瀬川冬樹氏のこと(何度書かれたのか)
瀬川先生は、オーディオ評論をはじめるにあたって、
小林秀雄氏の「モオツァルト」を書き写されたことは、これまで何度か書いている。
私も一度やってみたことがある。
原稿用紙を買ってきて、一字一字書き写した。
これはしんどいな、と思った。
いまから30年ちかく前のことだ。
ステレオサウンドを辞めて無職。
何かの目的のために書き写したわけではなかったが、とにかくやってみた。
この時は考えなかったことがある。
瀬川先生は何度書き写されたのか。
一度ではないような気がしている。
映画評論家の淀川長治氏は「同じ映画を十回観れば映画監督になれる」といわれている、ときいた。
優れた映画監督になれるかどうかの保証はないはずだが、
十本の映画を一回ずつ観るよりも、優れた映画一本を十回観た方が、
映画監督を志す人ならば得られるものがある(多い)ということなのだろう。
瀬川先生は「モオツァルト」を何度書かれたのだろうか。