ベートーヴェン ピアノ協奏曲全集(その4)
聴くのが少し怖い、というディスクは、
誰かのところで聴くのがそうだということではなく、
自分のシステムで鳴らすのが怖い、という意味である。
人によって、それは違ってくるだろうが、私にとっては、
聴くのが怖いディスク・イコール・自分のシステムで鳴らすのが怖いディスクである。
といっても、そんなに怖いディスクが何枚もあるわけではない。
かなり少ない。
その少ない一枚が、
児玉麻里(ピアノ)、ケント・ナガノ/ベルリン・ドイツ交響楽団による
ベートーヴェンのピアノ協奏曲第一番である。
その理由は、菅野先生のリスニングルームで聴いているからである。
その時の音が、十年以上経っても、鮮明に残っている。
残っているのは、その時の経験そのものであり、感動である。
「まさしくベートーヴェンなんだよ」、
菅野先生のことばは、まさしくそうだった。
すでに書いているように、同じCDが発売になったので買った。
もちろん菅野先生の音と私の音とでは大きく違うのだから、
同じようにはならないのはわかっている。
それが怖かったわけではない。
怖かったのは、今回のSACDでのベートーヴェンのピアノ協奏曲全集である。
昨年12月に発売になった。
ほぼ同時に手に入れながら、つい先日まで封も切らなかった。
菅野先生のところで聴いたのは通常のCDである。
その時はSACDはなかった。
今回はSACDである。
SACDで鳴らすことが怖かった。