日本のオーディオ、日本の音(その5)
ダイヤトーンの2S305は古いスピーカーだ。
それもかなり古いスピーカーシステムである。
ステレオサウンド 62号の時点で25年ほど前ということだから、そこからさらに30年が経っているいま、
2S305は半世紀以上前のスピーカーシステムとなる。
30cm口径のコーン型ウーファーと5cm口径のコーン型トゥイーターの組合せによる2ウェイの2S305は、
いまどきの2ウェイのように広帯域の周波数特性を実現しているわけではない。
発表されている周波数特性は50Hz〜15kHzと、
2S305よりもずっと安いブックシェルフ型のスピーカーのほうが、
数値上ではワイドレンジということになる。
そういう古風な設計のスピーカーシステムを、
いま鳴らしてみたところでどうなる? と疑問をもつ人もいて不思議ではない。
でも2S305は、QUADのESLと同時代につくられている。
ESLがアンプの性能向上、プログラムソースの高品質化など、
ESLを取り囲む環境の変化によって本領を発揮してくるとともに、
その評価も高まっていったように、
優れたスピーカーシステムであれば、ESLに限らず、同じことは起り得る。
2S305でグールドのゴールドベルグ変奏曲を聴きたいと思っている私だけれど、
2S305を鳴らすアンプは、2S305と同時代のアンプ使うつもりはまったくない。
懐古趣味で2S305を聴きたいわけではないから、アンプの時代性にはこだわらない。
あえてこだわるとすれば、日本製のアンプ、ということか。
それもグールドのゴールドベルグ変奏曲を考え合わせれば、
ピアノは日本製で、奏者(つまりグレン・グールド)はカナダ人だから、
スピーカーをピアノ、アンプを奏者にあてはめれば、
アンプは海外製のモノもいい、と、都合よく考えている。
鳴らしてみたいアンプに求めるのは、第一に音色の統一性である。