Date: 12月 25th, 2011
Cate: 岩崎千明, 瀬川冬樹
Tags:

岩崎千明氏と瀬川冬樹氏のこと(その6)

ステレオサウンド 43号に載っている岡先生の文章は、最初に読んだとき以上にいま読み返すと胸にほんとうに響く。
     *
岩崎千明さんとふかいおつき合いできるという機会にはついに恵まれなかった。彼が、どんなにものすごい大音量で鳴らすかということも伝聞でしか知らない。しかし、どこで会っても、いつもにこにこしているけれど口数がすくない岩崎さんと大音量ということが、ぼくのイメージでは最後までむすびつかなかった。オーディオ仲間の撮影会でも二、三度一緒になったことがある。彼のとった写真は、そういう角度と構図の発想がよくもできるものだとおもわせるような雰囲気をもった抒情がただよっていて、びっくりするとともに、これも大音量とむすびつかないものだった。だから、ぼくの知っている限りの岩崎さんは、とてもセンシティブで心優しい感じだった。いつか彼のジープに乗せてもらったことがある。寒い冬の曇り日に吹きっさらしのジープで風を切ってぶっとばされて心身ともに凍りついてしまったのだけれど、そのとき運転している彼の表情をみていると、大音量で鳴らしているときもそんな顔をしているのだろうとおもった。岩崎さんの生甲斐をそこにかい間みた感じだった。岩崎さんとオーディオは心優しいひとが生甲斐のありたけを噴出させたような執念と壮烈さがあったとおもう。
     *
今日は、二度、岡先生の文章を読んだ。
読んだあとで書き写すときにもう一度読み、最後の数行、ほんとうにじーんと胸を打つものがあった。

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