audio wednesday (next decade) – 第一夜・コンデンサー型スピーカーへの憧れ(その1)
コンデンサー型スピーカーに、いちどは憧れるものだろう。
私はそうだった。
オーディオに興味を持ち始めたころ、
コンデンサー型スピーカーといえばQUADのESLとスタックスの製品ぐらいだった。
その少しあとに、アメリカからアクースタットが登場した。
コンデンサー型スピーカーの動作原理以上に、
コンデンサー型スピーカーに惹かれたのは、その音だった。
とはいえ当時、すぐにコンデンサー型スピーカーの音を聴けたわけではない。
あくまでもオーディオ雑誌に載るコンデンサー型スピーカーの評価を読んでのものだった。
ステレオサウンド 43号で、瀬川先生はこう書かれていた。
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いまのところは置き場所がないから考えないが、もしも製造中止になるというような噂をチラとでも耳にしたら、すぐにでもひと組購入するぞ、と宣言してある。部屋や置き方や組み合わせなど条件を整えて聴くときのQUAD・ESLのみずみずしい音質は実にチャーミングだ。最適位置にぴたりと坐ったが最後、眼前に展開する一種独特のクリアーな音像の魅力から抜け出すことが難しくなる。このデザインの似合う部屋が欲しい!
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当時読んだESL評のすべてを引用はしないが、他にもいくつもあって、
そのどれもがESLならではの魅力を伝えてくれていた。
いったいどんな音なのか。その音を想像するだけで楽しかった。
けれど、なかなか聴く機会は得られなかった。