オーディオと「ネットワーク」(編集について・その4)
サウンドステージでの仕事は正味一年足らずだった。
そのあいだにMacがClassic IIからQuadra950になってもキーボードは親指シフトのままだった。
まだPowerMacが出る直前のことだから、Quadra950が最も速いMacだったが、
それでも縦書きの文章中に出てくる二桁の数字や単位、たとえば18dBとかだが、
これらは時計方向に90度横向きになって、当時DTPソフトとして使っていたQuarkXPressでは表示される。
これを縦方向にすると一箇所直すたびに全画面を再描画する。
見開きにいくつもこれらがあると、その処理だけでもけっこうな時間がかかっていた。
たいへんなこともあったが、オーディオ関係の雑誌ではサウンドステージが、DTPの導入は最も早かったはずだ。
サウンドステージの仕事をやめて、自分で購入したMacは、中古のSE/30。
これを使っているとき、Expand Book Tool Kitという、電子書籍をつくるソフトが登場した。
このソフトがヴァージョンIIになったとき、五味先生の著書のエキスパンドブック化を、
仕事の後、毎晩こつこつ作業していた。1995年ごろのことだ。
この作業も、時間がかかった。
SE/30は、Expand Book Tool Kit IIの推奨環境を満たしていなかった。
だからどうにか動いてくれる、という感じでも、縦書きができルビもふれるし、カーニング(字詰め)も可能だった。
翌96年には、五味先生の著書「五味オーディオ教室」「オーディオ巡礼」「西方の音」「天の聲」の四冊を、
エキスパンドブックにし終えた。
五味先生の「五味オーディオ教室」を読んで20年が経っていた。
サウンドステージでのDTP、そして個人的につくったエキスパンドブック、
このふたつの作業をやって感じていたのは、
デジタル録音したものをアナログディスク(LP)にするのか、CDにするのか、に似た差違があるということだった。