新製品(その17)
オーディオマニアを自認している人であっても、
製品にまったく興味がない、という人もいるようだ。
どんな理由から、新製品に興味がないのだろうか。
新製品に興味をもたない人人からすれば、
新製品につねにワクワクしている人は、なぜ、あんなに興味をもてるのか──、
そう見られている。
ステレオサウンド 58号、
「タンノイ研究(4)」で菅野先生が最後に、こう書かれている。
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タンノイをこうしてずっと聴いていると、タンノイの世界に入り切り、しばらく他の音を聴きたくないという気持になる。聴いている音に満足させられているという証拠であると同時に、他のスピーカーを聴いて、もし、そっちのほうがよかったら、今の幸せが壊れてしまうという恐しさなのである。
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いま聴いている音に満足しているのであれば、新製品に興味はわかないものか。
確かに不満があれば、
不満とまでいかなくても、もう少し……という気持がどこかにあるからこそ、
新製品、もしくは他のアンプなりスピーカーが気になる、とはいえる。
菅野先生は《聴いている音に満足させられているという証拠》と書かれている。
聴いている音に満足している証拠、ではない。
満足させられているから、《今の幸せが壊れてしまうという恐しさ》を感じてしまうのか。
聴いている音に満足しているのか、満足させられているのか。
いま鳴っている音に満足しているから──、という人でも、
満足しているのか、満足させられているのか、
その違いに気づいていないことだってある。
だからこそ、菅野先生はつづけて、
《こういう気持にさせてくれるスピーカーの存在は貴重である》とされている。