「鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言」
1989年に小学館からサライが創刊された。
巻頭記事は安岡章太郎氏のインタヴュー記事で、これが読みたくて手にとりそれ以降数年間は毎号購入していた。
初期のサライではオーディオが取り上げられたこともあった。
世界の著名人のオーディオマニアとその愛用のオーディオを紹介する、というものだった。
内容的に物足りなさを感じたものの、大手出版社だからこそできる内容でもあった。
ゴルバチョフもオーディオマニアで(たしか)SMEを使っている、とあったのを憶えている。
ロードバイク(自転車)が取り上げられている号もあった。
特集記事も面白いものがあったけれど、やはり毎号楽しみにしていたのは巻頭のインタヴュー記事だった。
安岡章太郎氏もそうたったし、そのあとにつづいて登場した人たち皆、
「50すぎてからが面白くなった」といったことを言っていたのが、
当時20代半ばという、50までの中間点にちょうどいた私には印象深かった。
「50からなのかぁ……」とおもっていた。
西岡常一氏のことを知ることができたのは、サライの、そのインタヴュー記事だった。
ちょうど西岡氏の「木に学べ 法隆寺・薬師寺の美」が
小学館から出る直前ということもあっての登場だったのだろうが、面白かった。
だから「木に学べ 法隆寺・薬師寺の美」も発売日にすぐさま購入した。
オーディオとはもちろん直接関係のない本ではあるものの、学ぶところは多い。
いま読み返しても、多い。
「木に学べ 法隆寺・薬師寺の美」を、あの時、読んでいておもっていたことがある。
「木に学べ」は「音に学べ」にできる。
法隆寺、薬師寺は、読み手が愛聴する音楽作品をあてはめればいい、ということだ。
来年、私も50になる。
50になる前に中間点でおもったことを思い出したのは、
「鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言」という映画が、ちょうどいま公開されていることを知ってからだ。