Date: 2月 27th, 2012
Cate: ワイドレンジ
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ワイドレンジ考(ジャズにとって、クラシックにとって・その4)

昔、といってもそんなに大昔のことではない。
JBLのスピーカーはジャズ向きであって、
クラシックの、とくに弦の音なんか聴けたものじゃない、といわれたこともあった。
そういう時代の中でも、JBLのスピーカーでクラシックを聴いている人(鳴らしている人)は少なからずいた。
瀬川先生がそうであったし、黒田先生もアポジーの前のアクースタットのその前はJBLの4343を鳴らされていた。

アルテックの昔のロゴには指揮者のシルエットが描かれていた。
トスカニーニがモデルだと言われていた。
そんなアルテックのスピーカーは、JBLのスピーカー同様、
日本ではジャズのためのスピーカーとして受けとめられることが多かった。

スピーカーとはいったいなんだろうか。
スピーカーは電気信号を振動に変換するモノである。
入力された信号をあますとこななく、つまり100%振動に変換できるのが理想なのだが、
実際には現在のスピーカーに関しては、どの方式であっても変換効率はかなり低い。
オーディオ用として使われているスピーカーの多くは10%前後の変換効率しかもたない。

そういうスピーカーで、われわれは音楽を聴いたり、
ときには細かな音の差に耳をそばだてたりしては、一喜一憂する。
もし変換効率が50%を超えるようになったら、どんな音が聴けるようになるのか、
そしてそのとき、音の違いは、いままでより明瞭に出てくるようになるであろう。
そんな期待はしているのだが、私がオーディオに興味を持ちはじめて30年以上が経っているが、
スピーカーの能率は高くなる傾向よりも、むしろやや下り気味の傾向が強いままである。

そんな低い変換効率であっても、スピーカーはほんのわずかな音の違いを鳴らしてくれる。
不思議な存在だとも思う。

だとしても10%程度の変換効率は、変換器としては低い、つまりは未熟なレベルということもできる。
しかも低い変換効率(入力信号の大半を熱にしている)の一方で、
どんなスピーカーにも固有音がつきまとう。
入力された電気信号の10%程度しか音にしないのに、入力信号とは別の音を出している。
振動板の分割振動によるものだったり、エンクロージュアの箱鳴り、フレームやエンクロージュア等からの不要輻射、
振動板がピストニックモーションして出てくる音が入力された電気信号が音に変換されたものとすれば、
それ以外の、スピーカーから放射しされる音はすべて、そのスピーカーの固有音である。

スピーカーにはずっとそういうことがついてまわっている。
だからなのか、スピーカーは楽器だ、ということが以前からいわれ続けている。

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