オーディオ雑誌と広告(その4)
暮しの手帖のオーディオ版をやりたい、と考えた人はこれまでにもいる。
私も知っている。
そういうのをやりたいから一緒にやりましょう、と誘われたことがある。
けれど話をきいてみると、都合のいい話だった。
メーカーや輸入元から製品を借りて、暮しの手帖のオーディオ版をやる、というものだった。
暮しの手帖のオーディオ版をやりたいのであれば、
試聴器材はすべて購入する、ということである。
それがどれだけ大変なことは、すぐにわかる。
掃除機や洗濯機を購入してテストするのとでは予算の桁が違ってくる。
ステレオサウンドの最新号でも古い号でもいい。
その号の誌面に登場するオーディオ機器の定価をすべて足してみる。
アンプやスピーカーの総テストともなると、その額はさらに大きくなる。
それに購入したオーディオ機器を保管するためには、それだけのスペースが必要になる。
しかも暮しの手帖のオーディオ版では広告なしなのだから、
これらの経費はすべて本の売上げでまかなうことになるし、
本の価格にも直接に関係してくる。
それこそ特集の内容次第で、定価が変ることだろう。
総テストの号は高くなって、試聴を必要としない特集の号は安くなる、というようにだ。
「オーディオ大全2021」は広告一切なしを謳っているが、
「オーディオ大全2021」の価格で、
誌面に登場しているオーディオ機器を購入しているとは考えられない。
メーカーや輸入元から試聴記を借りているはずである。
このことは間接的な広告といえる。
「オーディオ大全2021」は、いわば入門書である。
だから、「オーディオ大全2021」を買おうかな、と考える人は、
オーディオに興味を持ち始めたばかりの人なのだから、
「広告一切なし」という謳い文句に騙されるかもしれない。
広告は「オーディオ大全2021」にはない。
けれど、目に見える広告がないだけであって、目に見えない「広告」がないわけではない。