Date: 7月 16th, 2012
Cate: D130, JBL
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D130とアンプのこと(その18)

アンプによってスピーカーは鳴り方を変える。
ときには、まるで別物のスピーカーに変ってしまったかのように錯覚するほどの音の変り方を示すことだってある。

D130は1948年に登場したスピーカーユニットだから、
64年のあいだ、さまざまな時代の、さまざまなアンプで鳴らされてきたことになる。

出力トランスの2次側からのNFBがかけられていない真空管によるパワーアンプ、
とうぜん出力インピーダンスは高い(ダンピングファクターが低い)。
それがNFBが積極的に使われるようになり、同じ真空管アンプでも出力インピーダンスは下り、
ダンピングファクターも高くなっていく。

そしてトランジスターが登場し回路技術が発展していくことで、
D130の登場の1948年では考えられないくらいのNFBが安定にかけられるようになり、
出力インピーダンスはさらに下っていく。
ダンピングファクターが100を超えるアンプは珍しくなくなったし、1000を超えるアンプも登場してきた。

あるジャンルの製品の多彩さをみていったとき、
パワーアンプの多彩さはコントロールアンプのそれをはるかに上回っている。
出力数Wの直熱三極管のシングルアンプもあれば、
1kWを超える出力をもつトランジスターアンプも存在している。
アンプの規模にしても、手のひらにのってしまうのに数10Wの出力をもつDクラスアンプもあるし、
モノーラル仕様で、さらには電源部と増幅部が別筐体で、
それぞれのシャーシー重量が50kgを超える規模のアンプも存在する。

こうしてみるパワーアンプの多彩さ、
いいかえるとパワーアンプという製品としてのダイナミックレンジの広さはなかなか凄いものがある。

実にさまざまなアンプにつながれてD130は鳴らされることで、
それまでのアンプではみせなかった一面を新たに聴かせてくれたりしたことだと思う。
新しいパワーアンプのすべてが、以前のパワーアンプよりもすべての面で上廻っているわけではないが、
それでも良質の、ほんとうによくできたパワーアンプであれば、
D130のような古典的なスピーカーから、新鮮な音を引き出してくれることは、そう珍しいことでもない。
いわばスピーカーそのものが若返ってしまうかのような、そういう音の変化をみせる。

だから高能率スピーカーだから大出力のパワーアンプで鳴らす必要はない、とはいわない。
D130のような非常に高能率のスピーカーを、数100Wの出力のパワーアンプで鳴らしてみる、とか、
D130が登場した時には考えられなかったほどの高いダンピングファクターのアンプで鳴らしてみる、とか、
高能率同士の組合せとしてDクラスのアンプで鳴らしてみる、とか、
固定観念にとらわれることなく、多彩なパワーアンプで鳴らしてみてもいい。

基本的にそう考えている私だけども、D130について考える時、
現代のアンプが、どれだけD130に寄り添うアンプかという観点から見た時に、
どうしても組み合わせてみたいパワーアンプとして、
別項でも取り上げているファースト・ワットのSIT1が頭から離れなくなっている。

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