日本のオーディオ、日本の音(その13)
マークレビンソンのML2(No.20)は、
シャーシーの側面からヒートシンク1基に対して2本の金属柱を出していて、
この金属柱に星形ヒートシンクのHの字の水平ラインにネジ止めしている。
このヒートシンクには出力段用のトランジスターとエミッター抵抗がとりつけられていて、
そのままではこれらのパーツが露出してしまうため、
コの状に折り曲げたアルミ製のカバーが取り付けられている。
このカバーもシャーシー側面から延びた金属柱にヒートシンクが取り付けられ、
さらにそれを延長する形でついている短めの金属柱(スペーサー)にネジ止めされている。
ML2(No.20)のヒートシンクも、このカバーも肉厚は厚くはない。
どちらかといえば薄い、といったほうがいいだろう。
これらが、いわば中空に浮くような状態になっている。
しかもコの字状のカバーは垂直のラインの上下2点による固定なので、
コの字の水平ラインは片持ち状態である。
前述したように分割したヒートシンクだから、
ヒートシンク1基あたりの重量はそれほどでもない。
実際にML2(No.20)のヒートシンクを指ではじいてみると、
けっこうな音で鳴っていることが確認できる。
ソニーのTA-NR10は、重量10kgの重量のあるヒートシンクを、
TA-NR1でも採用されている、ハイカーボン・スチール(いわゆる鋳鉄)のベースに取り付けている。
このベースは最大肉厚21mm、重量は10.5kg。
ML2(No.20)の側面はアルミで、ずっと薄い。
ML2(No.20)の底板だが、もちろんこんな重量級ではない、アルミ製である。
TA-NR10のヒートシンクは、一般的な形状をしているものの、
おそらく鋳鉄製のベースにフィンの先端を固定しているもの、と思われる。
いくら重量級で銅でつくられていようと、
フィンを指ではじければ、大なり小なり音叉的存在ゆえ、音は発生する。
けれどフィンの先端を、鋳鉄(銅に対して異種金属)に固定すれば、
フィンの鳴きはそうとうに抑えることができる。
TA-NR10をバラしてみたことはないけれど、鋳鉄ベースの形状と、
TA-NR10の内部のつくりをみていると、まちがいなくフィンの先端は鋳鉄ベースで固定されているはず。