附録について(その8)
オーディオ雑誌は出発物であって、それも紙を媒体とした出版物であるから、
紙に印刷できるのは、文字(言葉)と写真・図だけである。
視覚情報以外のものは、紙には印刷できない。
これは音を伝えたいオーディオ雑誌にとっては、大きな制約であり、不幸なこと、といえる。
だから1980年代にはCDマガジンという、CDを附録というよりもメインのメディアとした雑誌が登場した。
CDに続いてCD-ROM、DVDが登場し、
それらを附録とすれば、音だけでなく動画も収録でき、
静的な視覚情報だけだったころからすると、動的な視覚情報、聴覚情報も伝えられるようになった。
さらに紙の本は電子の本となって、
DVDにおさめていた動的情報を一体化できるようになった。
つまり紙の本からすれば、制約はかなり減ってきている。
これは喜ぶべきことなのか、
不幸なことがなくなってきた、といえるのだろうか。
電子書籍の機能を振るに活用すれば、紙の本では不可能だったことまで伝えられる。
けれど、それはオーディオについて語る上で、ほんとうにいいことなのだろうか。
オーディオ評論がある時期まで成り立っていたのは、紙の本しかなかったからだ。
視覚情報しか伝えられない紙の本で、いかにして聴覚情報の音を伝えていくか。
この制約があったからこそ、オーディオ評論は生れ、(ある時期までは)進歩していった。
附録をつけることに反対はしない。
ただ附録をつけることで、紙の本という制約から解放されると安易に考えないことだ。