ワイドレンジ考(その58)
GRFメモリーの登場・成功によって健在ぶりを示しはじめたタンノイは、
翌年ウェストミンスターとエジンバラを発表。
1983年にはスターリング、’86年には創立60周年を記念したモデル、RHRを出す。
名声を回復していくタンノイのラインナップから、バッキンガム、ウィンザーはいつのまにか消えていた。
オートグラフの思想を受けついだモデルであるはずなのに、短い寿命だった。
バッキンガムの後継機種は発表されなかった。
だからウェストミンスターが、現代版オートグラフとして認識されていったように思う。
’90年に、スタジオモニターとしてSystem 215が出る。
15インチの同軸型ユニットに同口径のウーファーを加えたものだが、これをバッキンガムの後継機種とは呼べない。
System 215は’93年にMKIIに改良されたが、地味な存在には変りはなかった。
’88年には、アルニコマグネットを復活させた同軸型ユニットを搭載したカンタベリー15と
カンタベリー12も出している。
’81年以降のタンノイの流れをみていると、バッキンガムの後継機種はもう現れないものと勝手に思っていた。
ところがキングダムが登場した。1996年のことだ。
キングダムこそ、バッキンガムに感じていた物足りなさを完全に払拭しただけではなく、
オートグラフの思想を受けついだ、しかもオートグラフと肩を並べることのできるスピーカーシステムが、
やっと登場してくれた、と思わせてくれた。
オートグラフの登場から43年かかって、キングダムは登場した。