オーディオと「ネットワーク」(編集について・その3)
私がステレオサウンドにいたあいだに、MacのSEが編集作業に使われることはなかった。
そのとき、Macで本をつくれるようになるなんて、夢想だにしなかった。
小さな録音スタジオでミキサーをやっていた友人から、
Macを買いなよ、と会うたびにいわれるようになってきたのは、1990年のおわりから91年にかけてのことだったか。
面白いぞ、楽しいぞ、と言われても、親指シフトキーボードは使えないんだろう、と返していた。
ある日、友人が一冊のムックの、あるページを開いて手渡した。
それのムックは、アスキーが発行していたMacPowerの1年間の総集編といえる内容で、
その年に出たハードウェア、ソフトウェアの新製品の記事をメインにまとめなおしたものだった。
そこに、Macで使える親指シフトキーボードの記事があった。
当時アスキーが発売していたキーボードだった。
親指シフト入力が可能なんだ、とわかっても、Macは高価だった。
すぐに購入できるものではなかった。
それでもMac関係の雑誌は買っていた。
MacPowerはその一冊であり、このMacPowerを買っていたおかげで、川崎先生の存在を知ることができた。
DTP(Desktop Publishing)ができることもわかってくる。
それからしばらくして、サウンドステージ(創刊当時はListen View)の編集に加わらないか、という話がきた。
そこで、MacによるDTPによる本づくりをやってみたら、と話したことから、
私のところにMacがきた。
Classic IIだった。モノクロ9インチのディスプレイの一体型のMac。
CPUは68030の16MHzで、メモリーは4M、ハードディスクは40MBだったと記憶している。
OSは漢字Talk6だった。漢字Talk7は遅れていた。
1992年のいまごろの季節だった、と思う、
借り物ではあったが、専用のMacでとうぜん親指シフトキーボードがつけてもらった。