AXIOM 80について書いておきたい(その6)
AXIOM 80は毒を持っているスピーカーだ、と書いた。
その毒を、音の美に転換したのが、何度も引用しているが、
《AXIOM80の本ものの音──あくまでもふっくらと繊細で、エレガントで、透明で、やさしく、そしてえもいわれぬ色香の匂う艶やかな魅力──》
であると解釈している。
20代の瀬川先生が転換した音である。
心に近い音。
今年になって何度か書いている。
心に近い音とは、毒の部分を転換した音の美のように思っている。
聖人君子は、私の周りにはいない。
私自身が聖人君子からほど遠いところにいるからともいえようが、
愚かさ、醜さ……、そういった毒を裡に持たない人がいるとは思えない。
私の裡にはあるし、友人のなかにもあるだろう。
瀬川先生の裡にもあったはずだ。
裡にある毒と共鳴する毒をもつスピーカーが、
どこかにあるはずだ。
互いの毒が共鳴するからこそ、音の美に転換できるのではないだろうか。
その音こそが、心に近い音のはずだ。