カセットテープとラジカセ、その音と聴き方(余談・その9)
ヤマハのカセットデッキといえば、私にとってはTC800GLである。
マリオ・ベリーニのデザインのカセットデッキは、
中学生の私でも、
他のカセットデッキとははっきりと違うデザインということはわかった。
マリオ・ベリーニはMario Belliniである。
ずいぶん後になって気づくのだが、
作曲家ヴィンチェンツォ・ベルリーニはVincenzo Belliniであり、
カタカナ表記は少し違うものの、二人ともBelliniである。
遠縁だったりするのだろうか。
TC800GLは、類型的になりがちなカセットデッキにおいて、
とにかく光っていた。
似た形態のナカミチのデッキも存在していたけれど、TC800GLは光っていた。
このころのヤマハのカセットデッキの型番はTCから始まっていた。
それがKから始まる型番に変った。
その一号機がK1だったはずだ。
TC800GLからは様変りした。
類型的になったわけだが、それでもヤマハのオーディオ機器らしいパネルである。
目立つことはないし、地味な印象を持っていた。
それにヤマハのカセットデッキの最上級機であるのに、
十万円を切る価格は、優れた製品がほどほどの価格で買えるのはありがたいことなのに、
なんとなく中級機どまりの印象もあったりした。
ヤマハのセパレートアンプ、プリメインアンプはもっと価格帯が上であった。
メカニズム、録音アンプ、再生アンプなどから構成されるカセットデッキが、
これだけの価格ということは、どこかでうまくコストダウンしているに違いない──、
そんなことを思ったりもした。
そんな印象を勝手にもっていただけに、瀬川先生のリスニングルームにも、
菅野先生のリスニングルームにも、K1aかK1dがあることは、ちょっとした驚きだった。