老いとオーディオ(長生きする才能・その1)
五味先生の「私の好きな演奏家たち」からの引用だ。
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近頃私は、自分の死期を想うことが多いためか、長生きする才能というものは断乎としてあると考えるようになった。早世はごく稀な天才を除いて、たったそれだけの才能だ。勿論いたずらに馬齢のみ重ね、才能の涸渇しているのもわきまえず勿体ぶる連中はどこの社会にもいるだろう。ほっとけばいい。長生きしなければ成し遂げられぬ仕事が此の世にはあることを、この歳になって私は覚っている。それは又、愚者の多すぎる世間へのもっとも痛快な勝利でありアイロニーでもあることを。生きねばならない。私のように才能乏しいものは猶更、生きのびねばならない。そう思う。
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《生きねばならない》、
《生きのびねばならない》とある。
長生きする才能とは、生き延びることなのか。
生き延びるとは……、と考えると、
生き残る、生き続けるの違いについて思うようになる。
生き残る才能、生き続ける才能は、同じようでいて、同じなわけではない。
二つをひっくるめての生き延びる才能なのか。
そんなことを考えていると、そういえば、生き抜くもあることに気づく。