにする。
680ZXは一般的なサイズのものとしては、ナカミチのカセットデッキのなかでも上級機種であった。
価格も、高価な部類にはいる。
フロントパネルは、カセットデッキ(テープ)が好きなマニア向けとでもいいたくなるもので、
私は、デザイン面で、このデッキを欲しいとは思わないけれど、
それでも680ZXを欲しい、と思う理由は、ほかの人にとってはどうでもいいところにある。
ステレオサウンド 54号掲載の黒田先生の連載「さらに聴きとるものとの対話を」では、
中島みゆきについて書かれている。
タイトルは「ちなみに、陽気な失恋鳥」。
このなかにナカミチの680ZXがでてくる。
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ふとした機会に、中島みゆきが、「オールナイト・ニッポン」という深夜放送の番組でディスク・ジョッキーをやっているのをしった。中島みゆきが出演するのは、月曜日の夜というか、つまり火曜日の午前一時から三時までの二時間だ。
それをきいてみようと思った。ところが、困ったことに、ぼくはどちらかといえば朝型の人間で、午前三時までとても起きていられそうにない。それで、やむをえず、カセット・デッキで留守録音をすることにした。幸いなことに、ナカミチ680ZXというカセット・デッキをぼくを持っているので、それで録音することにした。ナカミチ680ZXには、半分のスピード、つまり2・4cm/秒で録音再生できる機構がついているので、C120のカセットテープをつかうと、まるまる二時間の録音ができる。
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これを読んだ時から、680ZXって、いいなぁ、とおもっている。
半速(2.4cm/sec)で録音・再生できる、という理由からであり、
黒田先生が、こういう使い方をされていたのを読んで、私もやってみたい、と思ったからである。
なんともミーハーな話なのだ。