第68回audio sharing例会のお知らせ(柔の追求・その5)
ESSから単体で発売されていたハイルドライバーはいくつかあった。
1979年ごろはHS400とHS600があった。
HS400は振動板前面にホーンがついている。
再生周波数特性はHS400が1.5kHz以上、HS600が2.5kHz以上となっていた。
これらの外形寸法は当時のHI-FI STEREO GUIDEには載っていない。
面白いのは出力音圧レベルと最大入力の項目で、STUDIOとPA-DISCO、ふたつの値が記してある。
PA-DISCOの最大入力は50Wと、STUDIOの30Wよりも高い。
反面出力音圧レベルは、98dB/W/mと3dB低い。
ハイルドライバーとしてスピーカーの技術解説書に載っているそのものの製品は、
1980年に登場したAMT Heil Driverである。
このモデルは800Hz以上から使え、出力音圧レベルは103dB/W/m。
このモデルにはPA-DISCOモデルはなかったようだ。
形状的にも、日本でハイルドライバーと呼ばれているモノは、AMT Heil Driverといっていい。
このトゥイーターの外形寸法はW17.2×H15.4×D10.7cm。
現在のAMTと呼ばれるユニットと比較して大きく違うのは奥行きである。
現在の多くのAMT(ムンドルフの製品もそうだが)、薄い。
ドーム型トゥイーターよりも薄いと思えるくらいにだ。
動作原理は同じでも、AMT Heil Driverと薄型のAMTとでは磁気回路の構成が大きく違う。
そのことによってAMT Heil Driverは振動板の後方からも音を出すダイボール型だが、
現在の多くのAMTは背面を塞ぐ構造になっている。
この構造の違いが、同じ面積の振動板であっても、
低域の再生能力に違いを生じる、とのことである。
つまりAMT Heil Driverのようにダイボール型にしたほうが低域レンジは下にのびる。
やはりオリジナルのAMT Heil Driverが構造的には優れているといえそうだが、
でもAMT Heil Driverの構造のままでは、現在のように多くのスピーカーシステムに、
AMTが採用されることはなかったのではないか。
振動板の後方を塞ぐことで低域特性は多少犠牲にしても薄型にできたことで、
多くのシステムに採用されるようになった、と見るべきではないか。
ならば薄型のまま、振動板の後方を塞がない構造はできないのか。
無線と実験(2015年1月号から4月号)に載ったAMTの自作記事がそうである。