挑発するディスク(その18)
この項では、
カザルス指揮マールボロ音楽祭管弦楽団によるベートーヴェンの第七番について書いている。
国内盤のLPで聴いたのが最初だった。
そのすさまじさに圧倒された。
それからさまざまな音で聴いてきた。
LPもドイツ盤も買ってみたし、CDになってからもいくつか買ってきている。
それでも、国内盤LPを、
ノイマンのカートリッジDSTをトーレンスの101 Limitedに取りつけて聴いた音、
この時の音を超えることはできない──、そんなふうな諦めが私のなかでは育っていっていた。
DSTでの音は、ステレオサウンドの試聴室でも何度か聴いているし、
幸運なことに一ヵ月ほど借りることができ、自分のシステムでも聴いている。
DSTを、カザルスのベートーヴェンの七番をかけるためだけに欲しい、
と真剣に思っていたけれど、当時、いったいいくらで買えたのかは訊く気にもならなかった。
MQAで聴けるようになってから、少し可能性を感じてもいた。
4月3日のaudio wednesdayでは、第四楽章をかけた。
冒頭の音が鳴ってきた瞬間、ここまで来た! と感慨にひたっていた。
ここから新たな挑発がうまれてくるのかどうか──。