うつ・し、うつ・す(その8)
《大切な想い出を音で記憶できる幸せがオーディオ愛好家にはある》
ステレオサウンド 61号の編集後記に、そうある。
原田勲氏の編集後記からの引用だ。
そう61号の編集後記である。
原田勲氏と瀬川先生は同じ年のはずだ。
私はまだ18だった。
《大切な想い出を音で記憶できる幸せがオーディオ愛好家にはある》
といえるだけの経験はないまま、読んでいた。
40をすぎたころから、
《大切な想い出を音で記憶できる幸せがオーディオ愛好家にはある》に首肯けるようになった。
大切な想い出を音で記憶できる、ということは、
音に何かを反映するということなのか。
映しているのから、時間の中を移すことができるのか。
それとも内包しているのか。
内(うち)の古形は[うつ]で、[空(うつ)]の意なのだから、
音は空(うつ)だから、大切な想い出(憶い出)を時間を経ても移せるのか。