Date: 8月 27th, 2017
Cate: 対称性
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対称性(その9)

ステレオサウンド 41号掲載の「瀬川冬樹の語るプレーヤーシステムにおける操作性の急所」で、
B&Oのアナログプレーヤーの操作性について触れられている。
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 たとえばターンテーブルの形状についていえば、B&Oのベオグラムのように、いわゆるモーターボード(フレーム)とターンテーブルがほとんど面一(ツライチ)の状態にあるものは、レコードを真上から掬いとるような形で持っていくような状態でレコードをかけかえるようになる。少なくともそういう操作をしろということを、機械のデザインが暗に指示するわけです。それ以外の方法では扱いにくい。本質論からいうと、レコードのかけかえというのはどんな手くせの人が、どんな手つきでかけかえようとしてもやりやすいのが一番いいわけで、B&Oなんかは、少し理屈っぽくいえば、あるひとつの姿勢を、そういう手くせじゃない人にも強いるわけだから、そういう意味で本当に客観的に完璧とはいいにくいんです。
 ただ一般的には、ヨーロッパの機械に対する考え方には、ひとつの扱い方を、それを扱う人間に徹底して体にしみ込ませるように指示するというところがあるんですね。たとえばハッセルブラッドなんていとうカメラは、やはりひとつの手くせを自分の手に覚え込ませないと扱いにくい。逆に、ひとつの手くせが自分の習慣のようになると、大変扱いやすい。どうもヨーロッパの機械の設計の伝統の中にそういうことがあるわけです。
 その反対に、アメリカあたりから出てきたいわゆるフールプルーフという考え方は、いろんな手くせの人がどんな使い方をしても扱いやすいという設計ですね。ところが、それをやると今度はすごい無個性なものができる怖れがある。どちらがいいかは別として、設計の思想には二つの基本的な姿勢があるということです。
 ですからB&Oのタイプはひとつの手くせを覚え込まないと扱いにくいけれども、それが身にしみ込んでしまえば扱いやすい。しかし、B&Oに一見似て、ターンテーブルが非常に薄くデザインされているために、レコードのかけかえにひとつの姿勢を強いながら、その姿勢でやってみても扱いにくいという機械が中にはあるんです。これは人間工学的に問題外ですね。そういうところを見分ける必要がある。
 もうひとつの手くせに、プレーヤーの正面からほとんど手を前に並えするような形でレコードをかけかえる方法がある。この形でレコードを持っていってそのつまかけかえる場合には、ある程度ターンテーブルが高い設計の方がかけやすい。このときによく考えられたプレーヤーは、ターンテーブルの直径と、シートの直径・形状がうまく選ばれていて、持っていった手が30センチレコードの一番外側のふちに自然にかかるようになっている。これが、レコードのふちよりもシートやターンテーブルの径が大きいとかけかえにくいわけです。ここは絶妙な寸法が当然あるわけなんだけれど、ターンテーブルの高さも問題になります。
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確かにB&OのBeogramシリーズは、両中指の先でレコードをすくいとるような形で、かけかえる。
ここで比較対象としているEMTの930stは、というと、Beogramとは違う形状をしている。
モーターボード(メインデッキ)とターンテーブルは面一ではない。
ターンテーブルはフレームデッキよりも高い位置にある。

ならば、前に並え的なレコードのかけかえができるのかというと、そうではない。
プレクシグラスにフェルトを貼ったサブターンテーブルの直径は、
周囲にストロボスコープのパターンがあるため33cm。
しかもターンテーブルの周囲は、フレームデッキが盛り上っている。

930stの真上からの写真をみればわかるが、
ターンテーブルとトーンアーム、カートリッジとの間に、それほどスペースがない。
加えてサブターンテーブルの大きさがあるから、
Beogramとは大きく違う形状であり、フールプルーフに属するような形状でありながらも、
レコードのかけかえは、B&Oと同じで、ひとつの手くせを指示する。

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