ナロウレンジ考(その19)
5月のaudio wednesdayでウェスターン・エレクトリックの757Aを聴いていて、
ふと100Fのことも思い出していた。
(その3)で書いたことを、引用しておく。
ステレオサウンドの取材で出合ったのがウェスターン・エレクトリックの100Fである。
裏板の銘板には、LOUD SPEAKER SET、とあるとおりアンプ内蔵の、いわゆるパワードスピーカーだ。
100Fは、電話交換手のモニター用としてつくられたもの、ときいている。
見た目は古めかしい。
最初見た時は、こんなものもウェスターン・エレクトリックか……と思ったぐらいだから、
正直、あなどっていた。
記憶に間違いがなければ、たしかBGMを鳴らすときに100Fを使われた。
だから音量は小さめ、電話交換手のモニター用だから、
人の声(会話)が明瞭に聞こえることを目的として開発されたものだろうから、ワイドレンジではない。
せいぜい上は4〜5kHzぐらいまでか。下は100Hzぐらいであろう。
内蔵アンプも、電源トランスを排除しコストを抑えた設計・構造。
それなのに、耳(というよりも意識)は、100Fの方を向いていた。
私がハタチぐらいのころ、100Fを聴いている。
四谷三丁目にあった喫茶茶会記にも100Fはあったし、鳴っていた。
100Fという型番からもわかるように、100Aから100Fまである。
スピーカーユニットは5インチで、AからEまではフィールド型で、
Fのみがアルニコ磁石になっている。
私が聴いたのは100Fのみ。
その100Fの音を、757Aを聴いていて思い出していた。
100Fはモノーラルでしか聴いていない。
これをステレオで鳴らしたら(聴いたら)と当時は思っていた。
そして、このままスケールアップした音は得られないのだろうか、とも。
757Aは、私にとって100Fの音をいろんな意味でスケールアップした音に聴こえた。