MQAで聴けるベートーヴェン 交響曲全集(その5)
CDであろうと、ファイル配信であろうと、
クリュイタンスのベートーヴェン全集が売れているのは、嬉しいことである。
嬉しいのは確かなんだけれども、
MQAで聴いていると、以前との印象に違いあるような気がしてならない。
昔聴いたのは、随分前だし、四番と八番を聴いているだけだ。
今回はすべて聴いている。
システムも違っている。
違っているところが多すぎるうえに、
記憶のうえでの比較なのだからあてにならない、と自分でも思うのだが、
MQAで聴くクリュイタンスのベートーヴェンは、思っていた以上に聴き応えがある。
昔聴いた印象では、なぜベルリンフィルハーモニーが、
カラヤンではなくクリュイタンスを、初の全集録音の指揮者に指名したのか。
その理由が、聴いているだけでは掴めなかった。
今回聴いて、はっりきと掴めた、とまではいわないが、
わかるような気はしてくる。
昔とは、リマスターされているかどうかの違いが大きいのか。
別項で書いたカルロス・クライバーのシューベルトもそうなのだが、
MQAだと、音がいいとか、いままで聴きとれなかった音が聴こえるとか、
そういうことではなくて、音楽の表情が豊かになる。
ここは、こんな表情をしていたのか、という発見が、
さんざん聴いたレコードなのに、ある。
クリュイタンスのベートーヴェンに関しては、CDボックスを買ってきて、
極力試聴条件を等しくして聴いてみれば、もっとはっきりとしたことがいえるようになるはず。
それをやるのもいいけれど、いまはもっともっとMQAで、
ベートーヴェンを聴いていくほうを優先したい。