「複雑な幼稚性」が生む「物分りのいい人」(その8)
試聴記とは、聴いた音の解釈であるべきだし、
単なる印象記であっては、読む側からするとまったくつまらない。
オーディオ評論家(職能家、商売屋どちらであっても)であるのなら、
レベルの高低はあろうが、どう解釈したかが読む側に伝わってこなければ、
素人の印象記と同じでしかない。
だからこそ試聴記は、一人の場合もあるが、二人もしくはそれ以上の場合もあるわけだ。
今回のステレオサウンドの特集では、
49モデルのスピーカーシステムを三つのグループに、価格で分けている。
ペア価格が420,000円から1,300,000円のスピーカーシステムのグループを、
さらに80万円以下と80万円超とに分け、前者を山本浩司氏、後者を和田博巳氏が担当。
ペア価格が1,440,000円から2,800,000円のグループを、傅信幸氏と三浦孝仁氏が、
それ以上の2,970,000円から5,980,000円のグループを、柳沢功力氏と小野寺弘滋氏が担当。
山本氏と和田氏は、だから単独試聴である。
山本氏と和田氏の、試聴器材(アンプやCDプレーヤーなど)は同じだ。
だからもしかすると、山本氏と和田氏は、もともと一緒の試聴を行う予定だったのが、
スケジュールの都合で、別々に行うことになったのかもしれない。
傅氏、三浦氏担当が17モデル、柳沢氏、小野寺氏担当が12モデル、
計19モデルは、二人分の試聴記が載っている。
207号掲載の試聴記が、それぞれの解釈といえるかどうについては、ここでは触れない。
ここでのテーマからは逸れてしまうからで、
私はそれもいいかもと思うけれど、ここでもっとも書きたいことが後回しになってしまうのは避けたい。
ステレオサウンドだけに限らない、
オーディオ雑誌では、試聴記は一人のこともあるが、二人以上のことのほうが多い。