Date: 2月 28th, 2012
Cate: ワイドレンジ
Tags:

ワイドレンジ考(ジャズにとって、クラシックにとって・その5)

JBLでクラシックを聴くやつは、どこかおかしい、もしくはめずらしい、
というふうに受けとめられていた時代があったことを知る者にとっては、
「いまのJBLはジャズが鳴らない」「ジャズが鳴らないJBLなんて、JBLじゃない」、
こんなことを目にしたり耳にしたりすると、時代が変ったのか、それとも変っていないのか、とふと考えてしまう。

JBLは、いうまでもなくランシングがつくった会社である。
そしてJBL=ジャズという図式が出来上った(浸透した)のは、
実質的な最初のスピーカーユニットと呼べるD130の音が、
日本ではそう受けとめられたことから始まっている、といってもいいはず。

だがランシングは熱心なジャズの聴き手だったのだろうか。

以前、このブログでも取り上げたことのある「Why? JBL」(著者:左京純子、実業之日本社)には、
次のように書いてある。
     *
ランシングの趣味といえば、ゴルフをたしなむ程度で、そのほかのほとんどは、家の中で、書物を読みふけることを楽しみとしていた。好きなミュージックはクラシックで、ときにはダンスミュージックでダンスを楽しむこともあったという。
     *
この短い文章がランシングのすべてを語っているわけではないにしても、
ジャズという単語はここにはなく、好きな音楽としての、クラシックという単語がある。
クラシックだけを聴いていたのではないだろう、ジャズや他の音楽も聴いていたとは思う。
それでも、「Why? JBL」によれば、ジャズや他の音楽よりもクラシックを聴いていたことになる。

ということは、ランシングはD130でクラシックを鳴らし聴いていたわけだ。
そのD130を、日本のジャズ好きな人たちは、ジャズにぴったりのスピーカーユニットとして認識されていった。
なにもこのことをおかしい、とか間違っているとか、そんなことをいいたいのではない。
むしろ、ここのところにスピーカーの面白みがあって、
あえてスピーカー=楽器としてとらえるときの面白みでもある、とそう考えている。

Leave a Reply

 Name

 Mail

 Home

[Name and Mail is required. Mail won't be published.]