とんかつと昭和とオーディオ(その6)
BRUTUS 852号のとんかつ特集「とんかつに、明治からの歴史あり。」によれば、
とんかつの元祖といえるポークカツレツは、
銀座の洋食店・煉瓦亭の創業者の木田元次郎氏が、
ヨーロッパで食べられていた仔牛肉のコートレットにヒントを得たもの、とのこと。
明治32年に、ポークカツレツが誕生している。
当初のポークカツレツは、温野菜を添えていて、デミグラスソースだったそうだ。
日露戦争の時期に入手不足になったこともあり、
キャベツのぶつ切りに、その後、千切りへとなっている。
そのころデミグラスソースがウスターソースへ、となり、
パンではなく白い飯を出すようになり、それが現在のポークカツレツである。
BRUTUS 852号には「あの町の、とんかつ」で、
神戸のとんかつも紹介している。
ここに登場するのは、デミグラスソースがかかっている。
添えてあるのは、甘藍の千切りのところもあれば、そうでないところもある。
神戸のとんかつ、と書いてしまったが、
神戸のは、日露戦争以前のポークカツレツであり、
いまのとんかつの元祖となる日露戦争後のポークカツレツではない。
伊藤先生は、この事実を何といわれただろうか。
デミグラスソースのポークカツレツは、これまで何度か、
美味しいといわれている店のいくつかで食べたことはある。
不味いとは思わないけれど、とんかつに似ているけれど、
とんかつとは明らかに違う食べもののように感じた。
伊藤先生が《ラーメンと共に日本人に好かれる食いもの》とされるとんかつは、
甘藍の千切りとウスターソースがよく合うものこそ、である。