Date: 2月 29th, 2012
Cate: ワイドレンジ
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ワイドレンジ考(ジャズにとって、クラシックにとって・その6)

1949年9月29日にランシングは去っていった。
LPの登場が1948年のことだから、ランシングがD130を発表した1947年はまだSPの時代だった。
ランシングがどんな音を鳴らしていたのかは、いま知る術はない。
勝手に想像するしかない。

D130をどんなエンクロージュアにいれていたのか、どんなふうに鳴らしていたのか。
アンプはどういうものだったのか。
当然真空管アンプだが、出力管は何だったのか。それも既製品であった可能性よりも自作であった可能性もある。
音量はどの程度だったのかも知りたい。

でも手掛かりは、いまのところまったくといっていいほどない。

だから想うだけ無駄といえば無駄な時間なのだが、
これだけは確信をもっていえるのは、ランシングはクラシックがよく鳴るスピーカーとか、
ジャズがうまく鳴ってくれるスピーカーとか、
そういうことを目標としてD130をつくったわけではない、ということだ。

1940年代後半という時代で、最高のスピーカーユニットを目指した結果がD130なのである、
というごく当り前のことを、D130の音が強烈なイメージとともに日本では語られることが多いために、
つい忘れてしまいがちになってはいないだろうか。

D130はスピーカーユニットだから、いわば音を出す道具である。
楽器も音を出す道具である。
この意味では、私もスピーカー=楽器という受けとめ方には異論はない。
(ただ、よく語られる意味でのスピーカー楽器論には、いくつか言いたいことがある)

ここで、思い出してほしいことがある。
楽器には、基本的にクラシック用とかジャズ用とかはない、ということだ。
例えばピアノ。
スタインウェイにしてもベーゼンドルファーにしても、クラシック用、ジャズ用とかで売り出したりはしていない。

同じピアノを、クラシックの演奏家が弾けばクラシックを奏でるし、
ジャズのミュージシャンが弾くことでジャズがそこに存在することになる。

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