Date: 1月 29th, 2012
Cate: 選択
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オーディオ機器との出逢い(その7)

そうやってオーディオ機器と出逢ったことは、幸運だったと思う。

「五味オーディオ教室」でタンノイ・オートグラフ、マッキントッシュMC275、EMT・930stと出逢ったときから、
実際にこれからのオーディオ機器に接し、その音を聴くまでには充分すぎる時間があった。
そのあいだ、何度も何度も「五味オーディオ教室」を読み返し、
オートグラフ、MC275、930stの音を、ではなく、
五味先生がこれらのオーディオ機器をとおして鳴らされている音を頭のなかでイメージしていっていた。

最初に読んだときの鮮烈なイメージを元に、
何度もくり返し読んでいくことと、ステレオサウンドを知って読んでいくことで、
最初に描いた(というよりも描かれた)イメージは、そのたびに更新されていく。

そしてステレオサウンドで働くようになって、
オーディオの体験がそれまでよりも飛躍的に量・質ともに大きく変化していったことで、
より細部まで頭のなかで構築されていく。

美化されていく、のとは違う。
より具体的なイメージとなっていった。
しかもそのイメージはそれまでの体験によって、より上へ上へと行く。
いつまでたっても追いつけないイメージが、私のうちに育っていく。

これは、もう夢の音なのかもしれない。
けれど、「五味オーディオ教室」を最初に読んだときからつねに私の中にあった、
この音のイメージがあったからこそ、
もっともっといい音が出せるはず、という気持になっていた。

オーディオなんてこんなものだろう、という気持は、だからまったくなかった。
絶対にあの音が、あそこまでの音が出るんだ、という確信も「五味オーディオ教室」を読んだときから芽生えていた。

だから、幸運だった。

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