オーディオ雑誌と広告(その5)
広告も一切なし、
試聴機器もすべて購入してのオーディオ雑誌は、資金が潤沢であれば無理ではない。
総テストのような特集はやらずに、注目の機種を徹底的に取り上げるという内容であれば、
毎号あたりの機器の購入費用も、ある程度は抑えられよう。
そうやって工夫しながら、広告なし、すべて購入のオーディオ雑誌ができあがったとする。
一冊いくらになるのか。
きちんと計算したことはないが、一万円は軽くこえるであろう。
もっと高くなるとも思っている。
それでも、そういうオーディオ雑誌ならば読みたい、という人はきっといる。
そういう人だけを相手にして出版するのであれば、持続可能になるかもしれない。
でも、そんなオーディオ雑誌が実現したとして、
私が真っ先に思うのは、中学生、高校生の私は買えない、ということだ。
小遣いをやりくりして、レコードを買ったり、
ステレオサウンドを始めとするオーディオ雑誌を、あのころは買っていた。
それはまだステレオサウンドが一冊1,600円、
ほかのオーディオ雑誌が、500〜700円程度だったからである。
それでも毎号、すべてのオーディオ雑誌、聴きたいレコードが買えたわけではない。
ほんとうの意味での広告なしのオーディオ雑誌、
それは広告の入っているオーディオ雑誌なんて──、という人にとっては、
理想の、理想に近いオーディオ雑誌といえるかもしれないが、
オーディオに関心・興味を持ち始めばかりの若い人にとって、
そういえるだろうか。
一見、理想におもえるオーディオ雑誌があったとして、
オーディオの世界は発展していくだろうか。