手がかり(その4)
最近は使われていないようだが、
柳沢功力氏はステレオサウンドの試聴にローズマリー・クルーニーのディスクをよく使われていた。
ローズマリー・クルーニーのディスクは、私がステレオサウンドにいたころから試聴用に使われている。
LPでもCDになっても使われている。
柳沢氏だけでなく、菅野先生も使われていた。
試聴用のディスクといえば、その時代の最新録音でもっとも音のよいディスクが使われる、
そう思われている方もいるようである。
そういう人からすると、ローズマリー・クルーニーのディスクを、
長いこと試聴用として使うことは理解できないことのようでもある。
数年前のことになるが、インターネットのある掲示板のところで、
柳沢氏がローズマリー・クルーニーのディスクを試聴に使われることに否定的な意見が書きこまれていた。
それに同意する人もいた。
ローズマリー・クルーニーを聴いて、何がわかるの?
これが、そういう人たちの主張するところである。
インターネットで、特に匿名の掲示板となると、
どんな人が書きこんでいるのかはまったくわからないことのほうが多い。
若い人かと思っていたら、ずっとあとになって年輩の人だったり、
その逆だったすることもある。
それに掲示板では過激なことを発言することで知られていた人は、
実生活では控え目で口数の少ないおとなしい人だということを耳にしたことがある。
だからローズマリー・クルーニーのディスクを使うなんて……的な書込みをする人が、
若い人なのか、年配の人なのか、それすらわからない。
それでもひとついえることがある。
おそらく、こういう人たちは、なんの手がかりももたずに聴いている人だ、ということだ。
そして、こうもいえると思っている。
この人たちは、この項の(その1)の冒頭で引用した黒田先生の文章に登場する人と同じである、と。