新製品(その23)
新製品とひと括りにしても、大きくわけて二つの種類の新製品があるといえる。
ひとつは、まったくの新製品である。
もうひとつは、改良モデルとしての新製品である。
どちらかであっても、新製品を聴く(ふれる)のは楽しい。
そうであっても、期待するところとなると、まったく同じなわけではない。
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一つのものが、時間をかけて、愛情をもって練り上げられると、不思議に、そのものの個性が磨きをかけられて、強い主張として、見る者、触れる者に訴えかけてくるものである。このAU-D907リミテッドには、そうした熟成した魅力がある。例えは悪いかもしれないが、新製品にはどこかよそよそしい、床屋へ行きたての頭を見るようなところがある。きれいに整ってはいるが、どこか、しっくりこないあれだ。AU-D907リミテッドにはそれがない。刈ってから一~二週間たって自然に馴染んだ髪型を見るような趣きをもっている。中味を知って、音を聴けば、一層、その観が深まるであろう。
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菅野先生が、ステレオサウンド 53号の特集「ステート・オブ・ジ・アート」で、
サンスイのプリメインアンプ、AU-D907 Limitedについて書かれた文章からの引用だ。
それまでの型番の末尾に、MK2とかAとかがつく改良モデルとしての新製品。
従来モデルを使っている人が期待するのは、ここのところが大きいはずだ。
従来モデルを使っていない人、関心もあまりなかった人にとっては、
まったくの新製品としての位置づけになるだろうし、
その新製品への期待は、他の新製品への期待と同じだろうが、
従来モデルを使っている人、特に愛用している人は、
《自然に馴染んだ髪型を見るような趣き》を求めてのもののはずだし、
それに応えてくれる新製品(改良モデル)は、これまでどのくらいあっただろうか、
そしてこれから、どのくらい登場してくるのだろうか。