Date: 9月 22nd, 2024
Cate: きく
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野口晴哉記念音楽室中秋会

10月20日、野口晴哉記念音楽室で、中秋会が開催される
5月の音楽鑑賞会のスピーカーは、シーメンスのオイロダインだったが、
今回の中秋会では、ウェスターン・エレクトリックの594Aを中心としたシステムとなる。

昨年5月とほぼ同じシステムだが、アンプがメンテナンスされている。
アナログプレーヤーも一部違うので、音も違ってくる。

「回想の野口晴哉 ─朴歯の下駄」に、こう記してある。
     *
 先生が亡くなる年の正月のこと……。
 夜、一人の見知らぬ男の人が訪ねて来た。
「スピーカーを買ってくれないか」ということだった。
 全く不思議なのは、そのスピーカーこそ、ウェスタン・エレクトリック594と、ランシングの先代が作ったという戦前のもの──先生が長い長い間、欲しくて手に入らなかったものだった。
「これで欲しいものが全部揃った。もう何も欲しいものがない」
 そういって、先生は微笑(みしょう)した。
 それは三十年間共に暮らして、一度も見たことのない微笑だった。
     *
野口晴哉氏にとって、ウェスターン・エレクトリックの594Aは、
ずっと憧れの存在だったのかもしれない。
野口晴哉氏は、594Aは、すでに所有されていたが、
残念なことに一本だけだった。
モノーラル再生でのみ、その音を聴かれていた。
おそらく、その音の浸透力は他のスピーカーのどれも敵わないものだったはずだ。

モノーラルでは聴ける。素晴らしい音で聴ける。
ならば594Aをペアで揃えてステレオて聴いたならば──。
オーディオマニアならば誰もそう思うはずだし、
野口晴哉氏もそうだったはずだ。
けれど594Aに限らずウェスターン・エレクトリックの製品は、お金があっても買えなかった。映画館をはじめとする劇場へのレンタルのみだったからだ。
1980年代に入り、商売になるとみた業者が増えたので、
お金を積めば買える時代が、一時期あったけれど、
野口晴哉氏の時代はそうではなかったからこそ、
《微笑(みしょう)》されたのだろう。

昨年の音楽鑑賞会で鳴っていたのは、594Aを中心としたシステムだったが、本領発揮とはいえなかった。
理由はいくつもあるが、一つ挙げると電源の問題がある。
594Aは、永久磁石ではなく電磁石によって動作する。
そのための電源を必要とするわけだが、
この電源のクォリティによって594Aの音は大きく変化する。

野口晴哉氏はセレン整流器による電源を使われていた。
モノーラルで鳴らされていた時のモノのはず。
だからすでに作られてから五十年以上経っている。

去年の音を聴いた時から、電源の出力電圧が低下しているのでは……、
そんなふうに感じていた。
先日、電源電圧をチェックしたところ、
25V必要なのに14.5Vと、四割も低い値だった。
だからといってセレン整流器の電源を修理することは、
今の時代、ほぼ無理といえる。

新しい電源、594Aに相応しい電源を用意しなければならないが、
容易くはない。時間もかかる。

今回はスイッチング電源を使う。
594Aにそんな電源を、言われるだろうが、
まずは594Aを規定の電圧で鳴らす。ここから始めていく。
野口晴哉氏が描かれていたであろう594Aの音を実現する。今回は、その一歩目の音である。

上記リンクをクリックすれば詳細が表示される。
今回、私は裏方で、594Aの音を去年よりも良く鳴らしたい、
そのことだけをやる。

とは言え、まだ594Aをスイチッング電源での音は聴いていない。

野口晴哉氏は1976年6月に亡くなられている。
だから没後五十年の2026年までには、納得のいく音に仕上げたいと考えている。
その意味での、「一歩目の音」だ。

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