BBCモニター考(余談・続×六 K+Hのこと)
コンシューマー用オーディオ機器で、FIR型デジタルフィルターの搭載をはっきりと謳ったのは、
パイオニアのC-AX10が最初、だと思う。
けれど最初に搭載していたオーディオ機器は、
おそらくNECの最初のCDプレーヤーだったCD803ではないだろうか。
マランツ、ソニー、オーレックス、トリオ、Lo-Dといったメーカーから少し遅れて登場してきたCD803は、
音の面で話題になった。
お世辞にもスマートとはいえない武骨な外観で、遅れて登場してきたとは思えないCD803は、
でも音を聴いてみると、遅れて登場してきただけの違いを聴かせてくれた。
CD803の音には、少なからず驚いたことを憶えている。
でも動作にはやや不安定なところもあった。
ディスクをセットして最初から再生するのはよかった、
スキップキーで次の曲を再生するのにも問題はなかったけれど、
10キーによる操作をすると、パソコンでいうフリーズみたいに、たびたび固まってしまうことがあった。
そうなるとどうにもできずに、電源スイッチを切ってもういちど入れると問題なく動作した。
そういう使い勝手の未消化な部分はあったものの、井上先生は、当時CD803を試聴に使われていた。
CD803はデジタルフィルターを搭載していることを謳っていた。
とはいえ、デジタルフィルターを搭載した最初のCDプレーヤーではない。
デジタルフィルターを最初に搭載したのは、マランツ(フィリップス)のCD63である。
このときすでに4倍オーバーサンプリングのデジタルフィルターSAA7210を搭載し、
ここでノイズシェーピングを行い、
16ビットのデジタル信号を14ビット動作のD/AコンバーターTDA1540で処理できるようにしていた。
CD63のデジタルフィルターはIIR型だったはずだ。
CD803のデジタルフィルターを、NECはND(ノン・ディレイ)フィルターと呼んでいた。
当時はどんなことをやっていたのかまったくわからなかったが、
10年くらい前に、どこかでCD803のデジタルフィルターはFIR型だった、と読んだ記憶がある。
CD803の次にFIR型のデジタルフィルターを搭載したCDプレーヤーには、
Lo-Dの初のセパレート型のDAD001がある。