「ラジカセのデザイン!」(その2)
私が自分のモノとしたラジカセはモノーラルだっただけでなく、スピーカーもフルレンジだけだった。
そのころ2ウェイのラジカセは存在していたのだろうか。
もしあったとしても高価なラジカセだったろう。まだこのころはフルレンジが主流だった。口径も大きくなかった。
モノーラルでフルレンジのラジカセは、
私の世代にとって学生時代のパーソナルなオーディオ機器といえなくもなかった。
そういう世代はどのへんからどのへんまでなんだろうか。
ラジカセもしばらくするとステレオが当り前になっていったし、
スピーカーもフルレンジ1発からトゥイーターを加えた2ウェイが登場し、
量販店の店頭に並んでいるラジカセをパッと見た感じでは、2ウェイの方が多いように感じた時代もあった。
そして大型化していったようも感じている。
ラジカセがそんなふうに変っていったのには、いくつかの理由があるのだろうが、
ひとつにはソニーのウォークマンの登場も大きく関係しているように思える。
カセットを聴くためだけで、それもヘッドフォンのみ。そのかわり小型・軽量で手軽に持ち運べる。
外で音楽を聴くための道具としてのラジカセの役割は、ある程度ウォークマンにとって代られたのではないのか。
だからあれほど大型になっていった……。
これは、あくまでもラジカセへの興味をほとんど失っていた者が横目でちらちら見ていての感想にすぎないのだが、
モノーラル・フルレンジのラジカセを使っていた私などには、
ある時期のステレオ・マルチウェイの大型ラジカセは、大きすぎる物体であって、
中学生だった頃、目の前にラジカセをおいて、しんみりグラシェラ・スサーナの日本語の歌を聴いていた、
あの頃の心境には、なれそうにもないと感じてしまう。
たしかにステレオのラジカセが欲しい、と思っていた。
それはあくまでも、
そのとき使っていたラジカセより少し大きい程度でステレオになったモノが欲しかったのであって、
大きすぎるラジカセが欲しかったわけではない。
音量にしてもそうだった、ことを思い出す。
バカでかい音を出せていたわけではない。
だからラジカセを野外に持ち出してガンガン鳴らそうという発想はまったくなかった。
そんなふうにラジカセと接してきた。