使いこなしのこと(ステレオゆえの難しさ・その3)
モノーラル再生(スピーカーシステムは一本)であれば、
スピーカーの真正面の音を聴く。
ステレオ再生の場合はどうかというと、二本のスピーカーから等距離の位置で聴くわけだが、
スピーカーの真正面の音とは必ずしもいえない。
二本のスピーカーと聴き手との位置関係が正三角形の場合、
スピーカーを60度の角度をつけていれば、スピーカーの真正面の音を聴いているいえる。
けれどスピーカーの振りは音に影響するわけで、
設置環境によってはほとんど振らない場合もあるし、60度以上振ることだってある。
正面の音を聴いているわけだが、真正面の音というわけではない。
それでもスピーカーの特性としては、ほとんどの場合、保証されている範囲であり、
いわゆる周波数特性的には問題となることは生じない。
けれどほとんどのスピーカーシステムには奥行きがある。
つまりエンクロージュアの奥行きがあるわけだ。
エンクロージュアの奥行き、いいかたをかえればエンクロージュアの側面である。
世の中に無共振のモノは存在していないわけだから、
エンクロージュアのあらゆる個所から音が出ている。
スピーカーユニットからの音、フレームからの音、エンクロージュアからの音、
それらすべてをふくめて、そのスピーカーシステムの音となるわけだが、
スピーカーの振りによって何が大きく変化するかといえば、
エンクロージュア側面から出てくる音と、正面からの音のまざり具合である。
スピーカーをまったく振らない状態では、
聴取位置からはスピーカーの内側の側面が見える。
60度の振りの場合は、側面はほとんど見えなくなる。
60度をこえて振れば、外側の側面が見えてくる。