オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ヤマハのA1・その12)
ステレオサウンド44号と、そのころ読んでいたFM誌の広告で、ヤマハのA1の登場を知った。
49号のヤマハの広告までの一年ちょっとのあいだに、A1の実機をオーディオ店で見ている。
少しがっかりしたことは、(その6)に書いた通りだ。
その理由のひとつに、三つの正方形のプッシュボタンの精度感のなさである。
私が見た実機は電源が入っていなかった。
灯っていない正方形のプッシュボタンは、色気がなかっただけでなく、
明らかにA1のデザインの魅力を半減させていた。
このころのテレビは、まだブラウン管だった。
液晶のテレビはなかった。
テレビ好きだけど、電源を入れていない状態のブラウン管の色は嫌いだった。
黒ではなかった。
灰色に緑色が混じっている、とでもいうのか、どんよりした陰気くさい感じが、
たまらなくイヤで、だからテレビでのスイッチをオンにしてしまう、
そんな感じさえ受けていた。
ヤマハのA1のブッシュボタンも、それに近い印象を受けた。
実は、この点がマッキントッシュのアンプとの小さからぬ違いだと思っている。
マッキントッシュのアンプも、電源を入れていない状態より入れた方がずっと魅力的なのは当然としても、
電源を入れられるのを持っているかのような感じがするのに対し、
ヤマハのA1は自らの出番を待っているというよりも、後に下がってしまったかのようにも、
少しオーバーに表現すれば、そんな感じだった。
49号のヤマハの広告を先に読んでいれば、
プッシュボタンが灯った状態を見るまで保留しておこう、という考えもおきただろうが、
まだ10代の若造で、そこまで考えも及ばなかった。