五条件(その10)
信者、それも熱心な信者ほど視野狭窄になるようだ。少なくともオーディオに限って、そう言える。
視野狭窄になって、信じる、そのブランドの製品しかいいモノとは思えなくなるのは、信者にとってはシアワセなことだろう。
だから、よけいに自然と視野狭窄に進んでなっていくのか。
これも本人だけのことであれば、何も言うことはないのだが、そのブランドの製品を周りにも薦める。
しかも完璧、もしくは完璧に近いモノのように薦めてくる。
本当に完璧、完璧に近いモノであれば、新型や改良型が、そのブランドから登場するはずもないのに──、そんなことにも気づかないくらいに陥っている。
周りの人は、冷静に信者が薦める製品を見ている。良さもあれば、そうでないところもあるのを感じている。
けれど信者は違う。
視野狭窄になってしまっているために、逆に、そのブランドの製品の全てが見える(聴けている)とはいえない。
視野狭窄ゆえにいいところだけ、しかもそれもかなり狭い範囲でしか聴けなくなっていることを自覚していない。
それでは説得力を持たない言葉を力説するだけになる。
そして、誰もわかってくれない。
このブランドの良さがわかるのは私だけ、となるのかもしれない。
そうなった時に、同じく信者に出会えば意気投合する。固く結ばれる。
今はソーシャルメディアがあるから、昔と違って信者同士が繋がりやすい。一人が二人、三人、四人……、と増えていく。
そして彼らが集まれる「教会」を手に入れようとする。