純度と熟度(と狂気)
1970年代のオーディオを、それも若い時に体験してきた者にとって、
狂気は、あの時代のオーディオを語るキーワードになるだろうし、
狂気を感じさせる音というのに、ある種憧れがあってもおかしくない。
もちろん全員がそうだとはいわないが、
何割かは確実にそうであるはず、と私は思っているし、
だからこそ話が合うということも、もちろんある。
狂気を感じさせる音といっても、それは人によって違ってきて当然でもある。
本人はそう思って出している音が、別の人にとってはなんでもない音であったり、
もしかすると反対の場合もあるだろう。
それでも最近聴いた音で感じたことは、
劣情をむき出しにした音は、狂気を感じさせる音とは、
まったく違うということ。
それは恥ずかしい、愚かしい音でしかないと私は思うけれど、
そういう音を恥ずかしげもなく人に聴かせることができるというなのは、
どこか頭のネジが外れてしまっているわけで、
その意味では、狂気を感じさせる音といえなくもない──、そんな考え方もできるけど、やはり本質的に違う。