Date: 11月 29th, 2016
Cate: ベートーヴェン
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ベートーヴェンの「第九」(その14)

ベートーヴェンの前に出ていた、ウィーンフィルハーモニーとのブラームスも素晴らしかった。
だからベルリンフィルハーモニーとのベートーヴェンも期待していた。
期待していたからこそ、無理をしてでもCDと聴くためのポータブルCDを購った。

ソニーのポータブルCDだった。
質屋にあったくらいだから最新機種でもなく、普及クラスの型落ちモデルである。
どんな音なのかはまったく期待していなかったし、その通りの音しかしてこなかった。
それでも、聴いていて涙がとまらなかった。

男は成人したら、涙を流していいのは感動したときだけだ、と決めていた。
つらかろうが、くやしかろうが、涙は流さないのが大人の男だと思っていた。

こんなにも涙は出るものか、と思うほどだった。
一楽章がおわり、二楽章、三楽章と聴いて、四楽章。
バリトンの独唱がはじまると、もっと涙が出た。

大切なもの、大事にしてきたものがほとんどなくなってしまった狭い部屋で、
ひとりでいた。ひとりできいていた。

音楽を聴いてきてよかった、と思った。
ベートーヴェンを聴いてきてよかった、とも思っていた。

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